お試しにも程がある 93
「動かし方はこんな感じ。
覚えた?」
一通り動作を教えて、やって見せる。
隣にデックスを乗せて、レクチャー。
何だかデジャブな感じだけど、まぁ良いか。
実際にデックスがやってみることになったが、身長差があったからもしかしてとは思ってたけど、ペダルに足が届かないし前を見るのも難しかった。
「意外に難しいもんだ。」
デックスはやれやれという感じだったが、俺は乗れる方法を考えた。
そうだ、デックスサイズにすればいいんだ。
試しに縮小してみる。
少し小さくなった車に、もう一度デックスが乗ってみる。
「ほぅ、これなら出来そうだぞ。
拓海、隣に乗ってくれ。」
エンジンをかけてない車で操作方法を確かめたデックスは、俺に声をかけた。
助手席に乗り込むと、ちょっと狭いがなんとか乗れる。
こっそり屋根を高くして、何事も無かったかのような顔をする。
早速デックスは、ブレーキ踏みながらエンジンをかけ、シフトをパーキングからドライブに変更し、ブレーキから足を外してアクセルを踏む。
1つずつ確認しながら操作して、ゆっくり進む。
慣れてきてスピードも上げる。
ハンドルの動きと車の動きを確認しながら操作して、右に曲がったり左に曲がったり、ぐるっと一回りしてみたり。
隣に乗ってわかったけど、自分の運転じゃないと酔いやすいかも。
オロチの時は早いけど緩やかな動きから大丈夫だったのかな。
平面でジグザグは結構くる。
端まで行くことはなかったが、気が済んだのか元の位置まで戻ってきた。
「これは面白いな!
俺もこんなの作りたいぞ。
全く同じは確かにできんが、俺流でやる。
ん?どうした拓海。」
「…だ、大丈夫。
なんでもないよ。
楽しんでくれて何よりだ。」
「そうか?なら良いが。
参考資料、大事に使わせてもらうよ。」
「うん、宜しくね。
じゃあそろそろ帰るよ。」
「何だ、急だな。
遅くまで済まなかったな。
また必ず来てくれよ!」
「勿論、また来るよ。
あ、忘れてた、ここの鍵ね。
無くさないでよ。
じゃあね!」
そう言うと転移魔法で家に帰還、鍵を手にしたデックスを最後に見た。
家に着くと、倒れるようにソファに座る俺。
みさとは水を入れたコップを持ってきてくれた。
「大丈夫?たっくん、顔色悪いよ。」




