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オクラドヴァニアとの関係が変化し心に余裕が生まれると、学院生活や社交の場が次第に充実していった。
きっかけは学年が上がるにつれ荒れていた気持ちが落ち着き、学院で聞かれる彼との質問を笑顔で聞けるようになり、挨拶以外でも話し掛けてくれる同級生達が次第に増えてからだった。
「ボイティさんって案外親しみやすいのね?」
「私の婚約者が以前ボイティさんとお会いした事があるのだけれど、何を考えているのか分からないとお聞きしたの。」
「私の婚約者も同じ事を仰っていて、婚約された相手も家格が違うでしょ?」
「ボイティさんの事をどなたにお聞きしても何に興味があるのか分からないと仰るから、ずっとお相手の事しか話題に出せなかったのよね。」
「お断りになった相手のお話しをしてもボイティさんもお困りになると思っていましたし。」
「………。」
どうやらあの頃無機質にこなしていたお茶会の相手と婚約していた同級生達は特に話題が掴めないため、社交場を賑わせているらしいオクラドヴァニアとの仲を聞いていたのだとこの時知り、困っていた質問攻めは、全て自分の態度から出たものだったことに反省した。
「ボイティさん今日この後ご予定ございますか?」
「新しく出したお店にこれから皆で行くのだけれど良かったらご一緒に如何?」
「最近広場で歌われてる方とても上手なのですってそれで行ってみようというお話しになりましたの。ボイティさんも行きませんか?」
「ええ、ぜひご一緒させてください。」
いつの頃からか休日はお互いの家を行き来するようになると其々の屋敷で行われる招宴にも参加するようになっていた。
「この封蝋はアミのものだけれど、便箋のデザインがいつもと違うのね?」
そんなある日友人の一人からいつものよう招宴の案内が届いたが、婚約者同伴と書かれた内容に少し考え込んでしまう。
(…この誘いはどうしようかしら?一応オクラドヴァニア様に聞いてみて難しいようならば断りを伝えれば良いわね。)
以前ならば乗り気にならず直ぐに断っていただろうが彼に芽生えた絶対的な信頼感から案内された夜会の内容を手紙で送ると、数日後了承の返事が届いた。
(これは…、大丈夫かしらね…?)
そして当日は一人では恥ずかしくて着づらかった隣国で仕立てた何層にもレースを重ねた真新しいドレスで参加することにした。
「アミ!今日はお招きありがとう。」
「ボイティ!!そのドレスとてもよく似合っているわ!素敵なデザインね!!」
「そ、そうかしら。オクラドヴァニア様にも似合っていると言われたのだけれど、周りからは凄く見られていて不安なのよね。」
オクラドヴァニアのエスコートでアミの屋敷に入る時から様々な人の視線を感じて、何か問題があったのかと初めての婚約者同伴の夜会に困惑していた。
「ふふ、大丈夫よ。きっと私みたいにそのドレスに興味が湧いているのだと思うわ。」
「そうだと良いのだけれど…。」
「これから挨拶に回るのでしょ?きっと質問攻めよ!私にも後で詳細を教えて頂戴ね!」
「ええ、ありがとう。また後でね。」
招待者であるアミに挨拶を終わるとオクラドヴァニアと一緒に会場を周り始めた。
「そのドレス素敵なデザインね。ボイティさんはどちらの仕立て屋さんをご贔屓にされているの?」
「歩く度にふわりとドレスが舞う姿が気になっていたのよ、これは様々なレースを組み合わせて出来ているのかしら?」
「隣国にはお父様のお知り合いがいらっしゃるのかしら?私にも紹介していただきたいですわ。」
アミの言う通り挨拶に周った将家のご夫人達からドレスについて質問を受け、この夜会以降様々な将家から招待状が届くようになり、参加する内に学院生ながらご夫人限定の会員制サロンにも呼ばれるようにもなった。
「ボイティさんはご婚姻なさったら次期侯将家夫人になられるのだから今から慣れておいた方が良いと思ってお呼び致しましたのよ。」
「お気遣い痛み入ります……。」
「皆様お優しい方達ばかりだから気を楽にして参加して頂戴。」
「南のジャウハラの玉家の方たちは最近羽振りが良いらしわよ……」
「あら?その隣のザバルやジャドの橄家と欖家の方々とは大違いね……」
(凄いわ!この場は情報の宝庫なのね!)
誘われた様々なご夫人のサロンには必ず参加するようになり、予定がない日は数える程しか無くなったが色々な事を知る機会が増え以前より遥かに充実した日々を過ごすことが出来た。




