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皆さんに楽しんでいただければ幸いです♪
「ごゆっくりお楽しみくださーい♪」
そう言われて、ゴンドラの扉が外側から鍵を掛けられる。
事故防止の為だよ?
「楽しみだね~♪」
「はい……」
グレイと私は向き合うような形で座っている。
そして……えっと、その、重たくないですか? 空気が。
「グレイは空飛べるんだよね?」
「あまり早く無いですけど……」
「それでも凄い! いいなぁ、自分の翼で飛ぶってどんな感じなのかなぁ……」
「楽しいことばかりじゃないです……飛んでる間はずっと集中してないといけないので、景色を楽しむ暇さえないので……それに加えて僕は空を飛んでると問答無用で攻撃されましたから……」
グレイが悲しそうな顔をしている。
その顔の意味を、私は瞬時に理解した。
それが私の得意な得意な事の一つだ♪
「なるほどね……一般的な天使様は飛んでる間は集中してるものなんだね♪ でもグレイは飛べるよね? 飛べるからこそ攻撃されたんでしょ?」
私の言葉は断定要素があった。
絶対に間違うわけがないと信じていた。
「そ、そんなことないです……」
だがグレイは否定した。
肯定する事でここにはいない誰かの事を護ろうとしているのかもしれないし、そうではなく、ただ謙遜しているだけかもしれない。
でもそれが、私には理解できなかった。
「嘘。グレイは飛べるはずだよ、どこまでだって。ただそれを見ようとしていなかったけ」
「……」
グレイの目が驚きに開かれる。
それは私の言葉を聞いてなのか――――。
――――それとも今この瞬間このゴンドラから見渡せる景色を見てなのか、それは分からないしどうでもいい。
「この景色、グレイは見た事が在る筈なんだよ♪ だってグレイは飛べるんだもの♪」
妙にお姉さまっぽくないですか私!? とうぬぼれているのもつかの間。
グレイの口から漏れた言葉は意外なものだった。
「紅いお日様……草むらの秘密基地……僕に名前を……友達……」
グレイの目から涙がこぼれ落ちている。
でもそれは悲しい涙ではないようだった。
何故ならその目が、涙を流しながら、それでも笑顔になろうとしているのだから。
だからこそ、私は少し前に出て、グレイを自分の胸の中に引き寄せた。
友達かぁ……グレイにはいないって言ってたような気がするんだけどなぁ……。
どうでもいいや♪ グレイに友達がいたってことはそれだけで、私も幸せだよ♪
「グレイ、私の天使様……」
「えぐッ……えぐッ……」
グレイは私の胸の中で存分に泣いた。
そして、四分の三が過ぎたくらいには気持ちを落ち着かせていた。
「ごめんなさい……」
「いいよいいよ♪ これくらいおねーさんにドーンと任せなさい!!」
グレイは強く胸を張る私の姿を見て小さく笑い、はい、と答えたのだった。
それからゴンドラは最下部に着き、扉が開かれた。
目の前で待っていたのはサッチー。
「じゃ、待ってるからねー♪」
私はそう言って二人を見送った。
出来る事なら、グレイが今度は景色を楽しんでくれればと思いながら。