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幸せが約束された白色の婚約はその嘘により手から零れ落ちる。  作者: 唖々木江田
逃げ場の無い黒色の婚約は執着により旅立ちを迎える。

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石造りで出来た冷え冷えとした印象を受ける建物の中でロッキングチェアーに座っていたファーレは、今朝方ボイティの元へと向かった父と贈り物を積み込んだ三台の馬車の後ろ姿を思い浮かべ、開いた窓から青一色に染まる空を見つめた。




『ファーレ様…私と賭けを致しませんか?』




「僕はあの日、君との賭けを承諾したよ?……そして僕が勝ったというのに、なぜ君は未だに邪魔をしようとするんだい?」




十年前父から決定を下された婚約を白紙にするため、目通りを願い出るために向かった屋敷で、兄のように慕ってくれていた少女が現れ提示した、不可解な条件を、ようやく満たし解放されたのに、未だ婚姻式を阻止しようとするその少女へ向けた疑問を、外に広がる青へと放つ。




『代わりに私のお願いを一つ聞いてくださいませんか?ファーレ様にとってはとても簡単なものだと思いますよ…。』




少女は約束通り父上達に願い出て、婚約はまだ幼い為に仮とされた。

そして条件と引き換えに願ってきた物を開発する為に、少女の屋敷を出入りしても怪しまれないように、表向きは相談相手と言う名目で、別邸の部屋を少女から内密に与えられた。




「出来上がるのは簡単だった…。そして、壊れていくのはもっと…。」




少女の願いを叶えると、使い道のない手に余る程の財産を手に入れたが、こんな物を何のために作っているのか分からず、見えない細い糸に絡められていくような感覚に自暴自棄になっていった。

そして、いつの頃からか製品の副作用が酷くなり、気付いた父に止められたが、求める者が多く既に後戻りが出来ない状況に、父には辞めたかのように偽り作り続け、学院に入るまで、只々息苦しい日々の中を過ごした。




「ボイティ…、君が学院に入学してきた時にようやくこの息苦しさを忘れられたよ。」




学院に入学して、思い焦がれる彼女が目の前に現れたその時に、ただ彼女と結ばれたいと望んだ結果だったとようやく思い出し、全身に絡められていた糸が緩むのを感じ息苦しさから抜け出すことができた。




「それに、今となってはこの資金があったお陰で彼女の力にもなれる…。」




何処か自分を慰めるようにも聞こえるその声には自責の念が籠っているようでもあった。




「だから、君にどんなに邪魔をされても、彼女を手放す気はないよ。どんなことをしても必ず…僕は、ボイティと……」




ーーコン、コン。




「ファーレ様、出来上がりましたので、確認をお願い致します。」




「……。」




外から声が聞こえると、ファーレは無言でロッキングチェアーから立ち上がり、出来上がった製品を確認する為に黒光りしている金属で出来た重厚な扉に向かって歩き出した。




ーーーーー




ーーーー




ーーー




ーー



ーーバン!!



父の様子に気もそぞろな晩餐を終え、書斎に赴くと父からスヘスティー公将家家長が来た理由の説明を受けた私は、驚愕のあまり息を呑んだ。



「!!!???」




(そんな…嘘でしょう!!!!!!!!!!)




「……。」




「……その反応になることは仕方がないが、今回決定したお前とファーレ殿の婚姻の日取りはもう変わりはしない。わかったな?」




予想もしていなかった、日取りの前倒しに驚きのあまり声を発することも出来ずに固まっている私に、呆れた様子で父が再度畳み掛けるように突きつけてくる現実に反射的に頭を抱えた。




(あり得ない!仕事が早すぎる!―それより何より!)



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