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幸せが約束された白色の婚約はその嘘により手から零れ落ちる。  作者: 唖々木江田
幸せが約束された白色の婚約はその嘘により手から零れ落ちる。

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「では、こちらの場所の方が宜しいかも知れませんね。」




「確かに、そうですわね。」




「お嬢様、お呼びですか?」




「ジャルディー!待っていたわ!!」




「随分と機嫌が宜しいご様子ですが、どうなさいましたか?」




呼んでもらっていた庭師のジャルディーが執事に案内され、穏やかな丸い顔の目尻を下げながらやって来た。




「こちらのエンプレアード様とご相談して牙持蘭(ガジラ)を植える場所が決まったから、貴方に確認して貰いたいのよ。」




「!?……それはまた珍しいお花を手に入れましたね。」




「ええ!ふふふ。」




「分かりました、ご一緒致します。」




ボイティはお茶の席から立ち上がると、決めた場所までジャルディー、エンプレアード、侍女、執事と共に移動した。




「この場所に今から植え替えをお願いしたいのだけれど、どうかしら?」




お茶会のガゼボを出て、数十分。

歩いて見えて来た庭園の一区画に咲く花の前で止まり、ボイティはジャルディーを見上げ尋ねる。




「この場所にですか……。」




夕暮れの雲のように斑な赤茶色い綿毛の花を咲かせる螺巣雲(ラスモ)の横に植え替えを頼んだ途端、ジャルディーの表情は曇った。


 


「お嬢様、この辺りの場所で牙持蘭を植え替えるのは宜しいかと思いますが、作業は庭の土壌と花を確認してからでないと進められません。今直ぐにというのは難しいですね……。」




「!?……そう……なら今日は見られないのね……。」




(はぁ……螺巣雲の隣に並ぶ牙持蘭を楽しみにしていたのに……。)




「……お嬢様、今日はこのまま屋敷近くの庭園をご子息様にご案内して差し上げては如何ですか?珍しい植物も多いので、きっと喜ばれると思いますよ。」




「?……え……あぁ……そうね。」




(……多分おもてなしを気にしているのよね……確かにこのまま部屋に戻っても……はぁ……。)




声を掛けられ見上げると、困り顔をしたジャルディーの視線に、違う方向で気を使われている事に気が付いた。

少し悩んだが、再びチラついた兄の顔に、込み上げてきた気持ちを抑え込み、エンプレアードに顔を向ける。




「エンプレアード様、ジャルディーが言うように、もし宜しければこのまま屋敷の庭園をご案内致しますが如何でしょう?」




「それはとても楽しみですね!是非案内をして頂きたいです!」




「……そうですか。……では、参りましょう。」




何やら嬉しそうな表情で答えてきたエンプレアードに少し疲れを感じつつも、付き添いの執事や侍女と共に庭園の案内をして過ごした。




ーーーーー




ーーーー




ーーー




ーー




「では、私達はこれで。」




「今日は来て頂き感謝する。また来週お会いしましょう。」




「ボイティ嬢、またお会いできるのを楽しみにしています。」




「その時がございましたら是非。エンプレアード様、本日はありがとうございました。」




父達が庭園に迎えに来ると、そのまま屋敷まで一緒に戻り、アルカルデ子将家の一行は、用意されていた馬車に乗り込み屋敷を後にした。




「ボイティ、エンプレアード君とは仲良くなれそうだったかい?」




見送りを終え屋敷に入ると、何となく機嫌の良さそうな弾む声で問い掛けてきた父に、生温かい瞳で笑顔を向ける。




「……お父様、以前もお話をしたように、私は誰とも婚姻をする気はございませんので、もうお茶会には参加したくありません。アルカルデ子将家家長様にはお断りをお伝え下さい。」




「?!…………そうか、分かった。……先方に伝えよう。」




自身の変わらない意思をはっきりと伝えて断ると、一瞬驚き、少し悲し気な表情で了承を口にした父が、一人私室へ向かう姿に安堵した。




「【良かった、これで一安心ね。】」




ーーーーー




ーーーー




ーーー




ーー




ーーッバン!!!




「!!??……お父様?……今度はどうなさったのですか?」




父の背中に小さく呟いた数日後、なぜか勢いよく部屋の扉を開け放ち、父が突然またやって来た。

そして、この間のようなご機嫌な様子ではなく、真剣な表情のままただ一言告げられる。




「ボイティ次の茶会の相手が決まった。」




「…………もう参加したくないと告げたのに何故そうなるのですか!!??」




焦る声を響かせたこの日を境に、何故か様々な相手と顔合わせのお茶会が開かれるようになった。 




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