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広い執務室に悠然と座る人物は、先程渡された黄のような金のような大きな一本の樹木模様が押された封筒から取り出した手紙に目を通し終わると、少し意外そうな顔でプトゥを見つめる。
「はい。」
「へぇ…。面白いね」
プトゥが落ち着いた声で肯定を示せば、相手は唇の端を片方上げほくそ笑んだ。
「………。」
(この封筒ではダメだったか…。でもあれはな…。)
その表情に、この色での嘆願は難しかったかと少し後悔したが、最初に複雑な表情で出してきた、後戻り出来ない封筒は、流石に渡す気にはなれなかった。
「……分かった。今回の件は好きにしていいよ。」
「……ありがとうございます。」
意外とあっさり出た許可に、少し違和感を覚えたが、嘆願を書いている時の真剣な横顔を思い出し、聞き届けてくれたことへの礼を伝えた。
「今返事を書くから待ってて。」
「かしこまりました。」
従者が恭しく持ってきた返信用の便箋を手に取ると、相手は素早くペンを走らせる。
ーーカッ、カッ、カッ、シュッ、ザッ…カタンッ…
「ああそれと、この計画で進めるなら交渉は忘れないでね。」
「……。」
「信用って大事だからさ。勿論分かっているとは思うけど。」
「…はい。」
書き終わったのか、ペンを置いた相手は指を組み顎下に置くと、こちらを無表情で見据えた。
その顔に威圧を感じ、何も言えず黙って耳を傾けていると、表情を柔和な笑みに変え念を押すその言葉に、ようやく言葉を返した。
「しかし、君も苦労するね。」
「いえ、以前よりは楽しんでおります。」
「そうなの?」
「はい、報告にも書きましたが…少し現場が変わったのが大きいですね。」
プトゥに話しかけながら、相手は持ってきた時と同じ模様の新しい封筒に手紙を入れると、溶かした蝋で止め薬指に嵌めた自らの指輪を強く押し当てて封をした。
「ああ、そう言えばそうだったね。……会いたいね。」
「……。」
「まぁ、この依頼が終われば、どんな形であれ会えるのか。」
「………。」
(まぁ一度はアイツも戻ってくるだろうけど、それより結構急ぎなんだよね、それ。早く渡してくれないかな…。)
蝋を早く乾かすためだろうが、扇のように封筒を振る相手のその行動が、焦らしているかのように思え、少し苛立ちを感じた。
「彼女に、ね。」
「……そうですね。」
「じゃあ、それ持って行って。それと…全ての条件を飲むことはないからね。」
「……。」
会いたいと言っていたのは手紙を書いた相手にでは無く、今回三件同時に依頼が重なった、異例の対象についてだった。
その思いもよらない発言に返事が遅れたが、企むように笑った相手に、思惑は違うが目的は一致しているだろうと確信し、後ろでずっと控えていた従者がトレーに乗せた封筒を受け取ると、自分の口の端も自然と上がった。
「必ず確認……した方がいいかな?」
「分かりました。その言葉は伝えるようにはしますね。」
手紙の送り主を幼い頃から知る二人は視線を真っ直ぐ合わせると、お互いに意地の悪い顔をして笑った。
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「はぁ……。やはり無理なのか?」




