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「「ボイティ!!」」
「「「「「「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」
「「「「「「!!!!!」」」」」」
ーーガンッ!!
「「くっ!!」」
神輿の上にいた花嫁はその身を投げ出すように傾き落ちていく。
その姿に慌てる者、唖然としている者達で分かれたが、急いで駆け出した二人が、傾きバランスを崩しかけた神輿を支え、地面に打ち付けられそうな花嫁の身体を受け止めていた。
「「「「「「!!!!!」」」」」」
「ボイティ!!!!」
そんな二人の元へ花嫁の父が駆け寄る。
二人は腕の中でぐったりと青い顔をしている花嫁を、父親へと預けた。
少し遅れて、婚姻式を見守るため周囲に配置されていた教会職員達が、腕の中の花嫁に向かって震える声で名を呼び続ける父親の元にやって来ると、常駐医の元へ運ぶように促す。
父親は花嫁を抱え直すと案内に従い、急ぎ足で教会の中へ消えていった。
その背を追いかけようと神輿の上で叫びながら暴れ出した花婿を、二人は無機質な手付きで押さえ込む。
担ぎ手に指示をして神輿をゆっくり降ろさせ、駆けつけた花婿の家族に彼を預けると、二人はようやくその場を離れた。
「良かったわね。」
「こんなお目出度い席で……。」
「あんな無理のある式だったのだもの……花嫁が身体を壊すのも当然ではなくて?」
「ボイティ……大丈夫かしら……」
周囲からは安堵の声とともに、倒れた花嫁への同情や侮蔑が入り混じった呟きが漏れ始める。
((………。))
急ぐことなくゆっくりとした足取りで教会へ向かう、薄青と黄橙の瞳は、ふとした瞬間、視線がぶつかる。
互いに射抜くような鋭い視線を交わし合うと、再び前を向き、無言のまま、共に教会の扉を潜り中へと入って行った。
(何故この方が……?)
その少し後ろで、朱色の瞳が困惑と複雑な感情を滲ませ、先を行くその背を見つめていた。
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花嫁が神輿の上で倒れ、教会が騒がしくなった頃、黒装束の人物が一人、露台で瞼を閉じている少女の元に音もなく現れた。
「依頼は全て完了した。」
短い報告を伝えて消えると、少女はゆっくりと瞼を開く。
「そう……どちらになったか……楽しみね……。」
誰もいなくなった部屋で少女は一人呟き、覚ましたばかりの虚ろな瞳を市街に向ける。
すると、まだ一面青い空の中に浮かび上がっている、白で縁取られた朧気な丸い影を見つけ、瞳を大きく見開くと、差し込む陽光を受けて嬉々とした輝きを宿す濃桃色の瞳を愉しげに細めた。
そして、ゆっくりと持ち上げた唇は弧を描いていくーー。
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ーーカツーン、カツーン、カツーン……
暗闇の中、ランタンの心許ない灯りが小さく揺れ、螺旋を描く石造りの階段の奥へと消えていく。
残された空洞には複数の足音だけが重く木霊し、どこまでも響き渡っていた。




