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幸せが約束された白色の婚約はその嘘により手から零れ落ちる。  作者: 唖々木江田
逃げ場の無い黒色の婚約は執着により旅立ちを迎える。

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「っ!!!!!」



再び身体を寄せてきたファーレが後ろ髪に触れると、今まで隠されていた項部分に指が触れ、項の広範囲に生温かさを感じたその瞬間、鋭い痛みが走る。

身体が強張り声を上げたが、更に深い部分にまで侵食されると、激しい痛みに襲われ、強張っていた身体は仰け反ると、頭の芯が痺れていく。




「………ボイティ…君がしたい事は何でも手助けするし、フリーデンだってこのまま君が管理をしていて構わない。」




「………。」




(何なの……。どうしてこんな目に……合わなければいけないの?)




奥深くに達した痛みの元は消えたが、項に熱が一気に集中し、脈打つ心臓が首に移動したのかと錯覚するほどの鼓動音が、耳の鼓膜に大きく響く。

先程からあまりにも一方的で理不尽なファーレの行為に、悔しさが込み上げ‘’ズキズキ‘’と激痛を感じて震える身体を抱きしめる。




「でも、資産も資金も潤沢だと、婚姻後にいくら君の側にいても変な気を起こすかもしれない……。だから予定が無い日はその漏れ出る可愛い声を心置きなく俺だけに聞かせて……。」




(確かに婚姻はするけれど、……このまま好き勝手にはさせない……。)




再び髪に触れながら優しげな声で囁くファーレの行動に、いい加減我慢の限界を迎え、怒りを通り越した感情に心は冷静になる。



「……その部分はまだ、話し合うと言っていたでしょ?先程みたいに無理矢理なんてことをしたら、どんなことをしても、私は出て行くわ。」




振り返ることなく、ファーレに向けて底冷えのする声で言いきり、目の前に映る幾何学模様で形作られた様々な色が嵌め込まれたステンドグラスを見つめた。




「……でも、この顔は…嫌いじゃないでしょ?」




「……聞かれた時に好きな所が出てこなくてあなたの唯一の取り柄を伝えただけよ。私は好きとは言っていないわ。」



ファーレは弱々しく縋るように、あの時父に伝えた言葉を呟くが、変わらぬ低い声で前を向いたままはっきりと自分の意志を告げた。



「………分かった。君が良いというまではもうしないよ。それに例え君が僕を思っていなくても、僕達は今日、婚姻を結ぶんだ…。」




悲しげなファーレの声が響くと後ろから”カチッ”と先程落としたクラルティダイヤの飾りを髪に取り付けたのだろう、軽かった頭には再び重みを感じる。




「……。」




そして、ファーレの脚の拘束が解け、気を張り続けた痛みの引かない身体は、そのまま前のめりに倒れそうになったが、後ろから回されたファーレの腕により、力強く抱き留められた。




「よし出来た!そろそろ時間だから向かおうか。」




「……ふざけないで……まだ痛みも引いていないのよ。」




途中から髪を整えているだろうと気付いたが、何事もなかったかのように婚姻式に向かおうとするファーレに文句を告げる。




「俺はふざけてないよ。君が誰にも触られないように、このまま会場まで運んであげるからね。それに……。」




「……ッ!」




「これなら誓いのキスもしやすそうだ。」




いつのまに取り付けたのか身体を横抱きにして抱えられるとヴェールがふわりと舞う。

そして、間近に近づけて来る顔を両手で止める。




「………本当に、失敗したわ…。」




「俺は…遅くなったけど成功したよ!!」




至近距離で本当に幸せそうに微笑むファーレに心底嫌気を感じ、不機嫌な顔で文句を告げたが、やはり彼には通じないのか、抱きしめる腕に力を込めると、余計に破顔をするだけだった。




ーーーーー




ーーーー




ーーー




ーー




「予定ではそろそろ式が始まる時間か……。」




ボイティとファーレが婚姻式を挙げる教会の近くには、大小様々な商業施設が立ち並び、今日はどの店先も飾り付けられ、大勢の人で賑わっていた。

その中でも一際高い建物の上には人知れずモイヒェルが佇んでいた。




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