32 男の闘い
「・・・あれ」
今なにしてたんだっけ。
・・・そうか、戦ってるんだった。
立たなきゃ・・・立つ?
どうやって?
筋肉に力を入れないと。
あれ、入らない。どうすればいいんだろう。
入れ方を忘れた。
あれ、視界が暗い。
てか、真っ暗じゃん。
・・・死んだ?
いや、意識を失ってるのか。
死んだらエルナ・・・じゃなかった。
エルが来るだろうし。
・・・え、いや、来ない可能性もあるのか。
・・・う~ん。
「目覚めろ!ごま!」
開けごまじゃあるまいし・・・無理か。
そうやって、いろいろ考えてると。
「・・・マスター。そろそろ話かけてもいいですか?」
真後ろからの声に振り返るとイヴがいた。
「おお、びっくりした。あれ?イヴがここにいるってことは俺、死んでない?」
「死んでませんよ。・・・私がついていながら死なせるわけにはいきません」
「?」
(死なせるわけにはいかない?
ああ、魔力途切れるからかな)
そう、結論を出し。
「で、俺はどうやったら目覚めるんだ?」
「目覚めてますよ」
「・・・え?」
もう1度周りを見回すが真っ暗な空間だ。
とてもあの闘技場とは思えない。
「闇属性魔術、【虚数空間】です。一時的に虚数空間を作り出し、外界と完全に遮断しています。」
「へー。便利だな~」
いろいろやりたい放題じゃないか。睡眠とか、食事とか。まぁ、真っ暗だけど。
「ええと、まぁそれは理解できた。で、なんで俺はここにいるんだ?早くあいつを倒さないと」
「・・・マスター。正直、今のままでは少し難しいです。」
「闇属性は光属性には勝てない・・・ってこと?」
「いいえ、さっきまでの状況なら簡単でした。しかし、マスターは今1人で観客を庇いながらあの天使を相手にしなければいけません。精霊王く天使。力量はこれが当然です。マスターの身体能力ならある程度は覆す事ができますが・・・観客を見捨てる必要があります。」
「・・・つまり観客を見殺しにするっていいたいのか?」
「いいえ・・・方法は・・・無いことも・・・ない・・・です」
「ちょっとイヴさん?何故そんなに悔しそうな顔を!?」
「いいえ、まさかあれに頼まなければいけないとは・・・屈辱です!」
「は、はい!」
なぜか俺が返事してしまった。
「・・・マスター。この魔術が途切れた瞬間、私を地面に突き刺してください。」
「え、あれを素手で相手にしなきゃいけないの?」
「そこら辺に剣は落ちてます!それで耐えてください!」
「は、はい!」
なんかイヴがこわい。
──────────────────
目を開くと暗い空間・・・ではなく闘技場だった。
「チッ、まだ生きてやがるのかよ。いい加減しねよっ!」
俺は言い返そうと口を開こうとするが、
(か、身体が重い・・・っ)
自分を見下ろすと、それは酷いものだった。
皮膚はところどころ焼け、手足の感覚が鈍くなっていた。
(これは・・・ヤバイな)
俺はさり気なく復讐刃を地面に突き立てた。
「・・・ほら来いよ。お前程度、素手で相手してやるよ」
重い身体を無理矢理動かす。
軽い挑発だ。
掛かるはず無i
「てめぇ。その状態でよく言えたな・・・。真っ二つにされてもそう言えるか見ものだなぁっ!」
(まさかの挑発にのった!?)
いや、こちらとしては好都合だ。
しかし。
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁ」
コウキが振りかぶった聖剣。
俺は紙一重で躱す。
(このままじゃやばいな・・・)
少しずつ追い詰められている。
そこで、踵になにかがぶつかった。
(この重さは・・・)
「死ねっ!」
丁度俺の首の高さで迫る聖剣。
それをバク転て回避し、起き上がると同時に落としていた4本の剣のうちの1本を回収した。
「チッ」
舌打ちされた。
「・・・俺、そんなに恨まれることした覚えないんだけどな」
「アァ?」
「俺はお前に何もしてないだろ。あっち側で。それで恨む理由がわからない。」
とりあえず、時間を稼ごう。
その思いから口を開くが。
「何もしていない?確かに俺にはしてないな。だけど、お前は神崎を泣かせた!」
「・・・は?」
泣かせた?俺が夏純を?
わからない。そんな、表情になっていたのだろう。
コウキは続けて言った。
「気づいてなかっただろ。そうだろうな。神崎はいつもお前の前ではいつも笑うようにしていた。でも、俺は1回見た。
トイレで神崎がお前の名前を言いながら泣いて──」
「まて、トイレまで夏純について行ったのならそれはストーカーじゃ・・・」
「うるさい聴け。泣いていたんだよ。
お前が神崎を束縛してるんだよ!」
「っ!俺は束縛なんて!」
「してなければあんな風に1人で泣くかよっ!」
俺はコウキの突然放った光線を避けた。
その瞬間。
ドッ。
まるで地面が脈を打つような、そして闘技場から紫色の一筋の光が天を貫く。
いや、闘技場からではない。
復讐刃からその光線はでていた。
「お前・・・なにしてやがる?」
「さ、さぁ?」
(これはバレるだろぉぉぉぉぉ!)
心で叫ぶが遅い、その間にもコウキは復讐刃に迫る。
「やらせるかっ!」
俺は先ほど拾っていた剣を投擲、更に転がっていた剣をそのまま蹴り飛ばした。
コウキは2本の飛来する剣を防ぐために立ち止まり、俺はその隙に復讐刃に迫ろうとした。
だが。
「バーカ。【聖域】発動」
2本の剣は聖域に弾かれ、コウキは聖剣を俺に振る。
聖剣が俺の腰から両断しようと迫る。
(狙われたっ)
気づくがもう遅い。
剣は俺に迫り──
突如、空から飛来した白銀の剣により聖剣が弾かれた。
はい、最後になんか飛んできましたね。
よければブクマ、コメントお願いします!
そして、次の話は諸事情により12月10日(土)に投稿します!
日にちが空いてしまいますが、これからも読んでいただけると嬉しいです。
というか、ここから更に面白くなる予定です!
是非読んで下さい!
それではまた、次のお話で~




