21 授業(陽綺視点)
開始の合図と共に赤毛の少女(リンドと言ったか)が突っ込んできた。
(まずはお手並み拝見とするか)
少女は左手で連続で打撃を繰り出してくる。
(・・・なかなか重いな)
本気なわけでは無いがそこそこ重い打撃がくる。
(・・・右手にどんどん魔力が集まってるな)
つまり、左手で時間を稼いで隙ができたら右手の全力攻撃で一撃必殺・・・てとこか?
面白い。
俺は素手で打撃を全て逸らし、隙を作らない事にした。
「んっ!はぁっ!」
と、まるで俺から逃げるように動く拳に苛立ち始めたのかどんどん攻撃が荒くなって来た。
「あったれぇぇぇぇぇ!」
と拳が荒い動きから鋭い動きになり始めた。
(ん!?)
人とは1回集中が切れると動きが悪くなる。しかし、目の前の少女は重い打撃から1度荒くなったが、当てるために自分で鋭い打撃に切り替えたのだ。
(この短時間で適応してくるとか・・・バケモノだな。本気の打撃もみたいな)
俺はわざと後ろにバランスを崩したように見せた。
「っ!ここだぁぁっ!」
少女は右拳を振り下ろすように放ってくる。
俺は右に魔力を勢いよく噴射し体を左へ飛ばす。
「えっ!?」
まさか、躱されるとは思っていなかったのだろう。
そのまま、右手は地面にぶつかり。
でかいクレーターが実技フィールドに広がった。
「・・・マジかよ」
どう見たって殺傷レベルだ。
砂埃が舞う中俺は確信した。
(コイツ・・・バカだ)
と、心の中で馬鹿にしていると。
「とりゃぁぁぁぁぁ!」
と懲りずに拳を繰り出してきた。
「おっと」
俺は体を逸らし、バックステップで回避した。
「むむむ、なかなか当たらない・・・」
「よし、全力の1発勝負しよう」
「え?」
どういう事か。つまり
「お互い同時に本気で打撃を繰り出して勝敗を決めよう」
「え、いいの!?」
少女は喜んでいるようだ。
「おいおい、マジかよ。」「あいつ馬鹿なのか」
と、周りの男子達は見てくる。
周りはほとんど終わっているようだ。
「いっくよー!」
少女は左手に魔力を貯める。
(よし、じゃあ試すか・・・)
俺は人差し指の先に小さな雷球を生み出し。
「てい」
自分の脳に撃ち込んだ。
突如、体が痺れ体が軽くなったように感じた。
「・・・〈全力解放〉」
瞬間、大量の魔力が吹き荒れる。
まるで台風の吹雪が同時に来たかのようだ。
「!?
もしかしたらこの人かも・・・お願い・・・見えないで・・・」
少女はボソボソと小さく呟くと。右腕を体の後ろまで引き絞った。
「・・・〈擬態解除・限界突破〉」
少女の後ろで赤い光が放たれる。
(なんだ?)
思考しようとするが少し電圧の調整を失敗したのか、痺れで上手く思考できない。
あの、雷球は脳がいつも掛けている人体のセーフティを解除する物だ。
人体はいつも全力がでないように筋力に制限を掛けている。
それを痺れさせ麻痺させたのだ。
(もしかして・・・)
イヴの声が聞こえた気がしたが今はどうでもいいと思えた。
ただただ、本気同士のぶつかり合いを試したかった。
「・・・いくぞ」
「こっちもオーケーだよ」
2人は同時に拳を繰り出した。
視認不可能な速さでお互いが繰り出した拳がぶつかりあい、大量の砂埃が舞った。10秒くらいお互いの拳の衝突地点で止まったが・・・俺の拳が少女の右腕を砕きながら少女自身を吹き飛ばした。
(なんだ・・・今の腕・・・)
砕けていたからではない。明らかに拳を打ち合う前からおかしかった。
20m吹き飛んだ少女が壁に衝突し、壁にめり込んで止まった。
俺は咄嗟に少女に駆け寄り右腕を中心に自分の制服を掛けた。
「エルナ!ちょっと来てくれ!
先生!医療室に運んできます!」
俺は要件だけ伝え、少女を担ぎ走った。誰にも少女の右腕が見えないように。
俺がここまで焦っているのは少女の右腕が砕かれているからではない。いや、もちろんそれでも焦っていたがそれだけではない。この程度の怪我ならエルナならすぐに直せるからだ。
俺は後ろからエルナが追いかけてるを確認して1-3の教室に入った。
「ちょっと陽綺さん!さすがに女の子の右腕を砕くなんでやりすぎですよ!?」
「待ってくれ!それよりこれをみてくれ」
俺は自分の制服をどけてエルナに少女の右腕を見せた。
「!?嘘・・・これって・・・」
「その前に光を屈折させて俺達が見えないようにできるか?」
これが見られるのはこの少女としても嫌だろう。
エルナは目を瞑り
「・・・できました」
「・・・で、これはどういうことなんだ」
少女の右腕は砕けていた。いや、少女のというより
「この腕・・・」
そう、腕が人間の腕ではないのだ。
赤く、まるでドラゴンの様な腕をしていた。
「とりあえず、エルナ。直してあげてくれ」
「わ、わかりました」
エルナは少女の右手に回復魔法を使った。
「【ライトヒール】!」
少女の右腕は砕ける前に戻った。しかし
「腕はドラゴンっぽい物のままか」
「・・・ですね」
少女の腕には戻らなかった。
「・・・ん、ん〜」
と、少女は寝息みたいな声をあげる。
「・・・おい・・・おーい」
普通なら起こさずにそっとするが、状況が状況なだけにそれはできなかった。
俺は少女の頬をペチペチ叩いた。
「ん・・・んん。んあ」
少女は目を覚まし
「あれ・・・何してたんだっけ・・・」
「実技授業だよ」
俺は少女に思い出してもらうため説明しようとしたが
「あ、そうだ・・・。それでハルキ君と戦って・・・あっ!右腕!」
少女は右腕を慌てて見るが
「あれ・・・砕けて・・・ない?」
「いやいやいやいや、そこじゃないよね!?いや、そこも重要だけどさ!右腕だけ人外化してる事には何も思わないの!?」
「え・・・あ!?」
咄嗟に右腕を隠し
「擬態」
少女がそう言い、右手を隠すのを止めた時には元に戻っていた。
「ふぅ、さてと。何のこと?」
「いや、誤魔化せるわけないよね!?」
「あ、あははは。流石に無理か〜・・・」
少女はガッカリしたように俯く。
「これはね・・・」
謎の少女が現れましたね〜。
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