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朝食直後に迎えに来たアンキラによって半ば強制的に衣装部屋へと案内され、衣装を早く決める為に耐え抜いた。
「結局三日後に着る衣装を合わせていたら今日が終わってしまったわ…。」
今回はそれ程時間はかからず、終わったのはまだ少し日は高かったが、パフィーレン姫様の突然の輿入れ発表に、母から屋敷の中にいるようにとの言付けを受けたマーデカにより、終わると直ぐに部屋に連れ戻され、現在ソファーに背を預け打ちひしがれていた。
「それにしても…、スピーア国とビッダウ国に縁なんてあったのかしら?」
「お嬢様がお知りにならない事を、私に聞かれても困ります。」
用意したお茶を目の前のテーブルに置きマーデカが苦笑いを浮かべる。
「そんなことはないわ。マーデカは良く休みの日は出かけているじゃない?私よりも新しく出たお店や、美味しいお店に詳しいもの。」
「……それはあまり関係ないと思いますが。それでは、他に必要な物が無ければ一度下がります。しかし、くれ!ぐれ!も!お部屋からお出にならないでくださいね?」
「……ええ。勿論、分かっているわ。」
いい笑顔で何度も釘を刺してくるマーデカを見送り、お茶が置かれたテーブルに視線を落とすと、今回パフィーレン姫様が輿入れをすると言うスピーア国について頭の中の情報を絞り出す。
「……外交があれば、あちらの国のお店が増えるはずだけれど、やはり記憶にないのよね。マーデカからも聞かないし…。以前サロンで聞いた話も婚姻を結ぶにはあまり関係ないものばかりだったわよね…。」
パフィーレン姫様の急過ぎる輿入れへの疑問は湧くが、どれほど考えてもスピーア国との関係性が見当たらず、お茶を一口含む。
「はぁ…。」
(そんなことよりも今は、秘香枯の種よね………。このままでは、リアンによって全てを駆除されてしまうわ…。でも、それも…、これも!!)
分からない事を考えるのを諦めると、今日の一番大事な庭への散策が予定通り運ばずに落胆したが、手に持つお茶を置くと、横に置いていたクッションに手を伸ばす。
(原因は全て今朝届いた手紙なのよ!即ち全てはアレのせいよ!!何故私の大事な予定や計画を毎回、毎回…毎回!!!三日後にどんな用事があるのよ!!!…あ!?)
遣る瀬無い気持ちを届いた手紙の差出人の責任にし、ソファーに置かれたクッションを膝に置いて‘‘ボフッ、ボフッ’’と音が鳴るほど握りしめた両手を叩きつけ八つ当たりを始めると、ふと、ファーレが屋敷に来る理由の心当たりが浮かんだ。
(そうよ!今日のお父様達の集まりは、パフィーレン姫君の輿入れについてだったのかもしれない。それなのに、予定よりも早く決定してしまって、それを知ったスヘスティー公将家家長がアレに伝えての手紙なら…?!。きっとそうよ!そうだわ!正式に発表されたのだから、これからお父様達がお忙しくなるもの!それで三日後に来るなら…絶対に婚姻の日取りを一度延期する話よ!あぁ良かった。相手を探す時間が伸びそうだわ!)
手紙が送られてきた理由が思い当たり、婚姻式の時期が延びそうなことに喜びと安堵を感じお茶を口にしたが、思考が冷静になり、ファーレと共に来るだろう公将家家長との対面に少し背中が冷え込む。
「会いたくはないけれどそれなら仕方がないわよね…。はは。はぁ…。」
公将家家長と父の話し合いの席で、ファーレ相手に大人しく聞いていられるか不安が過ぎり、既に疲れた笑いが漏れつつ約束の三日後を待った。
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『フロワエイス…その済まなかった。』




