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皆さんに楽しんでいただければ幸いです♪

「ここは……どこなんだろう?」


 ゆったりと本能に任せたまま移動して、気が付いたら綺麗な場所に来た。

 いや、綺麗というには少し雑だ。

 花畑があったような場所は、掘り返して荘厳な土の建物が作られている。煉瓦の一つ一つまで精巧に作られているものだ。


「私は……ここを、知っている?」


 いつかここを見た事がある。

 体は反転して、一つのベンチに向かう。

 未だに紅い斑点を残したそれは怖いくらいの雰囲気を放っている。


「これは誰の紅色……?」


 知っている。

 これは大切な紅色。

 私に刻まれた誓いの紅色。

 私はこの紅を知っていなければならない。


「これは誰に向けての花冠?」


 側に落ちていた花冠を手に取るとそれを被る。

 分かる、今自分が何をするべきか。

 私は大きな街の中を進み、一つの、たった一区画だけ、壊れた建物の前にたどり着いた。


「ここだ、ここに何かがある」


 私は膝をつき、砂を手に取る。


「違う、あの時は砂じゃなかった。あの時は確か……泥だった」


 周りを見渡す。

 水が見える。

 遠い、だが必要。

 入れ物はない、なら入れ物は私だ。

 水を入れる。

 限界まで、飲む。

 そしてそのまま戻り、水を吐き出す。

 砂は泥となる。

 その泥を手に取り、二三回手の中で転がす。

 感覚が戻ってきた。

 この調子だ。



――――――――――――



「お嬢様、見つかりました……ですが……」


 電話の向こうから聞こえてくる声は何か驚いているようだった。

 何故だろう?


「それで? どこにいるの?」


「ここから二、三時間はかかる距離です。どんな手段を使っても人が移動出来る距離じゃありません」


「もしかしたら私が眠ってすぐに出たんじゃない?」


「いえ、お嬢様……そうだとしてもおかしいんです。

 考えてくださいよ? 例えそうだとしても時間的に公共の移動手段は使えません。更には自力の移動手段ではどれだけのプロでも行ける距離ではありません」


 なんだ、その程度かと、私は思った。

 真木なら当然と思っている。


「そんな事は良いんです。それで? 真木の居場所は?」


「はい。少し細かい位置なので、おって追加します。とりあえずそこから北にずっと進んでください!」


「了解! 操縦士さん、頼みますよ!」


「任せとけ!」


 私を乗せたヘリはどんどん北上していった。


――――――――――――


 これはここ、これはあっち、これもあっち、これもあっち、これはここ…………

 私は目の前で完成していく建物を、まるで自分から離れた様にみていた。


 幽体離脱ってやつかな……


 そんなどうでも良い事を考えられるほどに、自分と、建物を造っている自分が離れていた。


 そして、それだけが、自分に残る感覚の全てだった。

  

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