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「エクソルツィスムス子将家ご令嬢ボイティ・レナ・エクソルツィスムス様、本日は宜しくお願い致します。」
「…お初にお目に掛かります、お会い出来るのを楽しみにしておりました。こちらこそ本日は宜しくお願い致します。」
衣装選びから数日が経ち、もう何十人目か分からない相手とのお茶会日を迎え、回数を重ねて身に付けた、名を呼ぶ必要のない画期的な挨拶を交わし、お茶会は始まった。
(今日も天気が良いわね。)
………です。」
「?!……知りませんでしたわ、物知りなんですね。」
「……あ…いえ…。」
「?」
今回の相手は珍しく年上のようだったが、以前の相手方同様、話は代わり映えのないものだろうと、流れ的に適当な相槌を打ち返答するが、何故か不思議そうな表情に変わる相手に、首を少し傾げて見せた。
「……お嬢様…。」
「リアンどうしたの?」
「昨日はご気分が優れないご様子でしたし、お相手に気を使われるのも分かりますが、気分転換に庭園の散策をされては如何ですか?」
「………。」
(成る程…失敗したわね。…自慢話しをしていた訳では無かったのだわ…。)
後ろに控えていた侍女のリアンがそっと側に寄り、顔合わせ相手にも伝わる様に少し大きな声で話す内容に、相手との会話が成り立っていなかった事に気が付くと、その気まずさに手に掛けていた扇を広げ、顔を仰ぎ始めた。
「……気分が優れないのであれば、こちらはまた日を改めますが?」
「いえ……その様にお気遣い頂く程ではございませんわ。」
「……そうですか。」
(……ここはリアンに合わせた方が良いわね。)
心配そうな相手の有り難くない申し出をやんわりと断り、庭に視線を向ける。
「ただお恥ずかしい事にまだ少し頭が重く、出来ましたら侍女が申し上げた通り庭園の散策をご一緒に如何でしょうか?」
「…それは是非お付き合い致しますが、後に響きますので余り無理はなさらないで、お辛いようであればお伝え下さい。」
「……お気遣いありがとうございます。」
(身体に力を込めれば大丈夫!!)
椅子から立ち上がり、近付いてきた相手の差し出す手を見つめ、気合を入れて自分の手を重ねた。
力が込められていく感触に身体が少し強張るが、いつもとは違うその心地に、握られている手を思わず凝視してしまう。
「………。」
「どうかなさいましたか?」
「いいえ、何でもございません。」
声を掛けられ見上げれば、訝しげな表情を浮かべた相手と視線が合い、誤魔化すように微笑み返して立ち上がると、庭園に向かう歩道を並び歩いた。
然しそんな些細なボイティの変化に付き添い歩く侍女と執事は、顔に出さずに驚いていた。
(もしかしたら…。)
(等々!)
(長かった冬が…。)
(……。)
誰もがこの縁談はいい方向へ進むのではと期待している中、この状況を唯一冷めた気持ちで見つめている人物が居た。
「こちらは黄裴という植物でして、この長く垂れた花弁に手を翳すと、このように花弁が左右に移動して手を避ける珍しい品種です。そして…」
「……植物がお好きなのですね。」
庭にある植物を説明をしながら散策して暫くすると相手に話しかけられボイティは見つめていた植物から目を離した。
「?そうですね…あまりご興味ございませんか?」
「そんな事は無いですが、ただ……」
「はい。」
人差し指で蟀谷を少し掻きながら、何か言いたげな相手を見つめ、続きを促すと、困ったような表情を浮かべ、先程まで説明していた花に手を翳した。
「……いいえ、やはり何でもありません。」
「?…そうですか。」
「…あまり無理をしてもいけません。本日は顔色が良い内にお休みになられた方が宜しいかと思います。」
「?お気遣い痛み入ります。」
「多少ですが貴女の為人が知れて良かった。このまま屋敷までお送り致します。」
「!?……ありがとうございます。」
(は…早く終わるなんて!今日は何て素晴らしい日なのかしら!)
まだ庭の半分程過ぎた所で相手の申し出により早めに顔合わせのお茶会が終わり、浮き足立つ気持ちを抑え、相手が差し出してきた手を今度は身構えることなく重ねた。




