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赤ちゃんから始める来世改善計画  作者: ぎあまん


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キャラメイク



 我慢がまんガマン我慢……。

 あれは他の人が欲しがっているから諦めよう。

 あれは勝てそうにないから他の人に譲ろう。

 あの子は人気者だから俺なんかには相応しくない。

 あれはうちが貧乏だから欲しいなんて思ってはいけない。


 我慢ばかりしてきた。

 自分がたいしたことのない人間だということは早いうちにわかっていた。

 頑張っても勉強の成績はよくならない。

 頑張っても体育の成績はよくならない。

 頑張ってもゲームのスコアは上がらない。


 それなら無理をしないようにしよう。

 そこそこに頑張っていれば納得するようにしよう。

 そう思って生きてきた。


 そんな俺の人生は、ろくでもない終わり方をした。

 トラックに轢かれそうになっている子供を助けたら自分が犠牲になった。

 人に譲ってばかりの人生だからって、自分の命まで他人に譲っていいなんて話にはならないだろうに。

 なんて馬鹿な行動をしてしまったのか。


 しかも、そのまま死んでいたらまだ救いはあったんだが、生き残ってしまったもんだから大変だ。


 バンパーで吹き飛ばされた上にブレーキが間に合わずにタイヤに踏まれてミキサーよろしくかき回された上で、ガードレールの硬い胸板に抱き止められた。

 下半身は動かないし、上半身に関しても麻痺してろくに動かない。

 しかもアスファルトとタイヤによる熱い抱擁の結果で全身の皮膚がズタズタになり、元の体に戻ることは絶対にないと医者に断言されてしまった。

 片目だけを残して残り全部が包帯でぐるぐる巻きになった状態の自分を鏡で見た時は本気で絶望した。


 ただ、衝動的に自殺するような動きさえもできなかった。


 助けた子供とその親と対面したのを一度は覚えているが、脳もけっこうな損傷をしたようでそれ以上は覚えていない。

 病院にやってきた両親兄弟の悲壮な顔も覚えている。

 よく覚えている。


 家族の心情を考えればわかる気もするのだが、あの表情を見れば自分の絶望的な状況を如実に物語っているような気がした。


 で、結局、そこから長生きできるはずもなく、ていうかそんなことを望むはずもなく……正確な日数はわからないがなんか死んでいた。


 そして俺は神様に異世界への転生を誘われている。

 なんか、輪廻転生のシステム的にすぐに同じ世界に魂が行くことはないらしい。


 で、異世界転生ということになったのだけど、そこは割と激しい世界らしいので特別な力を授けてくれるのだそうだ。


 激しいって戦わないといけなかったり?

 ……戦わないといけないのかよ。

 ねぇ、その異世界って実は修羅地獄って名前じゃない?

 ちょっと良い感じの名前に変えてもヴァルハラとか?

 神様は微妙な笑顔のまま答えなかった。


 なにはともあれ……。


 そんな世界なので転生に合わせて特典がもらえるらしい。

 他の人間の転生では、ランダムでしかもらえなかったり、そもそももらえなかったりと色々あるそうだ。

 どこでそれが違うのかと尋ねてみると、前世での行いとその波及効果だと断言された。


 で、俺の場合は最後の子供を助けたのがけっこうな加点ポイントだったらしい。

 さらにその子供が、俺の死をきっかけに医者を志し、未来において人類史に強い影響を与える人物を救うことになるのだそうだ。


 それがさらに大きな加点ポイントとなり、俺は自分のキャラメイク権を手に入れた。

 最後の最後で自分の人生で唯一素晴らしいことができたようだが、結局それは譲り続けた人生の終着点のようにも思えた。


 これは簡単に言えばTRPGのキャラメイクに似ている。

 ただし、サイコロを振って能力値を決めるのではなく、決められたポイントを使って能力値やスキルを獲得していくというものだ。


 懐かしいなTRPG。

 中学高校の時に好きな友人がいて、誘われてプレイに参加したり、同好の人たちによる集会に行ったことがある。


 与えられた数値を元に自分という人間を作ろうとしてみる。


ーーーーーーーーーーー

名前:

力08/体30/速15/魔05/運05(成人(12)予定ステータス)

年齢:

スキル:【再生】【鑑定】


誕生環境:普通

生育環境:普通

ーーーーーーーーーーー


 とりあえず作ってみたが……正直パッとしない。

 あんな痛い目にあって死んだので、もう痛いのはごめんだと思って防御力と逃げ足重視に能力値を振り、さらに怪我もすぐに治るようにと【再生】を、さらに異世界転生物といえば【鑑定】だろと思ってスキルを獲得した。


