15 ロック・ザール
次の章に入りました!
楽しんで貰えると幸いです!
最近よく倒れるなぁ。
アストとの戦闘が終わり気絶したはずの俺は、気づいたらギルドの2階にある休憩室のベッドに寝かされていた。
俺は、最後にアストを斬った時の事を思い出していた。
(魔王が人材集めるために転生させているって事だよな・・・。このままだと、俺ら以外も襲われちまうな。よし、折角の異世界だ。魔王倒すか!)
夏純を助けて心に余裕ができたのか、思考がかなりラフになっている気がする。
(にしても・・・)
アストを斬って死んだのを見届けた俺は1つの疑問が残った。
(本当にアストは死んだのか)
だ。
人体を上半身と下半身に両断し、最後の死に際を見た俺は何かがひっかかったままであった。
(今度、もう1回あの城に行ってみるか)
そこまで考えたところで、ドアの開閉音が聞こえた。
「あ、やっぱり起きてた」
室内に入ってきたのは夏純だった。
「氣が一瞬膨れてたからそうかと思ったよ」
「そうなのか、全然気づかなかった」
たぶん、アストと戦った時を思い出していた時だろう。だけど、それを夏純に話す必要は無いし、夏純も…思い出したくないかもしれないからな。
「はい、これ」
と、ベットの横にある机に置かれたのは簡単な食事だった。
「あの後大変だったんだからね」
「あの後?アストを倒した後か。え、敵もほとんど倒したから脱出も簡単だったんじゃないか?いや、連れ出してもらって何偉そうにって感じだけどさ」
「・・・はぁ。ハル、あの時アストもろもろ城も斬ってたでしょ。あれのせいで、あの後城が崩壊したんだよ?」
「ほ、崩壊!?」
「えぇ、そのお陰でアストの死体はメチャクチャになってて、他の人も命からがら逃げ出したんだから」
「うっ、それはすまない・・・」
ぐぅの音も出ないとはまさにこの事だ。
「まぁ、ハルだししょうがない」
「遠回しにディスってるのか?なぁ?」
「「アハハハ!」」
思わず笑いがでて、それもすぐに収まった。お互い言いたいことがあってもなかなか言い出せないのが目に見えてわかる。長い間一緒にいたせいだろう。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
すると、復讐刃が紫の光を放ち人の形になった。
「少し、席を外します。人払いもしておくので安心してください。」
そう言って、イヴが部屋を出ていった。
「・・・イヴちゃん大人だね」
「まぁ、精霊王だしなんだかんだで俺らよりも生きてるだろうな」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
やっぱり、ここは俺から切りだそう。
「「あ、あのさっ!」」
タイミングが被ってしまった。
「あ、えと・・・そちらからどうぞ・・・」
夏純が譲ってくれた。
「お、おう。えっとな・・・。
あの時、守ってやるなくて・・・ごめん」
「い、いや、それは気にしなくていいよ!むしろ・・・。助けに来てけれて、ありがとう。やっぱり、届いたんだね・・・」
「届いた?」
「え、え〜っと・・・」
夏純は顔を赤くしながら恥ずかしそうに
「実は夢の中で、ハルに会って・・・助けてって言ってたの」
と、恥ずかしそうにいうが。
「やべ、同じ夢みてたかも」
「えっ?」
「夢の中でさ、夏純が『待ってるからね』ってさ」
「わ、私同じ事最後に言ったんだけど・・・」
同じ夢を見ると『え、君も!?』とテンションが上がるものだろうが、この内容でこの空気だと少しアレだ。なんて言えばいいか分からないが、とにかくアレだ。察していただきたい。
と、そこに。
「おいっ!ハルキ!大丈夫か!?」
と、飛び込んできた人がいた。
「お、ザックさん」
「ザックでいい、背中が痒くなっちまうだろ。それに、魔王幹部の1人を単独撃破した奴に『さん』づけなんてされた日には他の奴らになんか言われちまう。おっと、敬語も禁止な?」
「わかったよ、おっちゃん」
「お、おっちゃん!?俺はまだ27だ!」
え・・・?
