2 なにかが・・・なにかがおかしい
酔っている間に何かしらの性癖に目覚めたのだろうか。
お兄ちゃんって呼ばせる変態ならまだしも、勇者様ってちょっと考えらえれない。こんな可愛らしい娘にそんなプレイを強要したのかと思うと、もの凄く申し訳なく思う。
そして改めて冷静に考えると、この部屋に時計がないためはっきりとした時間は分からないが多分昼頃だ。完全に遅刻だしクビの存在が完全に肩を組んでいる。とりあえずインフルエンザ作戦を実行しなくちゃまずい。ところがだ、携帯電話がない。多分落としたんだろうなぁ。それでも連絡はとらなきゃまずい。デリヘルの娘にこんなことを頼むのも申し訳ないけど、こればかりはどうしようもない。
「すいません。ちょっと会社に連絡をとらなければいけないので、携帯電話お借りできませんか?不都合があればこの施設の電話を借りたいんですけれど・・・。」
目の前の女性は不思議そうな顔をしたままこちらを見ている。確かにデリヘルのお嬢が軽々しく客に携帯電話なんか貸さないだろう。中には変な客もいるだろうし。あっ、俺か。そりゃ勇者様プレイを所望するような奴に迂闊に携帯渡せないよな。
それじゃあこの施設の電話を借りよう。そう思ったのだが、この部屋に電話は見当たらない。というよりここは本当にどこなんだろう。間違っても自分の家じゃない。俺は間違っても部屋に鹿の首の調度品なんか置かない。あらためて自分がいる部屋を見渡すとレンガ調の壁やそれに見合った様々な調度品達。最初はそういう趣向を凝らしたホテルだと思ったけれど、それにしては懲りすぎている。まるで映画のセットだ。
「えー。勇者様はまだ色々と状況を把握されていないようですが、まずは自己紹介をさせて下さい。」
少々わざとらしく咳払いをした女性は俺に向かって自己紹介を始めた。
「はじめまして勇者様。これから始まる冒険のお供をさせて頂きますニアと申します。今は色々と混乱されているようですが、その説明は王の間に向かう間にさせて頂きますので。」
いや、その設定はもういいから。やめて恥ずかしい。