第二話 歩戦の決着
動くことはないであろうモーガンの最後の息の根を断つ。キングは息を荒らげモーガンの顔面を踏みつけようとしたが、その時バンにいた全ての者がどよめいた。
また眼の中でモーガンが動いた。それも、苦し紛れのもがきではなく、踏み付けた足を避けて蹴りをかましていた。キングの眼が天井を見上げる。モーガンのカカトが見える。衝撃と共に全てを失った。
即死だった。この瞬間対局が終わった。観客の歓喜や落胆、憤怒が入り混じる。憤怒の声が大きい。
余程の者がキングに賭けていたのだ。
「勝利者インタビュー、勝利者インタビューです。」この喜怒哀楽の中、無表情の声で軽快に実況がインタビューをしている。
「今日の勝因は?」
「僕は、彼の対局を毎日のように見て研究しました。彼の弱点、それは力任せな所だと分かりました。ヘッドロックに持ち込ませれば、力任せな締めは逆効果です。うまい人は力を抜いて的確に入れてくるんですよ。」律儀な応対だった。そして、彼の計算は見事的中していた。会場はもうモーガンコールに変わっている。
所詮小遣い稼ぎ程度の客、ただ自分の利害のみに執着し、王様が変わってしまったなら今度はそいつを祭り上げる。アホな奴らだと二郎は思った。
「二郎さん。流石! 天才! 天才!」「今日は何を奢ってくれるんですかね?」周りのアホ共が騒ぎだした。
「悪りーな。ちょっと、小便!」こういう時は、トイレに逃げ込む振りをして屋上に避難する。屋上には滅多に人はこないし、夜空がこの燃えたぎるギャンブラーの炎をゆっくり溶かしてくれるからだ。
とは言っても一人になるとつい本音が出るものである。「大穴的中や! ルンルルンルルン♪」陽気に鼻歌をしたのも束の間、暗闇の中に、人影が見えた。「その様子だと、お前もモーガンに賭けてたんだな。」聞き覚えのある声が語り掛けた。




