3 復讐の第1歩
気がつくとそこは白い空間だった。周りも白いせいで壁があるのかすらわからない。とにかく白い空間だ。その中で俺は1人でたっていた。
「ここは・・・俺は・・・何をしていたんだっけ」
確か・・・夏純を庇って・・・
っ・・・!そうだ!確かレーザーで刺されて・・・俺は・・・死ん・・・だ?
現実の理解と共に混乱してくる。
「ここは・・・?」
そう、死んでしまったはずなのに意識がある。どうゆうことだ?
「気づきましたか?」
と、背後から声をかけられた。振り向くとそこには美少女がいた。背は同じくらいで髪は長い綺麗な銀髪で目は深紅色だ。
「えっと・・・あなたは?」
「私は、女神 エルです」
女神ってあのアニメとかゲームのだよな?
ってことは・・・
「やっぱり、俺は死にましたか・・・」
「そうですね・・・しかし動揺もしないとは凄いですね」
多少はしたけど、あの出血量だしな。あと、落ち着いてるのではなくむしろ動揺している。こんなかわいい女神が目の前にいて動揺しないはずが無い。そんなやつは男じゃないっ!
「そんなに言われると照れてしまいますね・・・」
「あれ、声にでてました?」
「だしてませんけど、ここじゃ肉声はないですし。心で思ったことがそのまま相手に伝わりますよ」
「そうだったんですか。・・・あの後どうなったのですか教えて頂けますか?」
さり気なく話題を逸らしながら1番気になっている事を聞く。あの家には、海さんや菫さんがいるのだ。それに隣は俺の家だ。もし、妹の2人に何かあったら大変だ。
「大丈夫です。あの後元の世界へ転移したようですから」
よかった。・・・だが
「アイツは夏純に何をしたんだ?」
思わず口から出てしまった疑問にもエル様は答えてくれた。
「あれは魔力を魔法陣越しに流したみたいですね。ということは・・・あ、やはり・・・」
「魔力?やっぱりそんなものまであるのですか!?」
男として魔力の単語に反応せざるをえないのは仕方が無いことだろう。それに、あんなレーザーみせられたらそんなことも考えてしまう。
「ありますよ。あなたも使ったことありますよ?」
と、微笑みながら言ってくるが・・・。
「・・・え?俺が?」
俺にはまったく心当たりがない・・・わけではないが。あれは・・・。
「あなたが氣と読んでいるものですよ?」
「・・・いや、俺で魔力とかそれくらいしか浮かばなかったけどさ」
思わず驚いてしまった。氣とは神崎流を習う時に教わった基礎だ。体内の中心から血液のように流れる力の根源で神崎流の戦いには必要なものだ(神崎家の使用人も使えていた)。
俺は既にファンタジックな存在だったらしい。
「あれは、海さんに教えて貰ったんですよ?ということは、海さんも魔力が・・・?」
「普通はありえないんですけどね・・・。そもそも、あの世界は魔力がない世界として作られたんですから」
海さん達も超人だったらしい。だが
「作ったということは・・・エル様が作ったのですか?」
ということは、何歳なんだろう・・・。
「私は作ってませんよっ!私が誕生した時には既にありましたし、私は管理だけですっ!」
あ、心読まれてた・・・。
「えっと、すみません・・・」
「い、いえ別にそこまで落ち込まなくても・・・」
チョロかった。
「演技うまいですね!?」
「すいません、なんか面白くてつい」
「しかも、悪気がない!?あ、コホン。・・・それで、何か聞きたいことがあるのではないですか?」
このまま続けても同じことになると察したのか聞いてきた。
「すみません、話題が逸れてました。それで・・・夏純は?」
「異世界転生させられてます」
「異世界転生?どんな世界ですか?」
もしかしたら平和な人生を・・・。
「魔王アルトの大軍と人間が争ってる危ないとこです。あ、もちろん魔法もありますよ?」
「予想以上に危ないとこですね!?」
「そうですね・・・というわけですが。どうします?」
「・・・どうする・・・とは?」
エルナは明るい雰囲気を抑え真面目な空気をだし、口を開いた。
「1、老後のような人生を天国で送る。
2、記憶を消して地球で新しい人生を始める。
3、体を再構成し記憶を維持した状態で異世界に転生し、幼馴染を助けてあなた達を殺した奴に復讐する。
・・・ですが」
「3で」
あいつは絶対にゆるさない。夏純を・・・俺も殺したんだ。そのせいで、今日からゲームができ・・・絶対にゆるさない。
「・・・頼む。夏純を・・・助けるために!」
そう叫ぶと・・・。
「・・・なんか邪念もありましたが、よく言えました!では、転生の際に私からの贈り物があります!」
と、いうといつからあったのか、俺の手の平にはちいさな箱があった。開いてみると、それは十字架だった。ただ、色合いが少し不気味だった。真ん中は黒で周外枠が赤くなっていて、とても協会などでみるものとは違った。
「それはあなたの心を武器として与えるものですが・・・復讐心で染まりまくってますね」
そうだろう、夏純と俺を殺したんだ。4回は殺してやる。海さんもやられたら倍以上で返せって言ってたしな。
「あ、私のことはエルでいいですよ。あと、敬語不要です!」
「え、いいんですか?」
「もちろん!あなたに興味も湧いてきましたし」
興味?と思ったが考えるのはやめた。今は、夏純を助ける事だけ考えよう。
「では、お気をつけて!」
そう言うと、俺の体は白い光に包まれた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「・・・それにしても夏純さんもそうですが・・・1番おかしいのは夏純さんの両親ですね〜」
エルは陽綺を異世界に転生させた後調べていた。白く美しい手には本が握られており、そこには夏純の両親の顔が写っているが名前、歳などの個人的なプロフィールは全て『unknown』と表示されていた。
「う〜ん、〖女神の全知書〗ですら表示されないとは・・・ま、当たり前ですけど」
そもそも、その世界の全てが記された〖女神の全知書〗ででないはずがないのだ、彼等以外。
「・・・行きましたか」
エルはさっさく準備を始めた。
予定通りに。
3話目です。
やっと転生しましたね。
相変わらずの遅い投稿ペースですが読んでくださると嬉しいです。




