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幸せが約束された白色の婚約はその嘘により手から零れ落ちる。  作者: 唖々木江田
幸せが約束された白色の婚約はその嘘により手から零れ落ちる。

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(??!……。)




寝ぼけていたせいもあるが何処か現実味が無く叫ぶこともせずに呆然として見ていたが、このままにしておいていいものなのか確認する為に取り敢えず近づいてみる事にした。




ーーギシッ。




(起きるかしら?!)




「……………」




(大丈夫そうね……。)




降りる時に軋んだベッドの音にピクリとも動く気配が無い事に今から誰にも伝えなくて済みそうだと少し安心した。




(旅立っているならこのままにして置いておけるけれど……。)




この場ではなく別の場所に向かっているなら気付かない振りをして朝起こしに来た侍女に対応して貰おうかと思ったが、近づき屈んだ時に聞こえてきたか細い息遣いにこの場に留まりただ意識が無い状態だと分かりその考えを捨て去る。




(はぁ…伝えなければ駄目ね。)




家令に伝えた直後父にも話が伝わり慌ただしく部屋にやって来るだろう事を想像して疲れたが、目の前の人物が起きていきなり暴れられるのも困るので家令に捕らえてもらうしかないと渋々立ち上がりかけた時、夜空の雲間が晴れその人物に光が当たり全身が浮かび上がった。




(キレ…え…?)




全身黒い装束だった為に気付かなかったが付けていた覆面は少しずれその隙間からは端正な顔を覗かせていたが身体にはその顔に不釣り合いな程至る所に酷く深い傷が多数ありそこからは大量の血が流れていた。




(一体…何があったらこんな……。)




その姿を見て何故だか分からないが家令を呼びに行くのを止め部屋にある簡易の薬箱を取り出すとその人物に気休め程度の手当てを始めていた。




「!ってて!!……何だこれ?」




「!?」




(嘘!?起き上がった???)




手当をして数時間するとその人物は目を覚ましあろうことかあの酷い傷で起き上がると手当された自分の腕や足を見て呆けているのを少し遠くから眺めていた。




「お前が手当してくれたのか?」




「?!………そうよ。」




気配で分かったのか瞼で隠されていた金緑の瞳を真っ直ぐにこちらに向けて聞かれ少し考えたが返事をした。




「へぇ………。」




(やはり誰か呼んでおけば良かったわ………。)




一言呟いた後黙って見つめてくる相手に居心地の悪さと身の危険を感じて自分の行動を後悔したがもうどうする事も出来なかった。




「そうか……なら助けてくれた礼に何でもしてやるよ。何が良い?」




すると突然相手は手当ての恩返しと言葉と共にこちらに綺麗な笑みを作り出した。




「…………。」




(何なのかしらあの傷で起き上がるし、言葉は軽いし顔が怪しすぎるけれど……。)




同い年か少し年上位の笑わない瞳に怪しい雰囲気を察して警戒しつつ少し悩んだが少し震える自分の手を握りしめて相手に視線を向けた。




「本当に何でも……いいの…?」




「あぁ、誰か消したい相手が居ても聞いてやるよ。」




鈍く光り始めた瞳に縋るようにこういうタイプの職業なら簡単なのかもしれないと願いを口にした。




「なら……隣国のクンブに渡る為に私の偽装用の身分証を作って欲しいわ!」




「?!…ハハハハハ!出来ないことはないけど、こんな屋敷に住む子供が1人で行ってどうするんだ?別の願いの方が良いと思うけどな?」




相手は一瞬唖然とした表情を見せたが突然笑い出すと馬鹿にするような含み笑いのまま断られかけたが、その態度に腹が立ち鏡台に向かって歩き出した。




「出来ない事は無いのよね?それに何も無く行きたいと言っているわけじゃないわ。私はね隣国に行ったら新しいタイプの服飾店を開きたいのよ、これを見て頂戴。」




鏡台の隠し棚から服飾店を開く計画書類を取り出すと相手の目の前に広げて話しを始めた。




(女子供だから作ってもらえないなんて冗談じゃないわ!!)




怒りにより相手への恐怖心が薄れ学院入学後に書き綴っていた計画書を手に取り説明を始めていくと最初は馬鹿にするような態度で聞いていた侵入者は、身を乗り出し聞く態度が変わってきた。




「面白いな。今の専門的な店ではなく全て同じ店で済ませるようにするのか…複数の工房を尋ねるみたいだが、俺なら直ぐに服や装飾品を作る当ても加工出来る当ても、珍しい素材も採ってこられる当てもある。」




「……どういう事?」




「俺と手を組んで損は無いと言う話しだけど?どうだ?」




「………なら手を組めるかどうか試させて頂戴。」




「ふっ!良いぜ。」




説明している途中でいきなりこの計画に加わる話しを告げられたが、その素性の怪しさに悩みつつ彼の提案にお試しを告げると何故か馬鹿にする様な勝ち誇った笑みを浮かべられた。




「考えていたデザイン画を渡すからそれを作って持って来て。商品を確認してから貴方と手を組むか決めるわ。」




(もし商品が良ければ婚姻してから動くよりも早く行動に移すことが出来るかもしれない、駄目でも元々よね。)




試しに考えていた自分用のドレス3着、装飾品5点、小物6点の原画を渡すと捲りながら軽く目を通し原画を丸めると立ち上がり窓辺に向かって行った。




「じゃあ、出来上がったら持って来るな。」




(数もあるしは半年後に仕上がれば上出来、それ以上掛かるのならこの話を無かった事にすれば良いわ。)




特徴的な瞳の持ち主に期限を伝える事が無かったのはやはり何処か信用しきれなかったからだ。




「ええ、待ってるわね。」





月明かりの下煌めく金緑の瞳は既に消え去り窓も何事も無かったかの様に閉まっていて、何処か夢の様だったが血に塗れた絨毯を見てどうするか頭を悩ませた。




「持ってきたぞ。」




侵入者が出来上がった商品を持って部屋にやってきたのは絨毯の血痕で心配した父が叫んで部屋に飛び込んできた日からまだ半月を過ぎていない深夜のことだった。




「………え?」




「ここに置いていいか?。」




「えぇと…、」




「早く確認してくれ。」




「………。」




あまりにも早い仕上がりに懐疑的な目を向けながら商品を確認すると、いつも仕立てて貰っている店より使用されている素材の良さと丁寧な仕事に驚いた。




「それで?」




「………手を結びましょう。」




「よし!じゃあ話しを纏めるぞ。」




届けてくれたその日に何故か全て決めようとするモイヒェルに計画書を煮詰め自分はオーナーにモイヒェルが社長として店を開くことにした。




「本当に店舗運営全部任せて平気なの?」




「平気も何も、お前動けないだろ?」




「それは、確かにそうね。」




「オーナー様の仕事は黙って売り上げの連絡を待っている事だろ?」




「そう…いうものなのかしらね?……では宜しくね。社長様。」




「ああ、取敢えず店舗を作ってまた次の月の初め頃には来るから。」




そう言うとモイヒェルは部屋から出て行った。

しかし勝手が良くわからない私達は最初から1等地に店を構えてしまい、そんなフリーデンを面白く思わない同業者に何度か難癖を付けられたと腹を立てたモイヒェルから店を出した最初の数ヶ月は毎月の報告のついでに愚痴を聞かされていたが、他の店より出来上がる期間が短く高品質の商品が届くと評判になり、クンブに住む貴族達からの注文が増えるようになると同業者からの難癖は無くなりフリーデンはゆっくりと順調に成長していたある日の深夜いきなり鬼の形相をしたモイヒェルが現れた。




「お前何をした!!」



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