お試しにも程がある 95
「お待たせ!
ひとりずつ食べられるように小分けにしたから、好きな物から味見してね。」
そう言うとみさとは、4つの皿とご飯を全員の前に出した。
千切りキャベツを中心に盛り、肉の切り方が違うが味付けは同じものを載せている。
4つの皿はそれぞれ味が違うようで、どれも食欲を唆る香り。
ご飯足りるかな?
ついつい食事のつもりになってしまう。
「えっと、生姜焼きと、焼肉のタレ風と、某ステーキ店に寄せた風の玉葱ソースと、大蒜バターソースです。
豚肉と玉葱という基本的には同じ材料だけど、味付け変えるだけならお店でも出しやすいかなぁと思って作ってみました。
作りすぎたかな?」
頬をポリポリしながら、みさとは説明。
クレスタは頷きながらメモを追記。
シビックは食べたそうに俺を見ている。
わかったよ、目がうるさいよ。
「ご飯は大鍋で用意したけど、足りなさそうなら追加も出せるよ。
一応味見だけどね。
温かいうちにどーぞ。」
「「頂きまーす!」」
俺とクレスタは箸・シビックはフォークで、食べ始める。
こっそり作っておいた味噌汁も、出してくれた。
「同じ味でも、肉の切り方で感じが変わるね。」
「そうなんですよ、クレスタさん。
この辺りは人それぞれ好みがあるから、どれが好きか試して欲しくて。
どれも美味しいから迷っちゃいますよね。」
みさとが何気なくシビックを見ると、ご飯は既に空っぽ。
テーブル横に置いた大鍋からご飯をよそってあげてる。
それを見て、俺もお代わり。
「どれも良いよね、ご飯お代わりしよ。」
「たっくん、お茶碗貰うよ。」
みさとは俺の茶碗を持つと、ご飯をよそってくれた。
クレスタも、1つずつ味見をしているが、どうしてもご飯が進んでしまうよう。
空っぽの茶碗を見つけ、みさとがお代わりをよそう。
「これだけご飯が進むなら、新メニュー確定です!
しかも、材料はあまり変わらないと来た。
流石みさとさん。
味を知ってしまうと、どれを食べようか迷いますね。」
「でしょ?
日替わりで来ても飽きないしね。
お肉の切り方も選べたら、ホントにメニュー決まらなくなっちゃう。」
「そこはどう提供するか考えますよ。
生姜焼き以外も美味しいので、全部採用します。
玉葱ソースのは、さっぱりだけどご飯も進む。
不思議な味ですね。」
「これね、考えた人スゴイと思う。」
「ん?みさとさんが考えたのでは?」
「えっとね、以前食べた味を、再現してみましたって方が正しいかな。
この国にはない味だったから。」
みさとはうっかり素直な感想を口にしてしまい、一応取り繕う。
「再現でもいいじゃないですか。
美味しいが正義ですよ!」




