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皆さんに楽しんでいただければ幸いです♪

 バヅン――――!


 グレイ! あそこにいるのはグレイ! 私が助けないと行けないグレイ! 私が助けてあげたいグレイ! 私が助けなきゃ、誰がグレイを助けるの!


 身体に力を篭める。

 既に自由落下を始めている身体は止まるわけがない。

 それでも力を篭めない訳にはいかなかった、何かをして駄目だった、ならまだ諦められる……でも、何もせずに諦めるなんて私には出来ない! 何か自分が出来る事を探すしかないんだ! 何か私に出来る事を!


 ――――幸運をあげる。


 頭が悲鳴をあげる、何か、私は何かを忘れている、大切な何かを!

 その記憶に思考を向かわせる。

 そこに、答えがあると信じて!



――――――――――――


「ここは……」


 私の身体はどこか宙に浮いているようだった。

 見える景色は、あの丘の上。

 両親の死に気付かずに私が遊び続けていた場所だ。

 よく見るとそこに一人の少女だ倒れていた。


 ――――私だ、あそこには私がいる。

 周りを見ると、変わらない位置に両親がいる。

 私はあの後病院に連れて……


「君が……この力を源泉ですか」


 そこに純白と翼を持った天使が現れた。

 どこか見た事あるような気がするが、今はそんなことどうでもよかった。

 私は昔に天使に出会った事がある? そんなの私は知らない、知っているならグレイと初めてであったときそんなに驚かなかった筈だ。

 純白の天使が少女の私に近づく。

 小さい私は顔を上げてその天使の事を見る。


「あなたは、天使様?」


「そうですよ、僕は天使です」


「天使様…………」


 小さい私は何かを言おうとした。

 だが私は何を言ったか知らない、よく耳を研ぎ澄ませる、あの時の私が何を言ったのか。


「お母さんとお父さんを……天国に連れて行ってあげて……」


「っ!?」


 それは天使の驚きなのか、自分の驚きなのか分からない。

 あの時の私は両親の死を知っていたのだ、そして、それを見なかったことにしていたのだ。


「……あの二人がしてきた事が何か分かっていますか?」


「ううん、分からない」


「そうですか……はっきりいいます。それは不可能だ」


 天使はそう言い切った。

 小さい私はあんまり驚いていない。

 まるでその答えを知っていたかのように。


「天使様、そんな悲しい顔しないで?」


「いいえ、こうさせてください。僕はあなたの願いを叶える事が出来なかったのだから」


「それでも、天使様に悲しい顔は似合わないです……」


「……優しいですね」


 天使が純白の翼を大きく広げた。


「お上もこんな不幸の少女を救う為にならば許してくれるでしょう……」


「何をするの?」


「……あなたに幸せをあげるんです。それが僕のせめてもの償い」


 純白の羽が濁り始める。

 まるで何かの汚染されるように。

 まるで純白にするためのなにかがどんどん抜け落ちていくように。


「天使様の翼が……」


「僕の力をもってしてもあなたのその性質を完全に移動する事が出来ませんでした……だからその性質を表せないように僕の力でその力を封印することにしたのです。

 天使の翼は力の象徴です。その力を分け与えるのですから、これは当然の結果なんですよ」


 すべての工程が完了し、そこに残ったのは薄く翼の生えた小さい私と、灰色の翼を持ったグレイだった。


「くっ……なるほど、天使である僕ですら凄まじい力の塊だ……抑えきるのは、難しい……か」


「天使様?」


「大丈夫ですよ、僕はこれでも結構強いですから♪」


 灰色の天使の身体が縮まる。

 その分の力をその何かを抑えつける事に集中しているのだろう。


「それにしても、よく耐えていましたね、こんな“自分の憎む全てに悪意を振りまく力”を持っていながら……」


「何言ってるの? 難し過ぎてよく分からないよ?」


「……そうか、あなたには違う力も含まれていたのですか……私はその力の均衡を崩してしまったというわけですね……」


「ねえ、天使様?」


「ごめんなさい、どうやら均衡を崩した罰はでかいようです、一度概念に戻る必要があるようです。

 最後に、あなたの名前を僕に教えてくれませんか?」


 すっかり小さくなった天使が小さい私の前に立ち、手を伸ばす。

 それを握りしめ、


「私は真木、日比野真木、あなたは?」


「真木さんですか、覚えておきます。僕の名前は――――」


「待って! 聞こえない、なんて言ったの!? 待って、待ってえええ!!」


 私の身体は浮上していった。


――――――――――――


 はっ!


 私は自由落下の途中で意識を取り戻した。

 さっきの映像が本物なら出来る筈だ、私にはあの天使の力が宿っているのだから!


「お願い、翼!」


 願う、願う、願う願う願う願う願う願う願う願う――――!!

 届け、届け! 私の願いよ届け、天使の翼!


 すると背後に今までなかった……いや、実際にはそこにあったのだが、誰もその事実に気付いていなかっただけの翼があると分かった。

 ――――ありがとう。


 絶対助けるからね、グレイ!


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