「「えぇーーーー!?」」
「『えーーー!?』ってなんだ!確かに顔の傷とかで少し老けて見られるがそこまで驚かなくてもいいだろ!?ん?そこにいるかわいい子は誰だ?」
今更かよ
「こいつは、神崎 夏純。俺の幼馴染だよ」
「へー、てっきり彼女かと思ったぜ」
「んなっ!?」
「か、か、彼女!?い、いや、いずれなりたい・・・というか今すぐにでもなりた・・・(ボソボソ)」
ザックに反論しようとした時だった。
ガシャャャャャャャャンッ!
と、下からなにかが割れる音と
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁ、アストを倒したやつはどこだぁぁぁぁぁぁ」
という、叫び声が聞こえてきた。
「な、なんだ今の?」
お、俺がザックに聞いてみると
「クッ、よりにもよってアイツ・・・!今頃来たのか。少し厄介だぞ」
「厄介?」
「あぁ、エルフォード支部元1位冒険者のロック・ザールだ。二つ名持ちで〈鬼人〉とも呼ばれている」
「元?あぁ、ザックが1位なのか」
「アホ、お前だよ」
「え?」
「お前なぁ、魔王幹部を単独撃破した奴より強い奴がいるなら討伐なんてかなり前に終わってるんだぞ」
「・・・それはたしかに」
「だから順位が繰り上がったんだ」
「う〜ん、つまり俺のせい?」
「言ってしまえばそうなるな」
「なるほど、よっと」
俺はそう言って、ベットから降りると
「ちょ、ちょっとハル?どこに行くの?」
「ん?あぁ、下の人に順位興味無いからどうぞお好きにって言ってくる」
ドアの前にいたイヴの手を繋ぎ、
「剣形態」
「了解です」
パァと紫色の光に包まれいつもの片刃長剣・・・
「あれ?」
ふと、みるといつもと違う点があった
「なぁ、なんか変わってるよな?」
(説明はしますけど、今は早く下の問題を解決するべきだとイヴは思います)
それもそうか。
下に降りると、ザックよりも大柄な・・・身長250cmくらいありそうな大男がいた。
「アァ?なんだテメェ」
と、いきなり横殴りしてきた
「うおっ!」
俺はつい癖で、やってしまった・・・
「回天!」
神崎流格闘術︰回天
相手の攻撃の威力を受け流し、それに自分の打撃威力を乗せて返還する技だ。
にしても、うん。師匠より体格大きいのに威力はそこまでないな。
俺は横殴りに手を合わせ、それを使い空中に飛び上がり回転する。回転することによって、威力を足に持っていき・・・蹴った。
ロックの殴りと俺の蹴りの威力が混ざった威力になすすべもなく机と椅子を何個も飛ばしながら飛んでいき、途中で止まった。
「チッ、テメェがアストを倒したってやつか」
「ナンノコトカナ」
一応とぼけてみる。
「誤魔化してんじゃねぇっ!」
見破られた・・・だと!?
「今ので見破られないわけないでしょ・・・」
と、後ろから夏純がツッコミをいれてくる。
「だよなぁ〜」
「テメェ、無視してんじゃねぇよ」
あ、すっかり忘れてた。
ロックは後ろに背負っていたバスターソードを引き抜き。
「殺してやるよ」
そういい、突っ込んで来ようとした時だった。
「揉め事は外でやれぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!」
と、でかい声が聞こえてきた。
「・・・チッ、訓練場にいくぞ。ついて来い」
・・・スルーしていい感じかな?
「さっさとこいっ!チビが!」
・・・なんかイラッとした。もう、順位変わってあげねー。
「ハル・・・なんか凄く幼稚なこと考えてない?」
「ベツニ」
「「はぁ」」
と、ザックと夏純のため息が重なった。
え、なんでそんなに息ぴったりなの?
