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GREAT GREEN ANOTHER  作者: 矢寿紀張


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第一章 薫の決断

前作「GREAT GREEN AFTER]第十八章後半あたりから始まります。

しばらくは、前作で描き切れなかったエピソードを綴ります。ノーベル賞受賞までの道のりも、実はかなり大変なものだったのです。

 これは、ミユキの活躍と並行して始まる、三村薫の物語である。


 その日、薫はリビングでテレビニュースを見ていた。ちょうど、のぞみ財団の中園博士が光合成の動物適用技術公開の記者会見の様子が流れた。

 薫は、何か引っかかるものがあった。急いで、動画サイトを検索して記者会見の様子を最初から見た。

 動物が光合成により自分で栄養を生産できるようになる。その技術を無償公開する。

 新財団「ゆうぐれなあす財団」が発足する。

 引き込まれる何かがある。

「これだな。」

 薫はそう言って、スマホをおいた。


 薫は、東都大学法学部大学院を修了して、厚生労働省にトップクラスで採用された才媛だ。厚生労働省では主に貧困家庭対策を担当し、数々の政策を迅速にこなし、上司からの評判は良かったが、抜本的な対策に至らないことが薫の中に不満としてくすぶっていた。


 翌日、登庁するや否や、薫は同僚の藤田弘明をつかまえた。

 藤田は、薫の二年先輩で、公私にわたりいろいろ相談している関係だ。

「藤田さん、昨日の、ニュース見ました?」

「何の件かな?」

「光合成を動物でも行える研究発表の件」

「ああ、ネットや新聞でも2、3日前から報じていたやつだね。かなりすごい技術だよ。世界が変わるかもしれない。」

「やっぱり、そうですよね。」

「私、ここを辞めて、あの財団に入りたいかなと思って・・・」

「え、なに?こんなこと朝の自販機前で話すことじゃないよ。今晩は空いている?それならいつもの店で6時ならいいかな?」

「ええ。」

 そう薫は答えて、コーヒーを持ったまま自席に駆けていった。

 藤田は一日気もそぞろで、仕事が手につかなかった。定時になるとすかさず新橋駅近くのいつも薫と飲みに行く焼鳥屋に行って薫が来るのを待った。

 15分ほど遅れて薫がやってきた。

「ごめんなさい、藤田さん。お待たせしちゃって。」

 薫はそう言って隣に座った。

「私もビールにするわ。生中一つ。」

 そう言って、藤田が注文してあった焼き鳥の串に手を付けた。

「辞めるって本当に?」

 藤田がいきなり聞いた。

「そう、もう決めたの。」

 薫は躊躇なく答えた。

「そんな・・・」

「これ見て。」

 薫は藤田にスマホの画面を見せた。ゆうぐれなあす財団のサイトであった。

 そこには、事務経験者募集の文字があった。

「これに応募する。あたらしい財団だから人材不足らしいの。」

「ようやく、主任になったばかりだろう。まだこれからなのに、もったいないよ。」

 藤田は、とどまるように説得しようとした。

「そうなんだけどね。でも私は厚生労働省(ここ)ではもう限界かなって思っていたの。」

「限界?どういうこと?仕事ができないわけじゃないだろう。」

「私が思っていたのとは違う世界だった。確かに支援はできているけど、本当に困っているところに手が届いていないし。だからと言って制度の改革もなかなかできないし・・・行き詰っちゃっていたところなの。なんか、やりがいも無くなってきちゃってね。」

 そう言いながら、薫は店員が持ってきたジョッキを受け取ると、一気に飲み干した。

「この財団なら、やりがいはありそうなのかい?」

 藤田は説得をあきらめて、聞いた。

「まだわからないわ。一度聞きに行ってみようと思って、明日有給休暇を取ったの。あっ、お兄さん。こっちに生中一つと、モモ焼き十本お願いね。」

「行動が早いね。」

 藤田は、自分の焼鳥をほおばっている薫を見ながらそう言った。

「俺も昼休みにちょっと調べてきたんだ。こんな開発が進んでいたのは知らなかった。しかし、確かにこれは世界を変える可能性がある。使い方次第だ。やりがいは確かにあるかもしれないけど、うまくいくかどうかはわからないよ。」

「それは承知の上、私が成功させてやるつもりで臨むわ。」

 薫は強気に言った。

 その時ビールと焼き鳥が来た。

「藤田さんも焼き鳥どうぞ。」

「おい、散々俺の焼鳥を食っておいてそのセリフか?」

「だって待てなかったんだもん。」

 笑いながらやり取りをした後に、藤田が再びスマホを見せた。

「この記者会見資料の最後はみた?」

 そこには、「Special Thanks Dr. Shiro Mimura」と記載されていた。

「うん、見たよ。それ、私のおじさん。」

 薫は焼き鳥を口に入れながら簡単に答えた。

「お父さんに聞いたんだ。私が小さいころに飛行機事故で亡くなったって。なんでもこの技術の基礎研究をしていたらしいけど、よくわからないって。」

「じゃあ、このコネを使って入るの?」

「それは言わない。そんな理由で採用されたくないし。私は私の実力で勝負したい。」

「君らしい、答えだね。」

 藤田は感心していた。

「今日は君を説得しようと思っていたけど、決心は堅そうだね。改めて君の前途を祝して乾杯しよう。」

 そう言って飲みかけのジョッキを差し出した。

 二人で軽く乾杯をした後、

「俺はいつでも君を支援するから、困ったことがあればいつでも相談してくれ。」

 と言った。

「ありがとうございます。頼りにします。」

 薫はそう答えた。この藤田の一言がこの後の藤田の一生を変えることになるとは、本人も思ってもいなかったことである。


薫はゆうぐれなあす財団に入り、何を始めるのでしょうか。

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