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「あら?予定が変わったの?」
「はい。スヘスティー公将家家長様が、この後も予定があり、直ぐにお帰りになられるとのことです。」
「分かったわ、ありがとう。これから向かうわね。」
数時間に渡り、大量に贈られた品の確認を済ませ、ようやく収納が終わって落ち着いてお茶を飲んでいると、家令が話し合いの終了を知らせに部屋にやってきた。
一応この後軽い食事の場を用意していたが、公将家家長の意向を受けて見送られたらしい。
(私としてはあれも来なかったし、部屋で贈り物を眺めただけで終わって気が楽……ではなかったわね。あの品々は充分気が重くなる代物だったわ……。)
見送りの為に自室から出て階段を降りていると、通路を歩く父とスヘスティー公将家家長と鉢合わせをした。
「ああ、義娘よ良ければ歩きながら少し話をしないか?」
(え?嫌ですけど…。)
隣を空けるように腕を広げた公将家家長から、笑顔で声をかけられ、その暗に隣に来いと誘う仕草に、心の中で本音が漏れつつ、横目で確認した父が小さく頷くのを見て、公将家家長に微笑みを返すと、渋々、隣へ向かった。
「品は全て確認したかな?」
「………はい、あのような高価な品ばかりを頂きまして、大変恐縮する思いでございます。」
公将家家長の隣を歩くと、贈り物について聞かれ、”いつから私を巻き込んでファーレの茶番劇が始まっていたのか分からず頭が痛くなりました。”と正直には伝えられず、只々品の品質と金額を知っているだけに、胃が消えて無くなりそうな思いを抱えつつ、感謝の言葉だけを伝えた。
「そうか…、それは息子に伝えておこう。それにしても、君は随分と肝が据わっているようだな。公将家の夫人としても、これなら安心だ。」
「…お褒めに預かり光栄です?」
(心の声は漏れていないはずだけれど…。)
公将家家長は何かを考えこむように顎に手を置くと、じっとこちらを見つめてとても楽しそうに笑っていたが、今の会話の何処に肝が据わった部分があったのか全く分からず、何とも言えない気分になりながらもそつのない礼を返した。
「エクソルツィスムス子将家家長殿、本日は色々と話を聞く事が出来、大変有意義な時間が過ごせた。これからは、我が家でも注視して行くので、嫁いだ後のボイティ嬢の事は任せて頂きたい。」
「スヘスティー公将家家長殿、こちらこそ足を運んで頂き、誠にありがとうございます。それに大変貴重な話や、多大なお心遣いを頂き、安心する事が出来ました。娘を…どうぞ宜しくお願い致します。」
「……。」
(早すぎないかしら…?)
屋敷の外に出ると、父とスヘスティー公将家家長は固く手を取り合い、何故かそれぞれ嫁いだ後の私について語りだしたが、家長同士の話に口を挟めず、黙って静かに聞いていた。
「では義娘よ、また式当日に会えるのを楽しみにしているよ。」
(式を延期したとしたら最低でも二月以上は空くはずなのに、なぜ?)
「……はい、お義父上様。また式場でお会い出来るのを、私も楽しみにしております。」
馬車に乗る前にまたと声を掛けられたが、次に会うには空きすぎるその期間に対して疑問を覚えてしまい、少し遅れて礼を取り挨拶した。
疑問を残したまま公将家家長は馬車に乗り込むと手を振り帰って行った。
「ボイティ、今日の晩餐が終わったら書斎に来てくれ。」
「……かしこまりました。」
馬車が見えなくなると、父から今日の夕食後書斎に向かうよう告げられた。
その時に何やら難しい表情を浮かべた父の様子に引っかかりを覚えた。
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「もう…ボイティの元には僕からの贈り物が届いた頃かな?」




