お試しにも程がある 92
「良いのか?大事な物なんじゃないのか?」
デックスは、車を見て驚く。
「大事だよ。
だから、1台しかあげられない。
でもね、エンジンの説明は俺には難しいし、実物があるからといって同じ物出来るわけでもないし、参考になればいいかなって。
行き詰まった時に、かっ飛ばして気晴らしでも良いよ!」
速攻みさとがツッコむ。
「そんな使い方はたっくんくらいじゃないの?」
「え、そうかな?
デックス、乗ってみたら楽しいから、お試しあれ。
あくまでも見本というか、参考資料だな、うん。
小型化すれば使えるかもしれないけど、そもそもガソリンや電気を普段からこんなふうに使えるかは、わからないしね。」
あまりの展開に、戸惑うデックス。
「何でここまでしてくれるんだ?
今日会ったばかりだろう。
俺は何もしてねぇぞ。」
「新しい物を作るのって大変だよね。
俺は、新しい物を見たり聞いたり知ったりするのは大好きだけど、中々作るは出来ないから応援したくなった。
それだけだよ。」
「拓海…」
「それにさ、車も再現できるなら、他でも売れるんじゃない?
先ずは1人用の乗り物だけどさ。
技術が進むことで、他の開発に繋がったりとかさ。
武器以外で技術革新、頑張ってよ!」
そう、武器以外でできることを増やすのは、ここでは大変かもしれない。
以前に例があったように、車を作ることで戦車に繋がるかもしれない。
でも、先ずは1人乗り用の移動手段を考える。
この一歩は、デックスにとってとても大きな一歩になるだろう。
俺達は当たり前のように使っているものを、これから開発・作成しようとしているなら、邪魔にならないように応援したい。
これは本心だ。
良いなぁ、俺もそんなことできたらなぁという思いもある。
正直羨ましい。
デックスが作ることで、この世界流の乗り物になるかもしれないからね。
色んな気持ちはあるけれど、勝手に期待して勝手に背負わせるわけには行かない。
だからこそ。
「また機会があったら、寄らせてもらうね。
ひとりじゃ大変そうだし、仲間もできると色々発想が広がるんじゃない?
俺が手伝えなくて申し訳ないけど。」
「いやいや、俺がやりたい事を理解してくれるだけで嬉しい。
変わったことやってるから、仲間は増えんかもしれないぞ。
ありがたく、まるっと貰うよ。
運転か。
どうやって動かすんだ?こいつ。」
「お、待ってました。
これはね…」




