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自室は執事のプロムス達により運ばれて来る大小様々な箱に占領されかけていた。
「大きい箱はこちらに!気を配って!置いて下さい!」
「呼ばれてきたけどこれは…。」
「?!……確認する手が震えるわ。」
あまりの量の多さに急遽お付き以外の侍女達の手も借りながら箱は開けられているが、運ばれて来るスピードに、手が追い付かないようだった。
(移動はしたけれど、とうとう置く場所がなくなってしまったわね…。)
先程まで自室のソファーに座り待っていたが、いよいよ箱を置く場所に困り、寝室に移動して確認を終えた品が届くのを待つことにした。
その時には既に紅茶の一杯目を飲み終え、二杯目に口を付けたところだった。
(届く品の数が多いのは分かるけれど、皆いつもよりも手際が……。)
品を細部まで確認する為、時間が掛かるのはいつもの事だったが、それにしても遅すぎる作業と、侍女達の小さな呟きに疑問を覚えながら待ち続け、漸く確認を終えたストメートが最初に私の目の前に品を持ってきた。
その後は続々他の侍女達も品を手に持って目の前に広げていく。
(この品たちは……。)
婚姻後に着用するドレス、鞄や靴、手袋等の小物の他に大粒のクラルティダイヤが嵌め込まれた髪飾りやネックレス等の様々な装飾品ーー。
その中に注文を受けていない品もあったが、大半はモイヒェルが持ってきた書類に載っていた見覚えのある品々だった。
「ハハハ…………。」
(いつからなのかしらね…?。)
「お嬢様どうかなさいましたか?」
額に手を乗せ、とんだ茶番劇だと、我慢出来なくなった笑いが口から漏れてしまい、侍女のディーンスが不安気な表情を向けてきた。
そんなディーンスに、顔の前で軽く手を振り、何でも無いことを示す。
「いいえ、何でもないのよ。持ってくる品が全て素晴らし過ぎて、どうしたら良いのか分からなくなってきただけよ。」
「さようでございますか。実は私達も、箱を開ける度に手に取るのを躊躇ってしまう品々に、思うように作業が進まないのです。」
「苦労をかけるわ。ゆっくりでいいから続きも宜しくお願いね。」
「はい、ありがとうございます。」
ラヴーシュカが抜け一人欠けたお付きの侍女達と、急遽駆けつけてもらった侍女達が品を箱から出すたびに、上げていた小さな声は驚きと感嘆だったのだろう。
数年、数ヶ月前に見たそのとても貴重な品での注文資料に只々驚いていた自分自身と彼女達が重なった。
そして、まさかその品々が今、目の前に広げられている事実に、再び乾いた笑いが込み上げてくる。
「………お嬢様、これは……如何致しましょうか?」
次から次へと運び込まれる品を確認していると、リアンが少し見せづらそうにしながら次に持ってきたのは真っ白な花嫁の衣装だった。
その見事な作りに、両親が用意してくれた衣装を思い浮かべる。
「……それは、お父様とお母様に一度相談致しましょう。」
(これでは、我が家で用意していた品が霞んでしまうものね……。)
持って来た時から困惑した表情を見せているのは、リアンから見てもどちらを選ぶかは一目瞭然だからだろう。
彼女と同じように眉を下げ、何とも両親に伝え辛い品を前に、力なく肩を竦めた。
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「スヘスティー公将家家長殿、今日はどのようなご要件でございますか?」




