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VTuberが俺の書いたWEB小説をレビューしてくるんだが、頼むからやめてくれませんか?  作者: にとろ
WEB小説作者vsVTuber

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027:「月曜日が今週もやってくる」

 目が覚めた頃には日が高くなりつつあった。俺は寝起きのぼんやりとした頭でPCの電源を入れ、起動が終わるまでに着替えて昼飯にカロリーブロックを食べた。栄養が偏っていると健康志向の諸氏が拳を振り上げたりしそうなメニューだが、味と健康を求めないなら十分な食事だ。コップの水でカロリーブロックを流し込みディスプレイに目をやるとパスワードの入力画面になっていた。自分の名前を書くより多く入力したパスワードを入れてログインする。


 正直怖いという気持ちがないのだがブラウザを起動してMeTubeのページを開いた。そしてサイドメニューからヨミ・アーカイブのチャンネルをクリックする。ただページを読み込むだけだというのに手に汗がにじんで一瞬で切り替わったはずの画面の遷移に数秒かかったかのような気さえした。


 やはりというかなんというか、俺が昨日投稿した回のレビュー動画がアップロードされていた、深夜に更新を監視していなかったとすればあまりにも素早い対応と思える。いや、俺は素早いレビューより高評価が欲しいのだがな。


 俺のマウスを握る手が震える。どんな評価をされているか分からず不安でしょうがない。


 ボロクソに言われるようなことは運営に嫌われそうなのでないと思いたい。期待であってヨミが正直な感想を述べる可能性はある。


 何が恐ろしいかと言えばヨミの低評価だ、今のヨミは言いがかりのような事を言っていない。だからこそ怖いのだ。ヨミが言いがかりをしないということはつまり正直な話をするということで、そこで低評価されたら正直な感想で甘めに見積もっても面白くなかったと言うことになる、それはとっても恐ろしい。信者は大喜びして感想欄で暴れるだろうし、何より甘く見ても面白くないという感想はメンタルに堪える。


 マウスを持ち直し動画を恐る恐るクリックした。


『司書くん! 見てるかなー? 今日もブンタさんの作品をレビューするよ! 他の人はなかなかレビューを許してくれないから今回も同じ人だけど許してね!』


 やはり他にも選択肢を増やそうとしていたのか、この前までの辛らつなレビューを聞いていればそりゃあヨミにレビューされたいとは思わないだろう。俺だって悪名が立つ代わりに宣伝になるので仕方なく認めているようなものだ、それも誰もがレビュー出来るようにしているが、真っ先にヨミが動画を上げるので後追いで上げる人はほぼいないのだがな。


『今回も続編だねえ、ブンタさんは新作を書かないのかな? 新作を書いているなら気になるんだけどな~』


 お世辞なのか新作にしないと閲覧数が伸びないからか一応は期待されているようだ。しかしゆっくり進めている新作のことより強引に書いている続編の評価だ。さてどんな評価をされているだろうか……


『今回は主人公とヒロインだけで行くみたいだねえ……うーん……もう少し登場人物が多くても……でもちゃんと話としては成立しているんだよね』


 やはり芳しくない評価のようだ。書いていてなんだが自分でも無理のある展開だったとは思っている。それでも出来ることならそこには目を瞑っていてほしかった。しかしレビューを認めた以上それを受け入れるのもまた仕方のないことであって……だとしても気に食わないものは気に食わないんだよなあ。


『ま、まあ! ブンタさんの今後に期待しましょう! きっと今は伏線を張っている段階ですよ!』


 ごめんなさい、まったく考えていません。


『だからみんなも読んでみてねー! ばいばーい!』


 動画自体は五分程度のものだった、広告が貼れないなら尺を稼ぐ必要もないということだろう。コメント欄を見ると案の定、ヨミが俺に配慮マシマシのレビューをしているという意見であふれていた。もはやメンタルが折れてしまいそうだ。しかし俺は今までヨミのボロクソなレビューに晒されてきた身、今さら動画本編でさえないコメント欄で煽られても傷つきはするがなんだかんだ心は折れないのだ。


 不屈の魂で俺はさらに続編を続けていく決意に代わりは無かった。一々コメント欄で煽られた程度で削除要請など出さない。そういう意見がいる人がいるのはしょうがないし、得てしてその口を塞げば意見が圧縮されて濃縮された毒素のごとき辛辣さになるものだ。


 ネットには消すと増えるというジンクスがある。消すということは都合が悪いものであり、それをアップロードすれば相手にダメージを与えられるからということらしい。ネット上の戦争には巻き込まれたくないので逃げた方が良い。多少の不名誉を回復するために致命傷を負うリスクは犯さないのだ。


 そして、また続編を書き始めたのだが、どうしてもコメント欄で暴れていた奴らのニヤけ顔が俺を見下しているような感じがしてしまい思うように指が動かない。無理矢理にでも書くしか無いのだが、なかなか心に来るレビューだった。


 しかし無心になってキーボードに指を叩きつけていると不思議と話が出来上がってきた。評価のことはともかく、とにかく話を出来はどうあれ進めるべきと決め、指を動かし続けた。結果一話を作れた、出来については……及第点だと思っておきたい。ヨミ・アーカイブがどう評価するかは分からないが、話を書かなくなるよりずっとマシだ。


 出来上がった頃には日が傾きつつあったので夕食を食べて寝ることにした。今日の目覚め方からして、今晩はしっかり睡眠を取っておかないと明日が非常に辛そうだ。早めに寝て脳を休めてやろう。


 そう思い部屋から出たところで良子に出会った。


「よう、良子も夕飯か?」


「お兄ちゃん、もう食べるつもりですか? 夜中に空腹で目が覚めても知りませんよ……」


「大丈夫だよ、飯食ってシャワー浴びたら明日まで寝るから」


 もう寝てしまえばこちらのものだ、睡眠中は栄養の消費が抑えられる。なんとなく夕食でカロリーを多めに接種しておけば明日の朝くらいまでは持つだろう。


「まあいいですけど、父さんも母さんもいないので自分で作ってくださいね?」


「社畜か……」


「社畜ですねえ……」


 俺はため息と共にキッチンに向かう。夕食にちょうどいいものが冷蔵庫に入っているかチェックしたが、適当なものが無かったのでご飯を茶碗に杯分ほど丼に入れて、その上から二パックのかき混ぜた納豆をかけ、卵一個割り入れて完成ということにした。カロリーの摂取が最重要目的なので料理の手間は気にしないことにする。


 それを一気に胃に流し込む。納豆と卵でゆるゆるになっている白米が流れるように腹の中に入っていった。


 納豆のパックも卵の殻も捨てるだけですむので手間のかからない食事としては最高に楽だ。いや、嘘をついた。ゴミ箱に捨てるだけで終わるゼリードリンクの方が一瞬で飲めて早い。俺にも僅かに残っている道徳心のようなものが人間的な食事をさせたのだろう。


 そして食事が終わったのでシャワーをざっと浴びる、冷水が身体にかかって冷たいのを我慢して温水になったところで身体と頭をざっと洗って終了だ。


 寝る前に少し書いておこうかと考えて、無闇に先のことを考えるのはキリの無いことだと思いベッドに倒れ込んで眠った。明日は月曜日、そう言う面倒なことを出来るだけ考えないように意識を消した。

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