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抹殺学園21 -成績下位は殺されます-  作者: じゃぴのこ
1章 その男、天才児
8/13

STORY7 NO採点ミス

 ――3日後。

「うわぁ、うわぁー!遂に……定期テスト」

 朝起床し、寮の食堂で食事を摂る際から雰囲気が違っていた。

 皆ピリピリとした空気で、緊張感があり、誰ひとりとして喋らない。


「おい、何でこんなに静かなんだ?」

 隣の席に、光河が座ってきて密かに耳打ちしてきた。

「定期テストだからに決まっているでしょ?皆緊張しているの」

 蘭華は呆れながら、溜息混じりに言う。

「へー」

 相変わらず、光河は自身があるのか余裕しゃくしゃくの態度だ。

 光河と蘭華は食器を下げると、いつも通り登校していった。


 教室内でも、みんな黙って教科書や参考書を直前まで眺めていた。

 唯一見てないのは光河だけ。

 みんな必死なのだ。

 なぜなら、成績が下がり、下から10名になると殺されてしまうから。

「筆記用具をしまえー」

 担任の先生がガラッと入ってくる。

 この一言で、緊張していた雰囲気がさらに緊張感を増す。


 問題用紙が配られ、ペンを握る。

 その時から既に蘭華は手汗を握るくらい緊張していた。


 ――大丈夫、きっとできる――


 蘭華はそう自分に言い聞かせ、気持ちを静めた。

「それでは、45分間。はじめ!」

 その一言で、クラス中のテスト用紙をひっくり返す音が一斉にする。


 柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺。この歌の作者をフルネーム、感じで諳んじなさい。

 ――正岡子規

 問一の短歌は何句切れでしょう。

 ――句切れなし

 

 次の日本語を英文に訳しなさい。トムは窓を閉めることができなかった。

 ここは過去形だからcanじゃなくって……

 ――Tom couldn`t close the window.


 炭酸水素ナトリウムの化学式を答えなさい。

 なほこさん(NaHCO3)で、炭酸ナトリウムなつこさん(Na2CO)だから……

 ――2NaHCO3→Na2CO2+CO2+H2O


 記号Aの国名を答えなさい。

 これはマイナーな国だけど、光河とやった……

 ――ベリーズ


 わかる、分かる、解る、判る!

 気持ちいいくらいに、全部、全部分かる!


 あれも、これも、光河に教えてもらったやつと、自分で自習してやったやつ!

 この解き方も、あの解き方も、公式も、全部……分かる!



 蘭華は今までテストでできなかった問題を次々と解き、遂に5教科を終えた。

「ふー!予想以上に出来ちゃった」

 なんと、蘭華は5教科全てのテストを埋めてしまったのだ!

「Cクラスに入れちゃったりして」

 蘭華は達成感を感じながら、思いっきりのびをした。



 職員室にて、今日の定期テストの採点が行われていた。

 全クラスの教員が丸つけに励み、忙しそうにしている。

「今回の抹殺者は誰なんでしょうねぇ~」

 Zクラスの強面先生の隣に居たのは、下から2番目のEクラスの先生。

 互いにコーヒーを飲みながら採点している。

「俺の予想では、今回確実に歌永が入るかと……」

「あぁ。あのいつも抹殺をギリギリで免れる子ですか」

 強面先生が蘭華の解答と模範解答と照らし合わせ、採点した。


「!」

「そんな、バカな!ありえん!」

 強面先生は冒頭部分のみ丸付けをしていたが、丸が連続で続いている。

「なんと、あの歌永蘭華が!?」

 その後も正解が続き、かなりの高得点を叩き出した。


「そんな、1ヶ月程度でこんなに成績が上がるわけなど……」

「一体、どんな秘密が……」

 あまりにも成績が向上していたため、先生方はカンニングを疑わざるを得ない。

「前まで彼女は5教科総合100点代だったはずだ。なのに、今回学年でも上位になるとは……!」

 Eクラスの先生も、蘭華の解答用紙と模範解答を交互に見る。

「これは……もし実力だとすると、彼女は生徒会にまで上り詰める」

 強面先生は、天井を仰ぎながら言った。



 集計が終わり、順位が出された。

「今回の抹殺者は、10人全員Zクラスの者です。彼らの殺害は、1週間後に決行します」

 職員室内では各教員のパソコンに全校のデータが送られてきていた。

「ん、今回の上位10名に、見慣れない名前が入っているな」

「歌永蘭華?確かZクラス所属じゃなかったか?」

「まさか……」

 数々の先生もその結果に驚き、蘭華の前回の順位を調べる。


「本当だ、彼女は前回、抹殺ギリギリだ!」

「なんと!先生、採点ミスじゃないですか?」

 AクラスやCクラスの先生など、たくさんの教員が強面先生に詰め寄る。

「それが……正真正銘、この点数なんです。改竄(かいざん)した痕跡もありませんし……」

 強面先生は口ごもりながら、不安げに答える。


「なんてことだ……一体どうやってこんなに成績を?」

「カンニングじゃないのか?」

 職員室は一日中、歌永蘭華の話題で持ちきりだった。





 


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