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第四話 暗がりの細い道

大勝の余韻と一郎に対する思いを交差させ二郎が一人暗がりの細い道を歩いていた。この道に人の熱は感じない。来た道を辿れば血しぶきが上がる熱があり、この道を行けばネオンの優しい光とそれに沿って全自動車が家に帰っていく日常の和やかな暖かさを見ることになる。

二郎はこの道が大好きだ。

なにかとてつもない力強さとも、負け犬にも見えるこの道が大好きなんだ。

しかし、さっきから妙に後ろに気配を感じる。

誰かに付けられている。大方、アホの一人が俺の金欲しさに襲う気だろう。二郎の歩くスピードがだんだんと早くなる。

その時、後ろから駆け足でこちらに向かってくる音がした。

嫌な予感がしたんだよ。やっぱりおれは天賦の才を持ってるんだな。

考える間も足音はだんだんと大きくなっていた。

その時、なにか鈍器のようなものの衝撃が肩に走った。

あっという間に道路に倒れていた。振り向くと見知らぬ顔の男が立っていた。

「おい! お前散々勝っといて一ドルも無しかよ。あんだけ盛り上げたんだ。半分くらいくれや。」倒れた二郎にお構いなく、髭が妙に綺麗に生えた馬面の大男が話しかけた。

「この道でこんなことされたら、俺は負け犬みたいやないか。」二郎はガンを飛ばして大男に吐き捨てた。

「お前は勝ったんだよ。負け犬は俺だよ。でも今からは俺が勝ち組でお前が負け犬だ。」気色悪い笑みを浮かべバットを振りかざしてきた時、二郎は思い出した。

体格では圧倒的不利。敵うはずがない。

でも、モーガンは言ってた。二郎の体が動きだした。

思い切り大男のナニを蹴っ飛ばす。

宙を向く大男の顔には既に涙が微かに見えた。

カカト落としをお見舞いしてやりたいが出来そうもない。

もう一発ナニに強烈な蹴りをかましてやった。

大男はゲロを吐いた。

今だ。ゆっくりと首に手を掛け力を抜き締め上げてみた。

「許してください! スミマセン!」思いの外効いてる事に二郎は吃驚した。

なにか自分にとてつもない力強さを感じた。

「いいや。お前のやったことは犯罪や。すぐに、人造警察がお前を捕まえに来はる。」

程なくして巡回型の人造警察、通称ポリスロボットが駆けつけてきた。人造人間達はそれぞれ特長や職業も違う。その職業にあった特長に仕上げられている。どんな極悪人もポリスロボットの前ではハエのようなものである。

すぐ近くにあった、防犯カメラと交信を取ってポリスロボットは事実に基づき言った。「重罪! 重罪! 地獄行き! 地獄行き!」この声を聞くと大男は泣きじゃくり地団駄を踏んだ。

これだから争いは終わらない。それを望む者、差別、嫉妬、優劣その他諸々がある限り。すべて無くしてくれるのかい? ヒーローさん。

心で一郎に問いかける。

「ご苦労さん。…… おい! 馬面! 地獄もそんな悪いところやないで。きっと、良いことも待ってる。」二郎は最後に一言だけ言うと何事もなく歩き出した。

夜明けだ。ミコの奴を送らないと。

そういえば夕方から、また地下で一仕事あることを思い出した。

今日は徹夜だ。

二郎は急ぎ足で家に帰っていった。


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