闘技場はギルドの裏にあった。
もともと、ギルドは国の端っこ側にあっただけに、国を囲む壁のそばだ。
「真剣は使うなよ?あくまで、模擬戦だ」
そう言い、ギルドマスターはバスターソードの刃が潰れたやつをザックに投げた。
「お前は直剣でいいのか?」
というギルドマスターの問いに。
「いえ、これがあるんで。イヴ、逆刃刀」
(了解です、マスター)
イヴの変化できる形態には制限がある。
1、刃は消すことが出来ない。
2、俺がイメージできない剣には変化できない
これだけだ。
「ほう、刃はあるがそっちに付いていては斬れないな。だが、そんなに細くていいのか?」
「いいですよ、一瞬で終わりますし」
「テメェ・・・いい加減にしろよっ!さっきは偶然やられたが今回はそうはいかねぇ。お前の全身の骨を砕いて苦しめてやらァ」
「・・・はぁ」
できるわけがないだろ。
「ハルー!殺さないようにねー!」
夏純・・・。お前なんでそんな余計な事を・・・。
ロックは一瞬、イラッとした表情になり・・・すぐに表情が戻った。キレると思ったんだが。
「よし、賭けをしようじゃねぇか」
「賭け?」
「そうだ。お前が勝ったら俺が何でも1つ言う事を聞いてやる。だが、もし俺が勝てたら・・・」
「勝ったら?」
「その女を俺が貰おうじゃねぇか」
・・・は?
周りの冒険者たちは
「おおぉぉぉぉぉぉ!ロックの女になったらぶっ壊れるらしいぜ!」
「マジか!なんだか、見てみたいな!かわいい女の子が壊れる・・・悪くねぇ!」
・・・・・・
「お、おい、お前ら」
ザックが何か言ってるが、もう遅い。
「テメェ、何調子に乗ってんだ?」
魔力が【輪廻解放】と【全力解放】の間位の放出量を出す。
「な、なんだこの魔力量!?」「お、おい!あいつの魔力・・・なんか黒くねぇか!?」
そう、俺の魔力は黒くなっていた。まぁ
「どうでもいい」
この魔力のままでは殺してしまう・・・。落ち着け・・・落ち着け・・・。
「私は構わないよ?」
そう言ったのは夏純だった。
「は?お、おい、夏純。何言ってんだ?」
「だって、ハルが負ける理由がないもの」
確かにそうだが・・・。
「癇に障る事しか言えねぇのか?はっ、まぁいい。すぐに何も言えねぇほどぶっ壊してやるからよぉ」
「話は済んだか?」
ギルドマスターの声に全員が静まり返る。
「なら、始めてもらおう。始め。」
合図と共に、ザックが駆け出す。
「オラァァァッ!」
振り下ろされた斬撃を避け、避け避け避け。1回ロックが距離を取った。
「チッ、しぶとい野郎だ」
はぁ。やっと、落ち着いた。
俺は静かに居合の構えをとる。
「・・・忠告・・・いや、警告だ。魔力で防御しろよ」
「ちょ、ハル!それは流石に不味い!」
もう、遅い。
「お前の幻想と共に散らしてやるよ。【八重桜】」
神崎流抜刀術︰八重桜
瞬時に相手を通り過ぎるような動き。しかし、相手を通り過ぎる間に両肘、両肩、両膝、背骨、鳩尾にほぼ同時に斬撃を当てる。
時間は、1秒ほど。それで、決着はついた。
「勝者、ハルキ」
ギルドマスターが独り言の様に、しかし全員に聞こえるボリュームで言った。
「う、嘘だろ」「一瞬で、ロックが・・・」「その前にアイツ、いったい何したんだ!?」
俺は完全に不完全燃焼だ・・・。もうちょっと、戦えると思ったんだが・・・。
・・・そうだ。
「夏純、勝負しないか?あの時の決着」
「確かに、あの決着付けてなかったね」
俺らが転生した日。あの日丁度、俺達は100戦目の決着を付けようとしていた。
戦績は50勝49負で1歩リード。これで、勝てば俺の勝ちだった。しかし、決着をつけることはできなかった。それをここで果たそうというのだ。
「いいよ、ハル。但し、私とも賭けをしてもらうね♪」
「賭け?いいぜ」
「じゃあ、さっきと一緒で負けた方が勝った方の言う事を聞くで」
「もちろんだ、おっと。」
夏純は俺に刃が潰れた長剣を投げ、夏純自身は刃が無く、先端も保護されたレイピアを握っていた。
「お前達、下がっていた方がいいぞ」
ギルドマスターはそういい、少し離れた壁まで下がって行った。
それを見習い、下がる者。近くで見たいのか、残る者がいた。
「じゃあ、始めようぜ」
こうして、チートVSチートが始まる。
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