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幸せが約束された白色の婚約はその嘘により手から零れ落ちる。  作者: 唖々木江田
幸せが約束された白色の婚約はその嘘により手から零れ落ちる。

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「……モイヒェル、連絡も無く来ていきなり何よ。」




もう寝る準備も終わりベッドに潜り込んでいた私は、ベッドの横から顔を覗き込んできたモイヒェルに向けて眉を顰める。




「お前の家の名を告げる客が次々に来て、注文がいきなり増えてんだよ!!」




「何で我が家の…………あぁ!そういえば、最初にあなた達にお試しで作ってもらったドレスがあったでしょう?この間、それを着て招宴に行ったのよ。その時お会いした数名にはお店の名前を伝えたけど……?そんなに多くないわよ?」




渋々身体を起こしヘッドボードに背を預け考えると思い当たる節があり説明をすると、モイヒェルは表情をなくし、頭を抱えだした。




「……お前がオーナーとしての仕事をするのは構わないが、今後はどんな事でも連絡しろ!……対応出来ないだろ。」




「そんな事言われて……」




「用意した素材が全て無くなったから取りに行かなきゃならないが、生憎注文の多さに出られる人員が居ない、だから増やさなければならないが、それは取りに行って帰って来られる腕が必要だ、たが!そんな奴らは中々居ないし、例え居たとしても、そこら辺に居る奴らは訳ありだから、きっちり上下関係を分からせる必要が……」




「分かった!分かったから!今後はどんな些細な事でもお店の名前を出した時は連絡を入れるわ!!」




多くの人に伝えたわけではなかったが、どうやら大事になっているらしく、言い返そうとする私を遮り、冷え冷えとする低い声で淡々と畳み掛けるように話すモイヒェルに、何かが切れてしまっているのを感じ、慌てて約束を口にした。




「そうか、分かってくれて良かった。俺はこれから足りない素材取りに行かなきゃならないから、何かあったらこいつで連絡入れろ。後!!!来月の売り上げの連絡は遅れるだろうからそのつもりでいろよ!!オーナー様?」




よく見れば目の下に大きな隈が出来ているモイヒェルから、掌に乗る小さく不思議な色をした伝書バトを渡されると、初めて会った時のような綺麗な、けれどどこか空恐ろしい笑顔を作り、夜風の中に溶けるように部屋から消えて行った。




(これは確かに大変な事になったみたいね……。)




モイヒェルが不満を口にしたのが分かるほど、自分が着用したドレスはビッタウ国内で瞬く間に流行り出した。

それを着て外交に向かったパメラの母である、ディプロマティア公将家夫人のお陰で、フリーデンの名は諸外国でも知られるようになると、売上は見る見る上がっていったーー。




(後で何故あの時に助けたのか落ち着いて理由を考えたけれど、少しずれた覆面の隙間から覗いた顔が好みだったからと言うどうしようもない結論に至ったのよね。自分の呑気さを少し反省したけど、今となっては呑気な私に感謝しかないわね。)




回想も終わり、残り僅かになった資料に意識を集中して紙を慎重に捲る。




(この状態が永遠に続くことは無いだろうし、早く違うタイプの店舗を増やしていきたいわよね〜。)




ここ一、二年は月を追うごとに売上は増えているが、ずっとこの状態が続くことは無いだろうと、前々から考え伝えていた、服や小物、装飾品を買い取る店と、多数同じ品を並べた安価な価格帯の既製服の店を起ち上げるべく、オクラドヴァニアと婚姻した後は、隣国や他国に出向き、新たな店舗を作る計画を練っていた。




(店舗を増やす為にも資金は必要よね~。)




紙を捲り最後の二枚になった所で現れた、毎月銀行から発行してもらっているのだろう確実に増えていく会社と個人の貯蓄記録が書かれた資料を交互に眺めると、今月も顔がうにゃりと緩みきる。




「相変わらず締まりのない顔だな……。何の資料見てるかすぐに分かる。」




「毎月これが楽しみなのだから、邪魔しないでちょうだい。」




貯蓄額を見ている私の顔に、毎回とやかく言ってくるが、増える数字にどんな店舗にしようかと夢が広がるのだから仕方が無い。




(それに店舗が増えるのはモイヒェルにも関係があるのだから、もう少し興味を持っても良いと思うのだけれどね……。)




最初の話し合いの時も金銭の割合はどうでも良いと言い放ったように、どうやらその辺は全く興味がないらしい。




「……それよりそろそろ起き上がらないか?」




未だにベッドでうつ伏せのまま起き上がることなく資料に目を向けている私に、モイヒェルがまた文句を告げてくる。




「……必要?」




「おまっ……いや、別に良いけど珍しいな?」




(確かにいつもより緊張感は無いかもしれないけれど、自分の部屋で寛いで何が悪いのかしら?)




不機嫌を露わにしてみせると彼は自分の手に顔を埋め下を向いて溜息を吐いた。

そして、何かを諦めたように再び顔を上げると、今度困ったように眉を寄せ肩を竦めてみせてきた。




「……今日のお茶会でオクラドヴァニア様から聞かれた言葉の意味を考えて、少し疲れているのよ。」




その顔と行動に何処か罪悪感を覚えて、今日の気が張らない理由を資料から手を放し伝える。




「へぇ~。どんな話だ?聞いてやるから言ってみろよ。」




「えっう~…………そうね……貴方なら何か気づくかもしれないものね。」




モイヒェルは口角を片方上げた笑みを浮かべ、面白がっているのだろう、揶揄うように悩みを聞いてきた。

その姿に少し迷いを覚えたが、一人で考えても出ない答えに今日のお茶会での出来事を説明する。




「……お前……。それ、本気で言ってるのか?」




「……本気よ?何か気が付いたみたいだけど、どういうことだと思う?」




最初は真剣に聞いてくれた彼は途中から顔に手を当て額を擦りながら何故分からないのかと言いたげな表情をこちらに向けてきた。

それでも最後迄聞き終えると、自分では考え付かなかった答えをくれた。




「あのな、明日卒業だろ?自分みたいにお前にも想いあっている相手がいるんじゃないか、婚姻前に確かめるために聞いてきたんじゃないのか?」




オクラドヴァニアとラヴーシュカの件をモイヒェルには伝えていたので、そこから導き出したのだろう、とても面倒臭そうな顔で答えてきた。




「何よそれ?そんな相手いないでしょ?」




「自分の事だろ聞くなよ!それにお前一度変な噂が立っただろうが!!」




あまりにもあり得ない話に、とても自分事だとは思えず、別の誰かの話を聞いている気になっていた。

しかし、モイヒェルの指摘に思い出し納得すると、相手の思惑に予想がつき、とてもらしいやり方に面白くなる。

そして、なぜか少し引っ掛かりを覚えた引くつく喉から、込み上げてくる笑いが口から漏れる。




「っふフフフフフ!確かにそうよね。それに、自分が想い合っている相手がいるから私にもって考えたのならあの質問にも納得出来るわ。それなら婚姻せずともオクラドヴァニアには違約金って形でお金が入ってくるのだから損はしないし、ラヴーシュカとのことを知らなければ、……それも良かったかも知れないわね。」




「お前……、オクラドヴァニアは善意だったかもしれないだろ?それに、仮にそうだとして言ってて悲しくならないのか?」




こちらに向けていたモイヒェルの顔が曇り、心配そうな表情に変化した。

けれど、なぜそんな顔をされるのか分からずに、私は彼に向けて首を傾げる。




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