35 象徴
前回から投稿が遅れてスミマセン!
元聖騎士団長、アリサ・アシュリー。
生存確認。無傷の模様。
帝王、脈無し
死因、刺殺。
凶器は持ち去られた模様。
傷から両刃の片手剣と予想。
この状況から察すると・・・。
「えーと、アシュリーさん?
現状第1容疑者になりますけど?」
俺の言葉に「はっ!」と気づいた様だ。
「わ、私では無いっ!騎士の名誉に誓って言おう」
「そう言われてもなぁ。
では、どうして死体を放置していたのですか?」
と、聞いてはいるものの、オレはアシュリーが犯人では無いと思っている。
そもそも動機が無いだろうし、現場に留まるほど馬鹿でも無いだろう。
それに彼女が目を覚ました時、彼女は帝王の死に実感が無かったようだ。
犯人が殺した事を覚えてないなんて事はそうそうないだろう。
「えっと、確か・・・そうだ・・・襲われただ!4属性の魔法使う人に」
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エルフォード王国、外壁の頂上にて。
「はぁ。」
ハルキが帝国に向かっている時、夏純はハルキの事を考えていた。
「ハルは・・・話してくれるかな」
ハルキは地球からもう1人転生者がいる事知っておきながら自分に話してくれなかった。
それが知らない人なら『ふぅ~ん』で終わったり、いずれ会おうみたいになるが・・・今回は知り合い。
しかも、自分に好意を向けていた男子である。
「・・・っ!もしかして、ハルはそれに気づいていたから私に光井君の事を言わなかった?・・・ということは・・・ハルは私を独占しようとした?・・・・・・いや、流石に考え過ぎかな」
思考が途中からオーバーし、空回り感があった。
そもそも、自分に向けられている好意に気づけない男が、他人が他人に向けてる好意なんて気づく筈ないのだ。
「はぁ。」
「ため息28回目。幸せ逃げちゃうよ?」
隣を見ると、いつの間にいたのか・・・エルナがいた。
長いツインテールの銀髪は風に揺られ、鯉のぼりの様だ。
「幸せならとっくに逃げてますよーだ。どうせこの後ハルにも逃げられるんですよー」
この世界に来てからは、エルナやリンド。
そして、学園のクラスメイト達美少女揃いにモテモテである。
地球でも付き合いたい男子ランキング4位と、陰ながらモテていたのだ。
それが今や『狂った勇者を倒した英雄』となっている。
モテない筈が無い。
「私、個性無いからな~。
幼馴染としてしかハルに接する事ができないし・・・」
「いやいや、4つの属性を使える人が何文句言って───」
その瞬間、エルフォード内で警報が鳴り響いた。
『緊急警報!大量の魔物が我が国に向かって進行中!これは・・・魔王軍の侵略です!』
かつて無い程の音量で響いたのは、かつて無い絶望の宣告だった。
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「4属性?それ・・・本当に言ってるのか?」
思い当たる人物が・・・居ないわけではない。
「はい。私も驚きました。まさか4属性駆使する人がもう1人居たとは・・・」
「もう1人?いや、待て。少し整理させてくれ」
犯人は4つの属性。
つまり、犯人はコウキではない。
そして4属性使えるのは夏純・・・だが、こいつは『もう1人』と言った。
「夏純以外に4属性の魔法を使える奴がいるのか」
「はい、白いフード付きのコートを着ており、フードを被っていた為顔は見れませんでした」
「・・・まて、そいつはどこに行ったんだ?」
帝王を殺し、そばに居た聖騎士団長は殺さない・・・そして、アシュリーさんの武器はコウキに与えられていた?
そして、その武器を持ち俺を殺しに来た。
・・・あまりに不自然だ。
その瞬間、窓の外から差し込んでいた日差しが途絶えた。
その瞬間。
大量の魔物。
見たことない魔物から見たことある魔物まで勢揃いだ。
それが、エルフォードの方角へ飛んで・・・または走っていた。
そして、俺はその飛んでいるドラゴン・・・と言うより龍に近いそれに乗った白いコートの男を。
「あいつかっ!」
俺は追いかけるために駆け出そうとし
『マスタ~。それ以上動くと体が~』
その声が聞こえた途端。
カクンッ。
糸が切れた人形の様に倒れた。
「な、なん・・・で」
コウキとのギリギリの戦い、そして帝国までの単独飛行。
疲労とダメージが蓄積された身体はとうとう限界を迎えていた。
「すみません、マスター」
復讐刃からイヴの姿へ変えながら告げてくる。
「マスターの痛覚神経をできるだけ遮断していたのですが・・・これ以上戦闘するとマスターの身体が自壊しそうだったので・・・今はルスが痛覚、運動神経をカットしています」
「待・・・て・・・。まだ・・・戦え・・・る」
「それほど軟弱な相手ではありません。申し訳ないですが・・・」
イヴは手刀を構え
「少々眠って頂きます」
イヴの細い手は俺の首元に命中し、俺は意識が途絶えた。
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「イヴ~。なんであんな嘘ついたの~?」
ルスも人に変身しながら訪ねた。
ゆったりとしたウェーブがかかった白く長い髪。
そしてイヴとは対称的に豊満な胸部。
ゆったりとしたお姉さんの雰囲気を醸し出す彼女こそ、光の精霊王『ルス』だ。
「・・・嘘はついてないです」
「でも~本当の事も言ってないよね~」
「・・・アイツとは戦わせてはダメです」
イヴの重い雰囲気にルスは気づいた。
あのコート男は普通ではないと。
「え、えっと・・・」
いろいろ出遅れたアリサは何も言えず、ただただキョロキョロとルスやイヴ、そして倒れた陽綺を見ていた。
「だ、誰・・・?」
剣から人へ、その異常さを見たことにようやく気づいたのだった。
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その頃エルフォードでは、冒険者、衛兵ほぼ全員が駆り出されていた。
もちろん、エルフォード防衛の為だ。
そして、総隊長は・・・
「カスミさん!AからD班スタンバイOKです!」
「カスミさん!言われた通り火災対策してきました!」
「カスミさん!トラップ作成にあと5分かかります!」
そう、神崎 夏純が仕切っていた。
「トラップは急いで!」
「そしてそこの君、もしものために住民全員に避難体制を!」
夏純、陽綺。
主にこの2人がみんなの象徴となっていた。
この過酷で絶望的な状況でも、全員の指揮が下がっていないのはこの2人がいるからだ。
だから、それ故にこの先の出来事にだれも気づくことがなかった。
転生チートの復讐劇も終盤に入りだしました。
次の小説のプロットなど立てていると、時間がいくらあっても足りない状況に・・・。
これから先、2週間に1話までペースダウンの可能性も出てますが、そうならないように頑張りたいと思います!
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