29 女同士の約束
イヴは今、王宮の外にいた。
本来、マスターであるハルキから離れることは無いが・・・今は別である。
「・・・確認しますか」
イヴはひと言呟くと、【エアドライブ】を使い、学園の方へ飛び立った。
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「そうなんだよ〜。苦労するよ〜?」
「でもそこがいいんじゃ〜ん」
特にするとこが無いエルナとリンドは空を見上げながら恋話していた。
すると。
「あれ?」
空に1人の少女が浮いていた。
豆粒みたいな大きさに見えるほど高い位置だが、ゴシックドレスを纏っていたのですぐにわかった。
「どうしたんだろ、イヴちゃんが1人なんて」
イヴはゆっくりと降下してきた。
そして、目の前に降り立つと共に
「エルナさん。話があります」
そう、言い放ってきた。
「・・・いいよ。場所変えよっか。ごめんねリンドちゃん。またあとでね」
エルナはリンドにそう言い、イヴと校舎裏に歩いて行った。
「・・・うーん。どうしよう。」
話し相手が居なくなったリンドは・・・
「よし、ご飯食べに行こ♪」
こっちはこっちで自由人・・・いや、自由竜だった。
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「で、話は何かな?イヴちゃん」
校舎裏に着くなりエルナは本題に入った。
「では単刀直入に聞きます。なぜマスターの記憶を消したのですか?」
「・・・・・・」
エルナはいつもの愛らしい笑顔をやめ、
「消してないよ。封印・・・記憶を呼び出しにくくしただけ」
「それは消されたのと変わりません。」
「変わるよ。陽綺さんはまだ気づいてはいけないことに気づいた。その時が来たら自動的に解除されて思い出す。でも、そんな日は来させない」
エルナの表情は悪事を働く顔・・・ではなく悲しそうな顔だった。
「・・・なんでそんな表情をするのですか。いったいなぜ・・・マスターの記憶を」
エルナは少し考え込むと
「・・・ねぇ、イヴちゃん。もし陽綺が魔王を倒しに行くと言ってもついて行っちゃダメ・・・いや、陽綺を止めて」
「・・・私はマスターの剣です。マスターの意を妨害する事はできません」
「・・・・・・」
エルナはイヴに近づき、耳元で囁いた。
その言葉を聞き、イヴは
「そ、そんなこと・・・ありえません!」
「ううん。それが事実。私はこれでも女神だよ?」
「・・・幸福の女神が、まるで見てきたように言われても」
「見てきたんだよっ!」
エルナはそう叫び・・・1度深呼吸をした。
「イヴちゃんにもう1つ・・・いい事教えてあげる。私は幸福の女神じゃない。私は-」
その事実にイヴは絶句した。
「その能力だと幸せに・・・幸せになる道にたどり着けるでしょ?」
イヴは確かにそうだと確信した。
そして、その強い確信とは裏腹に1つの疑問が浮かんだ。
「・・・どうしてそこまでしてマスターを。もし他の神に知られた瞬間・・・。あなたはあなたでは居られなくなる。その事はきちんと理解しているはずです。」
エルナは少し微笑み
「・・・イヴちゃん。初めて陽綺さんに出会った時、どうだった?」
「・・・初めて・・・ですか?」
イヴはふと思い出す。
暗い地下の洞窟で、ただ1人。「力」ではなく「1人の人格」として接してくれた陽綺。
「とても・・・温かったです」
「人間はね、それを恋心というの。どうしても好きで好きでたまらない気持ち。いつもその人の事を考えてしまって、その人の為なら自分の危険さすらどうでもよくなってしまう・・・。イヴちゃんも陽綺さんの事が好きでしょ?マスターとしてはもちろん。1人の男性としても」
イヴはこの時初めて自分の気持ちに気がついた。
「私が・・・マスターに、恋している・・・?」
その事実そして、もう1つのとんでもない事実に気づいた。
「イヴちゃん『も』?
・・・っ!
あなたは正気ですか!?
女神が1人の人間に恋をする・・・どんなに危険な禁忌を犯しているかわかっているのですか!?」
「わかってるよ」
何一つ迷いが無い答えにイヴが驚く。
「・・・存在が消されるかもしれないのですよ?」
「関係ないよ。さっきも言ったでしょ?
陽綺さんのためなら自分なんてどうてもいい。それにこれは、この世界に来させてしまった私の罪だから。そして、私自身の不甲斐なさのせいだから。」
「・・・私・・・は」
どうすればいいのだろうか。
その悩みは、自身のマスターを思い出し・・・すぐに解決した。
「あなたがマスターに生きていてほしいと思いを通すのと同じ、私はマスターの自由に生きてほしいという思いを貫くために、マスターを止めません」
「っ!それで陽綺さんが死ぬんですよ!?」
「そんなことはさせません。・・・もしもの時は、私が変わりになります」
「っ!」
エルナは気づいた。
イヴの覚悟を。
自分と同じ、好きという気持ちを。
「・・・ふぅ、もうどうなっても知らない」
「・・・・・・」
「でも、陽綺さんだけは死なせない。その気持ちは一緒。・・・絶対に死なせないって約束して」
「・・・約束します。精霊王の名にかけて」
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「王様そんなかっこいい名前だったのですか!?」
「フハハハハ!驚いたか!」
ノリに乗ってくれるこの王はやはり器が大きい。
イヴとエルナが約束している時、陽綺はリーアム王と話をしていた。
「まぁ、それはそうと。ハルキよ、何か用事があって来たのではないか?」
リーアムの問いに俺は頷く。
「俺は対抗戦に勝つつもりです。」
リーアムはその言葉を聞き目を細めた。
「・・・勇者に勝てると?」
「正直、今のままでは無理があるかと思います」
「・・・何が必要なのだ?」
「・・・頑丈・・・いえ、とても頑丈な。〈フラガラッハ〉と打ちあえるまではいかなくても頑丈な武器が欲しいです」
「ふむ・・・機密上位武具庫にあったかもしれん。よかろう、それをそれを1本取ってこよう」
そういい、立ち上がったリーアム王を俺は止めた。
「1本ではなく4本で。あと、自分でみて決めさせて下さい」
「・・・4本?」
王は不思議そうにするが
「まぁ、よかろう」
そういい玉座のクッションを持ち上げ、そこに手を置いた。
「フッ!」
微かに魔力が流れた瞬間、石と石がすり合うような音を立て玉座がスライドした。
(・・・玉座、石でできてないよな?)
そんな疑問はすぐにポイッと捨てそこにできた空間を見る。
玉座の下は空洞になっており、ハシゴで入る事ができるようだった。
ハシゴを降り中に入った瞬間、暗かった武具庫は一瞬で明かりを灯した。
「・・・すげぇ。」
日本にもセンサーで人を感知し自動で明かりを灯す装置はあるが、これはこれでまた別の凄さがある。
「さぁ、選ぶがよい!」
何気テンションが高い王にビビる。
「実はよく高値がつくような素晴らしい武具を献上されたりするのだが、わし自身あまり使わない上剣の腕もそこらの兵よりは上くらいでな。剣たちが可哀想だったのだ」
「そ、そうなんですか」
俺は武具庫を見渡す。
上位というだけあって多くはないが、それでも満足する量だ。
俺はその中から黒塗りの片手剣2本と白銀の片手剣2本の計4本を手に取った。
「これ、貰いますね」
「うむ、勝ち給えよ」
その言葉を背に、俺は武具庫から出た。
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