Number1 事件の発端
そう、私はよく笑う、ただの女子中学生だった。
その笑いが本心で笑っているかなんて、誰にも分からない。
ただ、笑っていれば友達もよってくるし、普通の女子中学生だと思われていた。
それに、勉強ができれば教えてほしいと勝手に話しかけてきてくれる。
何の苦労も無かった。あいつがここに来るまでは・・・。
・・・
あいつが来たのは私が中学2年生の夏だった。
本当に何の変哲も無い日々で、私はとても幸せだったのに。
(キーンコーン・カーンコーン)
私を囲んでいた女子も、自分の席に戻っていく。
「よし、ホームルーム始めるぞ。」
「起立、礼、着席。」
全員が、一斉に席に着く。今日もいつも通り、変哲の無い日々。
「それじゃあ、転校生を紹介するぞ!滋田、入れ。」
へー。転校生か・・・。
(ガラガラガラ)
滋田と呼ばれた少年が、ゆっくりと教室に入ってくる。
「それじゃ、自己紹介してくれ。」
「始めまして、滋田 零十です。よろしくお願いします。」
クールなしゃべり方にそこそこのルックス、第一印象はまあイケメンといった感じだろう。
この学年で言ったら、5位ぐらいにモテルだろうか。
「うーん、南。お前、学級委員だろう。当分、滋田の面倒 見てやってくれ。」
「はい。」
私が返事をすると担任は満足そうに笑った。
はー。面倒な。まあ、男子の学級委員は不登校だからなー。
「じゃあ、南の隣に座ってくれ。」
「はい。」
滋田は無愛想な返事をすると私の隣に座った。
「学級委員の南です。よろしく。」
「・・・あぁ。」
うわー。態度悪いな。絶対、疲れる。
「南、今日中に学校を紹介しといてくれ。」
「はい。」
「じゃあ、ホームルーム終わり。」
「起立、礼」
礼と同時に、みんなが動き出す。
うわー。めんどくさ。男子なんか興味ないのに・・・。
・・・
昼休み、私は担任に押し付けられた業務をこなすために、
滋田に声をかけることにした。
「滋田くん、悪いけど先生に頼まれてるから
学校案内したいんだけど・・・、いい?」
「あぁ、うん。」
相変わらず無愛想な返事。案内する身にもなってほしい。
「じゃあ、行こうか。」
私は教室から滋田を連れ出すと、授業で使う教室は全て案内した。
「ねぇ、滋田くん。他に行きたいところある?」
「うーん、じゃあ屋上がいい。」
この時期は屋上は暑い。何でよりによって屋上なんだ?
「分かった。」
そう思いながらも仕方なく承諾する。
私は滋田を連れ屋上に向かった。
さすがに真昼間の屋上は暑く、誰もいない。
「ねぇ、滋田k・・・。」
私は何がしたいかを聞こうとして後ろを向いた。
「ふっふふ・・・、ははははははははははっ!」
「え?」
いきなり笑い出した滋田に動揺を浮かべる私に、滋田は笑いながら話をする。
「なに《えっ》って顔しちゃってんの?大丈夫?びっくりした?・・・あはははは!」
屋上には、滋田の笑い声が響く。
「君、なんn・・。」
「さすがに、ここまで簡単に騙されるとはね♪
お久しぶり?始めまして?まあ、いーや♪本当にびっくりしてるね。
《えっ、何?》ってかんじだね!南さん♪
いや・・・、南博士の娘さん、そして、実験番号ラストナンバーさん。」
実験番号ラストナンバー、二度と呼ばれないと思っていたその名前に
私の記憶がよみがえってくる。
「まさか、君・・・。」
「そう・・・、と言うか名前を見た時点で気づかなきゃ♪俺は零十・・・、
つまり、0(れい)10(と)。
実験番号10番だよ♪」
「でも何でここが・・・?
実験に参加した人たちの記憶は消したはずなのに・・・。」
おかしい、おかしい、私の中が疑問で溢れかえっていく。
「ふふ♪残念ながら調べさせてもらったの。
だってさ、僕の今の仕事は情報屋だからね♪」
「まさか、そんな・・・。」