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幸せが約束された白色の婚約はその嘘により手から零れ落ちる。  作者: 唖々木江田
逃げ場の無い黒色の婚約は執着により旅立ちを迎える。

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ーーーーー



ーーーー



ーーー



ーー




(……どこで私は間違えたのだろう?)




扉の外に微かに漏れ始めた少女の声に、この状況を作ってしまった自分へ、今日何度目になるか分からない自問自答を繰り返す。




(これで確かに変わるはずだったのに……。それともあの方は使わなかったのかしら……?)




夢現の状態にして、一度だけ熱を重ねた相手を思い浮かべる。

現から醒めた後に自責の念を抱えながらも、私のことを支えようとしてくれた律儀な彼に、あの最後の日に渡した、彼女達を救える唯一の存在だったものが頭を過ぎる。




(それとも噂通り、同じ相……)




「…………てッ!嫌いよ!!」




「!?」




外に漏れて聞こえていた声が叫びに変わる。

その声に、室内で何が起きているのか予想のつかない不安に身体が震え始める。





(私は……)




考えている途中で身体は反射的に動き、少女が入っていった扉の取っ手に手をかけたーー。




ーーーーー



ーーーー



ーーー



ーー




「お(ひい)様!!」




「!!??」




壁に何かが打ち蹴られたような衝撃音に続き、自分を呼ぶ、震える甲高い女の叫び声が部屋の中に響き渡る。

想定外な状況に身体が驚きにより止まり、振り下ろした短剣の切っ先は彼女の首元に刺さる寸前で止まる。




(何!!??)




ーーギィィィバタ……ンッ……。




邪魔をしてきた後ろから聞こえた声に振り返ると、白装束の一人が慌てるように急ぎこちらに向かってくる背後で、ゆっくりと入り口の扉が閉まっていく様子が目に入った。




「…………そんなに慌ててどうしたの?」




「……ゴクッ……。」




ゆっくりと立ち上がり、祭壇の上から相手を苛立たしげに見下ろし問い掛けると、女は両膝を床に付け、少し身体を浮かせた格好で頭を下げて傅いた。

こちらに響くほど大きく息を呑む喉の音が聞こえた後に、面布で隠された顔を真っ直ぐに向けてくる。




「……彼のお方が……起きられたとの連絡があり……お姫様をお探しでございます。」




「……そう……。」




「………。」




「……終わったら向かうわ……。」




震えたままの声で喋り始めた内容に、誰がと聞くまでもない相手の報せを受け取り部屋に入って来たようだったが、後の面倒よりも今しかない彼女の方が、何よりも優先だった。




「!!…………。」




「……どうかした?」




「……何でもございません。」




驚いた様子が面布の揺れにより伝わってきたが、それ以上特に喋らず少し下を向き、そのまま立ち去ろうともせずに黙り込んでしまった女に問い掛ければ、“ハッ”としたように頭を上げて面布を左右に少し揺らした。




「そう。分かったのなら……外で待っていて。」




「……はい……失礼致します。」




再び頭を深く下げると立ち上がり、ゆっくりした足取りで閉じられた扉前まで到着すると、こちらに視線を向け続けながら扉から出ていった。

 



「………。」




「そちらの希望は全て叶えた……。」




「……?」




彼女に向き直り手に持つ短剣を力なく胸元に引き寄せると、突然部屋の中に男の声が響いた。




「今手を出せばせっかく釣れた話が変わってしまうぞ。」




「………ああ、……そうだったわね。」




「………。」




「……そうね。……私の願いは叶ったわ……貴方達のお陰でね……。」




内容から、声を掛けてきた人物に心当たりがつき、既に気分が削がれた衝動は、短剣と共に鞘に収めてゆっくりと彼女の元へ戻していく。




「………。」




「……駄目なら……いつか……また……なのかしらね……。」




「………。」




「フフッ……何でもないわ……。」




彼女に添えられた花を眺めながら声の主に問うが、返事が戻って来る気配は無く、相手も私と同じ想いなのだと、分かりきっているつまらない問いかけをした自分に、乾いた笑いが漏れた。




「……貴女とはこれでお別れね……。」




「………。」




眠る彼女の金色の髪を撫でながら屈み、その冷たい頬に口吻を落として別れを告げる。

祭壇から降りようとした足が立ち止まると、後ろ髪を引かれるように振り返る。




「……あちらでお幸せに……ね……。」




この世から旅立ち幸せなのかは分からないが、その表情が涙を浮かべて幸せそうに散っていったあの人の姿と重なった。

知らない感情が瞳から溢れ出ている自分に気づかぬまま、あの時言えなかった言葉が、自然と口から零れ落ちる。




「………。」




ーーカツン……カツン……カツン…………




ーーパタン……




「………。」




近くに誰の気配も無くなると、仮面を付けた黒装束の人間が冷え切った室内に音もなく現れる。

ゆっくりした足取りで、黒塗りの箱に近づいていくと、黒の手袋を外し、横たわる彼女の身体を労るように掌を広げ、そっと触れるーー。




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