ヤンデレウイルス(短編版)
受験…嫌だ…
来年…来んな…
「おはよ、平斗」
「…はよ、理乃」
―俺こと平斗は平凡な男子高校生だ。
一応説明すると俺の上でまたがってる幼…少女は幼なじみの理乃。
「ほら、早く着替えて食べて、行こ?」
「へーい、にしてもお前も飽きないよなぁ、俺の世話」
「好きでやってるんだよ?なんかいや?」
まあ何も悪くない。てか色々やってくれるから有り難い。
ちっちゃいけど。
―登校中―
「おお、またご夫婦で登校か、羨ましいもんだぜ」
なんかモブが喋ってる。
「そりゃあいつら幼なじみの関係だからねー」
「私もイケメンな幼なじみほしかったなー」
女子たちも俺らのこと話題にしてんのかよ。
「聞こえてるだろ、あの会話」
「うん、聞こえるけど?」
「お前はいいのか?付き合ってるって言われてるけど」
「別に?だって紛れもない事実だし♪」
事実って…
「………あ、あれか」
忘れてた。
そういや俺、理乃と幼稚園の頃『結婚の約束』してた…
関係壊れてなんかなかったのに忘れてたのか。
「ご、ごめん。俺その約束さっきまで忘れてた」
「え〜ひどい〜…でも思いだしたんならいっか」
楽観主義の理乃さんに救われましたありがとう理乃!
閑話休題
「そういえばお前は最近はやってる『ヤンデレウイルス』ってのを知ってるか?」
「…? あのオミなんちゃら株ってやつ?」
「いや違うしあんまリアルのこと言うな…知らないなら解説するよ」
ヤンデレウイルスとは…
女性から主に感染が確認される体ではなく『心』に影響を与える新種のウイルス。
孤独感の増加と孤独に対する恐怖心が上がり、常に人(主に意中の人)と一緒に居たくなる。
また、意中の人に対する依存心、独占欲、嫉妬心が向上している症例が多くあり、その人への執着心が異常なまでに高くなる。
また、ヤンデレウイルスにかかった人は殺人や監禁などの猟奇的犯罪を行う確率が8割と非常に高いことも特徴の一つであり、感染力は低いが危険なウイルスである。
「…へえー」
「そして、ここからが1番重要なところ。
このウイルスは自覚症状が全くと言っていいほど無い」
「自分はかかっていると自覚している人はとても珍しく、感染したことが分かっても認めない人が多いんだとか」
「ふうん…怖いね」
「興味なさげだなお前」
「うん、他人の惚気話なんかどうでもいい」
…あれ、俺惚気話なんかしてたっけ?
いや、でもこのウイルス自体愛とかに関係するからそういうエピソードは惚気話みたいになっちゃうのかな?
…いや、惚気話って言い方はちょっと失礼か。
キーンコーンカーンコーン
「チャイム鳴ったか、んじゃ休み時間にまた」「おけ、また」
―放課後―
「眠い…」
「帰ろ、平斗」
「おけ、でもちょい待ち」
「何?」
「すぐ終わるから校門で待ってろ」
「…うん」
「先輩、きましたね」
「待ったか?ごめんな莉乃」
この娘は莉乃、部活の後輩だ。
理乃と読みが一緒だけど気にするな、案外イントネーションで区別が出来る。
それで本題だが、今日何があるか聞いてないけど「放課後に来てください」と呼び出された。
…でも顔赤いしもじもじしてるしこの娘何言いたいかめっちゃ分かるけど。
「あの、平斗先輩と理乃先輩は、付き合ってるんですか?」
「………………」
ど、どう言えばいい?
「えっと…名義上では付き合ってる…恋人だけど事実上は幼馴染みって関係かな」
「そうですか…分かりました、有難う御座います」
「じ、じゃあまた明日ね」「はい」
笑顔だけどちょっと怖い…やっぱ俺に気ある?
