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(狙いが何かは分からないけれど、もし、最後の言葉に関係しているなら、何としても!何としても逃げだして見せる!!)
エクソルツィスムス家での茶番劇が終わり、父と母と兄と共に、ファーレとオクラドヴァニアを見送った後、この婚姻からは確実に逃れるべく部屋で待機しているだろうモイヒェルを頼るためボイティは急いで部屋に戻っていた。
‘’バン!!!!‘’
最後に呟かれたファーレの言葉が頭の中で反芻し続け、力が籠もる腕で寝室の扉を勢いよく開けると、仄暗い部屋には大きな音が響き渡り、辺りを見渡せば荷物は既に纏められ窓際に置かれてあるが、そこに人影はなく、肝心のモイヒェルは大きな音が響く前に人の気配を感じていた筈なのに、部屋のベッドの上で瞼を閉じて横たわっていた。
(え?人のベッドの上で何をしているの?)
その、暢気すぎる態度に、扉前で一瞬唖然としたが、直ぐに扉を閉めてベッドに近づいて行くと、その瞼が開き、金緑の瞳がこちらを向いた。
「ボイティ終わったか?仮眠も取ったし今からもう行けるぞ?」
モイヒェルはベッドの上で身体を伸ばすとベッドから降り、意地の悪い顔を向けて手を伸ばしてきた。
(そうかこのまま……ってだから、無理よ!)
どうやら暢気に寝ていた訳では無いらしいモイヒェルのその言葉に、今直ぐに頷いてしまいたい衝動に駆られるが、もう存在したまま逃げ出すことは出来ないと、差し出された手を両手で力強く握りしめ、その瞳に真っ直ぐ視線を合わせる。
「モイヒェル!今直ぐに、私の貯金を全額引き出して、それを持参金に、白い婚姻を承諾してくれる相手を探して来て欲しいの!!」
ファーレが濁し唯一確実に約束できなかった条件を承諾してくれる相手を探せば、まだ婚姻を退けることが出来るかもしれないと、僅かな希望を抱きつつも、探すための時間が長くは取れない事への焦りから、話し合いの結果を飛ばし、余裕なく婚姻相手探しを頼むと、モイヒェルは目を見開いて驚いた表情を浮かべた。
「ちょっと待て…一体話し合いで何があった?」
「ああ…そうよね、それが………
モイヒェルの表情が真剣なものに変わり、ゆっくりと落ち着いた声で話し合いの件について問われ、その様子に我に返ると、応接室での出来事の説明を始め、全て伝え終わると、握られている手はそのままに急に脱力すると蹲った。
「最っ悪だ…。」
その思いがけない行動に驚いたが、その体勢のまま低い声で呟いた一言に、やはり無理かと握っていたモイヒェルの手を放そうと手の力を抜きかけた時、逆に力を込めて握り返された。
「え!?なに…」
その行動に身を強張らせると、反動をつけて立ち上がり、握られた自分の手を離すように手を重ねてくる。
(やっぱり無理よね…。)
落胆しモイヒェルの手を力無く離すと、今度は逆に両手で包み込んできた。
「モイヒェ……」
「分かった。待ってろ。」
「えっちょっと!!まっ……。」
その一連の動きに戸惑いを覚えたが、モイヒェルは真剣な表情のまま一言呟くと手を放し、窓辺へ向かい、いつものように消えてしまった。
「行ってしまったわ………。」
「でも、‘’待ってろ‘’と言われたのだから、相手を探しに行ってくれたのよね?……なら私は…
その行動に唖然とし、独りになり静かになった寝室で立ち尽くし、暫くそのまま動けずにいたが、モイヒェルの言葉を反芻し、漸く彼が願いを了承してくれた事に気が付き、今自分が何をするべきか悟った。
この荷物を元の場所に戻さなくてはね……。」
窓辺に纏めて置いてある荷物を解き、明日起こしに来る侍女達に見つかる前に元の場所に戻し始めた。
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「あの馬鹿次は何を考えているのだろうな……。」




