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幸せが約束された白色の婚約はその嘘により手から零れ落ちる。  作者: 唖々木江田
逃げ場の無い黒色の婚約は執着により旅立ちを迎える。

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「押しているな……。」




ボイティの婚姻式が行われる教会の庭園では、未だ多くの人々が談笑し、中へ移動する気配を見せない様子に、建物上から眺めているモイヒェルの表情に張り詰めた緊張感が漂い、いつも見せるどこか余裕のある雰囲気は消えていた。




「しっかし、日がない状況とは言え、この計画内容で依頼者両方を頷かせるとはな。本当にスゲーなお前!」




「………。」




その沈黙を破るように軽快な声が響く。

いつものように音もなく機嫌の良さそうなプトゥが隣にきていた。




『……伝えたやり方でこちらに一任するのであれば、今回の依頼を引き受けよう。』




晴れやかな声で告げるその内容に、依頼者それぞれに会いに行った日の情景がモイヒェルの脳裏に蘇る。




『『……。』』




計画を伝えると、どちらも瞳が迷いに揺れ始め、視線を外し、一度瞼を閉じた。

結果として起こりうるかもしれない大事な詳細を隠した話に、何かを感じ取ったのだろう。

どちらの時も、モイヒェルはただ黙って答えを待った。




『『頼む(頼んだ。)』』




そして一度‘‘グッ’’と瞼に力を込めて向き直ってくると、どちらもただ一言、託すように言葉をかけてきた。

その間はほんの一瞬だったが、相手には永遠ともいえるほどに悩み抜いて出した答えなのだと感じる程に、その言葉には‘’ずっしり‘’とした重みがあった。




(説明しなければならなかったのは、分かってはいたが、あの二人がどうにかなるのは、アイツ望まないだろうからな……。)




モイヒェルは苦々しい思いを呼び起こされ、眉を顰めたが、彼らに詳細を伝えなくて良かったと、今でも自分の決断に後悔はなかった。

それは断られると思ったからではなく、暗闇の中声を掛けても驚くことなく、静かに見据えてきた二人の瞳が、話す前から浮かんで見える程に真剣で、詳細な計画を知っても、苦渋の表情を浮かべ頷くだろうと思ったからだ。

しかし、最悪の事態になれば、二人とも後悔に耐え切れないだろうと、その場にはいない少女が悲壮な表情で罵声を浴びせてくる姿が浮かび上がり、喉の奥に引っ掛かりを覚え、どうしても言い出せなかった。




「なぁ、どうやって話をつけたんだよ?」




「………。」




答える返事を持ち合わせない質問を明るい声で続けるプトゥに顔を向けることもせず、これから起こす事態に湧き上がってくる罪悪感ごと、その言葉を無視し続けながら、教会の様子を目で追いかけた。




「黙ってるって事は、詳細については教えてないのか?ん?まぁお前に限ってそんなこと…」




「……プトゥ、それで用件は何だ?」




いよいよ肩をぶつけて、気安い態度で確信に触れてきたプトゥに、この方法しか考えつかなかった自分への苛立ちと、組織として責められているような圧迫感にモイヒェルは耐え切らなくなり、プトゥの声を遮り横目だけを向けると、その話題を逸らす為にこの場に来た理由を尋ねた。




「まさか……お前っ……。」




「……。」




プトゥが目を見開きこちらを見つめてくる。

しかし、直ぐに開いていた口を閉ざし、眉を寄せ苦しげな表情で瞼を閉じると、指に力を込めて丸めた拳を眉間に押し当てていた。

その見慣れた消化できない感情を飲み込む姿を、モイヒェルはただ黙り込み、逃さないと言っているような晴れ渡る様々な青で染まる背景ごと眺めた。




「ふぅ……。いや、ここに来たのは手紙を持って出て行ったきり、今日まで会わずにいたから、計画の確認をしにだよ。」




「……そうか。計画は以前と変わらない。」




「……お前、酷い顔だな。」




「……。」




一息吐き瞼を開けて真剣な表情で用件を伝えるプトゥに、荒れていた気持ちを落ち着かせながら冷静に答えると、今度は眉を下げ泣き出しそうな表情で苦笑いを浮かべる。




「そんな顔するくらいなら…。」




「先に引き受けた依頼だからな。」




「………。」




一度は考えた感情が溢れ出てこないように、プトゥが伝えようとする言葉を遮り、声を抑え淡々と答えると、プトゥはようやく黙り込んだ。

そしてお互い黙ったまま教会へと顔を向けた。




「……俺、お前のそういう所、苦手かも。」




「……そうか。」




「……ああ。」




庭園にいる人々がようやく、扉の中に入っていく教会に視線を向けたまま、独り言のように呟くプトゥの横顔を盗み見る。

そこに浮かぶ哀愁の表情が、言葉とは真逆な優しさを含んでいるのを感じた。




(……心配かけているな。)




ただその姿を見ても、すでに動いている計画を今更止める気にはならなかった。




ーーーーー



ーーーー



ーーー



ーー




(いい加減下ろしてくれないかしらね…。)



ボイティは、控え室から出でからも全く引かない痛みに耐えながら、ファーレの腕から逃れるために、様々な努力をし尽くしたが限界を迎え、抱きかかえられたまま婚姻式会場まで運ばれていた。




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