「理乃、大丈夫?」
「うん、帰ろっか」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「…先輩」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「はあぁ、まずいかなぁ…」
理乃はウイルスにかかっている気がするし、莉乃には告白?っぽいものされたから…
「ヤンデレウイルスへの感染が分かるアプリとかあるっけ…」
まず最初に理乃がヤンデレウイルスにかかっているかどうかが知りたい。
かかっているだけならまだいい。
「ただ…」
理乃と莉乃どちらもかかっていて、更にその対象が俺だったら終わりだ。
「ん?」
CACAO~ヤンデレウイルス感染確認アプリ~
いまの俺にちょうど必要なアプリ見つけた…
「あるんだったら早く教えてくれよ…まあ誰も教えてくれないか」
こんな話は置いといて、
「チェックリスト方式か、早速理乃と莉乃について試してみるか」
………………………………
『理乃さんはヤンデレウイルスにかかっている確率が非常に高いです。』
『莉乃さんはヤンデレウイルスにかかっているおそれがあります。』
ですよね。
「明日からどうしよ…」
理乃と一緒にずっといても莉乃がどう動くかわからないし、かといって理乃を無視しても駄目だし…
「人生って、積みゲーなんだな」
人間はじめて16年するけど初めてヒトの真理に気づいた気がする…
「最悪好きな方に転がればいいんだろうけど
俺の好きな人って…」
りの、だし。
―――――――――――――――――――――――――――――――
ー朝ー
「起きて、平斗」
「何…なんか起こすの早くね?寝ぼけた?」
「違う、大事なこと」
「昨日、莉乃と何したか、ちゃんと言って」
「…知ってるんじゃないか」
「平斗が待ってろって言ってたから待ってたのよ!」
「そういえばお前変なとこで真面目な性格あったな!」
閑話休題
「あー内容か…俺とお前は付き合ってるのかって言われた」
「告白は?」
「…一応はっきりとはされてない」
「…そう」
理乃の顔が綻んだ。少し安心したのかな。
「あの、理乃。一つ言っていいか?」
「うん」
「莉乃は俺に気がある」
「ん、それはわかってる」
「仮に違っても、俺関連の何かが好きに違いない」
「そう、だよね。
そろそろ何とかしないと…」
ー登校ー
「先輩」
「り、莉乃」
「平斗先輩も理乃先輩もおはようございます」
「…おはよう」
「時間って、ありますか?」
「ああ」
「じゃあ、向こうで、
…できれば、理乃先輩も来てくれませんか?」
「…ええ、構わないわ」
「あの、私」
「平斗先輩と理乃先輩の恋に、恋しちゃってます」
ん?
莉乃は、俺と理乃の恋に恋しちゃってる………
「「はあ〜!?」」
………………
「え、えと、私もよくこの恋を理解できてなくて、昨夜落ち着いて心を整理したらこんな結論になっちゃいました」
「え、ええ…」
「最初は平斗先輩が好きかなーと思ったんですけど、理乃先輩と一緒に話してる平斗先輩も好きで、理乃先輩も好きだし、何なのかなーって思ってたら、二人が付き合ってたら色々丸まって私的にめっちゃ嬉しいなって…それでこういうことに…」
「つ、つまり莉乃って…まだ恋に恋しちゃってるの…?」
「マジで文面通りの意味だし…」
「ち、ちなみにですけど私ヤンデレウイルスにかかっているので、別れるとかそういうのは私が許しませんからね!」
「嘘!?」「ほ、ホントです!」
「…そうだったのね。
私と平斗の仲を邪魔するやつはいらないけど、傍観とか手助けするくらいだったら許すわ。莉乃意外といい人ね」
「ありがとうございます理乃先輩!
私、先輩方の愛に対する愛は先輩方の愛に負けませんから!」
「へえ、中々言うじゃない。その愛がどれ位なのか知りたいわ」
「なんかバトル始まっちゃたし、理乃の口調がお嬢様みたいになってるけど!」
「そりゃそうよ、私たちの仲を支えてくれるのなら、その子はもう私たちの子分みたいなものでしょ」
「いやそうじゃないでしょ………うーん…」
「先輩、なんか言いたげですけどどうしました?」
「いや、えーとな…この前CACAOっていうヤンデレウイルス感染確認アプリを入れたんだけど…」
『平斗さんはヤンデレウイルスにかかっている確率が高いです
対象:莉乃』
「「…え?」」
「おふざけとかそういうのじゃない、ガチで合っている。
…言うの恥ずいけど理乃より莉乃が好きだし」
「せ、先輩、何言ってるんですか、そんなエグい冗談なんかついて」
「…ふふふ、やっぱり莉乃、私の敵じゃない」
「理乃先輩そんな怖い笑顔で来ないで下さい!平斗先輩嘘って言って下さい!」
「……莉乃、ごめん。俺は理乃を止めれないんだ、怖いから」
「い、嫌だ、ヤンデレウイルスもう嫌ー!」
クリスマスのやつと何一つ変わってないので見ていない方は見ないままで構いません。
それでも見てくださった場合は泣いて喜びます。