ゆらゆらの森
夢か、現か。
ふわふわゆれる地面 雨上がりっぽい森の中
なぜかわたしは歩いている
生い茂る木々の隙間から誰かが手招く
あたりの景色は まるで夢のように消し飛ぶくらいの儚さに満ちている
泥に足を取られながら手の方へと向かうと そこには誰もいなくて
わたしは力尽きて座り込むけれど すぐに誰かの声がする
――だめ、まだ座っちゃだめ
――歩いて
いったい誰が話しかけてくれているのかわからない 声の主が男なのか女なのかもわからない
それくらい 消え入りそうな声
めまい
――こっちに歩いてくれば、それでいい
視界に入った手招く誰かを見失いたくなくて
立ち上がると森の中 ひそやかな音がする
歩くたびに地面が揺れる
一歩踏み込むたびに、すぐ後ろの地面がぼろぼろと崩れていることにも気がつく
――だめ、振り向いちゃだめ
黒いなにかが、わたしの一歩後ろを飲み込んでいる 皮膚感覚がわたしに教える あれは観てはいけないもの
冷や汗が次々に首筋を伝い背中に落ちる
――止まらないで こっちに来て
こんなにまで鬱蒼と
こんなにまで不揃いに
どこまでも密集している木々は白樺に似ている
みしみしと枯れ枝を踏むわたしなのに
追いかける存在は
するするするする
いきなり目の前が開けて
立ちすくむわたしの前にあるのは静かな泉
ひたすらの静寂につつまれた青く澄んだ水の光
違うめまいがわたしを襲う
――ベルの音で目が覚めた あれは夢だったのか
いや、違うよ
だって靴擦れができている
靴擦れ記念☆