 だが、いまいちこう……突き抜けた感じがしない。

 譲り続けた人生の末がこの程度なのか。

 確かに優秀そうな能力だけれど、web小説のチート物を見ているとやはり納得できない。


 所詮、他人に何かをしたところで得られるものなんてこの程度、ということなのかもしれない。


 ……で、あるならば。


 そこで俺は神様にいくつか質問した。

 質問したのは、二つだ。


 一つがこれ。

 ポイントを割り振るタイプのキャラメイクであるなら、ステータスにマイナス要素を付け足すことでポイントを得るというルールのTRPGがあるのだが、それは可能なのかと。


 神様は可能だと答えた。

 俺はさらに二つ目の重要な質問をした。

 いやもう、この思いつきを得たのは悪魔的だと思った。

 だが、思いついたのだから仕方ない。


 俺は質問し、そして神様は可能だと答えた。

 かなり呆れた顔をされたが、それでも可能なのだと言った。


 俺は再びキャラメイクに専念した。

 そうして、こうなった。



ーーーーー今世ーーーーー

名前:

力01/体01/速01/魔99/運01(誕生時ステータス)

年齢:

スキル:【カルマ操作(限定)】【鑑定】【魔導骸装】【再生】【病気無効】【毒無効】【成長加速】【高速思考】【多重処理】【言語理解】【基礎魔導知識・極】【死霊魔法・極】【幽体離脱】


誕生環境:劣悪

生育環境:劣悪

ーーーーーーーーーーーー


ーーーーー来世ーーーーー

名前:

力01/体01/速01/魔01/運01(全年齢帯における上限ステータス)

年齢:

スキル:【成長不能】【虚弱体質(重度)】【注意散漫(重度)】【鈍足(重度)】【短気(重度)】【臆病(重度)】【猜疑心(重度)】【虚栄心(重度)】【依存症(未定)】【執着(未定)】【悪運(最高)】【憑依体質(最高)】【絶対貧乏】【絶対不幸】【思考不全】【他者印象:絶対不快】【確定寿命70】


誕生環境:悲惨

生育環境:悲惨

ーーーーーーーーーーーー


 そう、さらに来世の自分に《《譲って》》もらったのだ。

 喩え来世がボロカスになろうとも、『優れた能力を持つ自分』というものを体験してみたかった。

 他人に譲るぐらいな、自分に譲れ、だ。


 まず、ステータスが適用される年齢を生まれてすぐにした。

 スキルも同様だ。

 生まれた瞬間から、これらのスキルも手に入る。

 魔99は年齢的な上限がそれだったからだ。

 生まれてすぐだと他の能力値はどうにもならないが、『魔』だけは99まで上げることができた。

 なので魔法系スキルを獲得することにした。

 魔法なら生まれてすぐに操ることができると神様から保証された。

 他にも魔法系&生まれてすぐ有用ということで【高速思考】も得た。

 身体能力でどうにかすることができないのだから、素早く考えられるというのは重要だ。


『運』も操作できたそうだが、俺は運の良さっていうのをあまり信用していなかった。

 俺の不運が誰かにとっての幸運になるんだから、運なんて信用できない。


 誕生環境と生育環境というのは生まれた時の家庭環境がどんなものかってことだ。

 例えばの話、『誕生環境:最高』『生育環境:劣悪』にすると、生まれは王族だけれど、私生児だから捨てられるとか、王位継承の争いに敗れて国を放逐されるとかになるということだそうだ。


 なので今回は、どちらも『劣悪』にした。

 最初から悪ければ親に期待することもない。


 ……事故った俺を見た時の家族の表情が忘れられない。

 冷静に考えれば仕方ないことなのだとわかっていたとしても、信じていた家族にあんな表情をされるのはたまったもんじゃない。


 だから、生まれた時から一人で生きる方法を求めた。


 それでも今世だけでは足りないので来世があんなことになった。

 あんな絶対に成長しない能力値と、マイナススキルばかりでどうやって生きていくんだと思うが【確定寿命70】の効力によって七十歳まで死ぬことはできない。

 自分の寿命がわかっているなんて、普通に生きている分には良かれ悪しかれの天秤が右に左に触れていくようなものだろうが、あのステータスでは悪い方にしか傾くことはない。

 生き地獄間違いなしの来世が約束されることとなった。


 さすがにこれはあんまりだと神様が思ったらしい。

 それで追加されたのが【カルマ操作(限定)】だ。


 俺自身のカルマ状態を確認し、そこで得たポイントでキャラクリ時のように操作することができるそうだ。


 考えようによっては、必要なスキルができた時にポイントを使って新しく獲得することが可能ということだ。


「手に入れた能力で人々のために働きなさい。それで得た功徳(カルマ)を用いて来世を立て直しなさい。あなたが前世で成した行いは、本当に良いことだったのだから」


 神様は最後にそう言って、俺を物質世界に送り出した。

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