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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫
9/294

お試しにも程がある 9

「いや~広い風呂とは良いものじゃわい。」

「堪能して頂けましたでしょうか。うちは毎日入ってるけどね。」

「家にも作らせるか。この仕組みを作るのが大変そうじゃがな。」

「どの部分?」

「通常は、沸かしたお湯を盥に入れて、冷める前に体を浄めるのじゃ。湯に浸かるという発想がない。大きな風呂で湯を溜める、寧ろどうやってるんじゃ。」

「蛇口からお湯を…」

「湯が出るのか?溜めた後の水の処理はどうするのじゃ?」

「洗濯にも使うけど、下水に流すかな。トイレも流すでしょ。」

「流すとは、理解できんな。トイレも見せてもらおう。」

水洗トイレを見せると、顔をつけそうな勢いで覗き込む。

「おぬしの世界は、面白いものばかりじゃのう。」

「でも、魔法はない世界だよ。」

「それはそれで不便そうじゃな。」

「そうだね、どっちもどっちじゃないかな。今を快適にする努力は、惜しまないよ。」

「ホッホッホッ、流石じゃな。」

「お風呂上がった?アイスでもどう?」

「ぼく食べる!」

「アイスとは何かな?」

「食べてみればわかるよ。寝る前だから程々にね。」


翌朝、皆ゆっくり起き出す。レジアスも疲れていたようで、あくびをしながらリビングに来た。

「おはよう、よく眠れた?」

「あぁ、風呂の効果もありそうだが、熟睡したぞい。あの布団も気持ち良かったぞ。」

「それは良かったです。お茶でもどーぞ。」

「ありがとう。」

「朝ご飯作るので待ってて下さいね。」

「軽めで頼むの。昨日は食べ過ぎたようじゃわい。」

「そうなるよね、わかる。あれだけ食べたらそうなるって。」

「美味かったからなぁ。また食べたいぞ。」

「先ずは朝ご飯ね。」

みさとはキッチンに向かい、スープから作り始める。その間に、俺は今日の予定をレジアスと再確認する。

「ご飯の後、直ぐに出掛けていいのか?家の人達びっくりするんじゃないかな?」

「なぁに、大丈夫じゃろう。」

「レジアスの家の人は大変だな。まぁ、それなら良いけど。料理人て何人くらいいるの?」

「3人かな。交替で仕事してもらっておる。」

「そう聞くと、お偉いさんなんだな。この間は突っ込まなかったけど、あの人息子なの?ビスタさんだっけ。」

「おぉ、そうじゃな。ちょっとばかり魔力は低いが、私の息子じゃ。」

「何でも受け継ぐものじゃないし、親と子は違うものだから、良いんじゃない?うちの息子も似てるんだか似てないんだか。」

「おぬし、そんな若いのに子供がいるのか。」

「若くないよ、40過ぎだし。」

「この辺では、200歳位が平均寿命じゃ。その年齢なら、若い部類じゃな。」

「だからかぁ。こっちに来てから、よく若いって言われるのは。」

「ホッホッホッ、そんなもんじゃ。」

「ご飯出来たよ~。」


トースト・スクランブルエッグ・ベーコン・トマトとじゃがいものチーズ焼き・オニオンスープ。

バターは好きに塗れるよう、卓上に出してある。軽いと言っても、手を抜かないみさと。

「これまた美味そうじゃの、みさと。」

「すぐ作れるものばかりだけどね。どーぞ食べて下さいね。」

「いただきま~す!まぐまぐ。」

「美味しいよ、みさと。」

「良かった。食べ終わったらお出掛けだっけ?」

「そうだけど、急がなくていいよ。」

「一息ついて、材料用意できたら声かけるでいいのかな?」

「そんな感じだね。」

「了解!」

食後にヨーグルトと紅茶を出して、マッタリする。材料は全てリュックに入れて、出かける準備も万端。シビックも行く気満々で、肩の上で待機している。

少ししてから出発した。地図でレジアスの家を示してもらい、ナビに頼る。昼前には、到着。庭広いな〜、ここん家!留まれるどころか、走り回っても大丈夫そうなくらい。レジアスってそんなに凄いのかって実感した。

そのレジアスに連れられて、家に入った。

「戻ったぞ。」

「お帰りなさいませレジアス様。」

執事とメイドのお出迎え!迫力あるなぁ。俺とみさとは、レジアスに続いて部屋に入り、ソファーで待機している。少しすると料理人と思われる二人が入ってきた。

「お呼びでしょうか、レジアス様。」

「おぉ、よく来たな、オーパ・セプター。覚えてもらいたい料理があってのぅ、先生を呼んできたぞ。材料もあるし、頑張ってくれ。楽しみにしているぞ。」

「新メニューですか?是非にも覚えたいです。先生、宜しくお願いします!」

「えっと、みさとです。宜しくお願いします。早速ですが、キッチンに行きませんか?」

「「はい!」」

二人に先導され、みさとは消えていった。

「俺は待ってていいのかな?」

「おぬしは私とアイテム作成じゃ。出来そうなものから始めるかの。」

キッチンに着いて、材料を取出す。鍋を借りて、麦を炊くところから始める。

作る内容を伝えてから、材料説明・作り始める。スパイスを挽き、材料を刻み、炒める。いい香りが漂う。煮込んでいる間に、ハンバーグやメンチ、数種類のサラダも作る。後で食べられるように、プリンにレアチーズケーキも作る。冷蔵庫は流石に無かったので、冷やす魔法をたっくんに頼もう。

迷うといけないので、元の部屋まで連れて行ってもらう。

「え、冷蔵庫ないのか。仕方ないね、手伝うよ。」

「冷蔵庫とは何じゃ?」

「食材を冷やしておく箱だよ。バターとか肉とか牛乳とか、冷やして保存できるヤツ。」

「それは便利じゃの。おぬしの家にはあったということか?見とけばよかったわい。」

「また今度来た時ね。今はみさとの手伝いが先だよ。」

「ありがとう。食後のデザートを冷やしたいだけなんだけど。」

「じゃあ、箱に入れて暫く冷やせる様にすればいいかな。」

「お願いしまーす!」

色々仕込んで、少し手を休める。その間に、この家の食材を教えてもらう。すると、香りの良い草も出てきた。

「これって、クレスタさんとこの食材かなぁ。」

「よくご存知ですね。あの方の取扱う商品は、質がいいって有名ですよ。」

「少し試してもいいですか?」

「どうぞ、お試し下さい。」

手に取ると、まるで青海苔!本当に良い香り。

「キャベツと小麦粉、長芋と豚バラあるかなぁ。」

「それなら、全てありますよ。他にご希望の物はありませんか?」

「揚げ物用の油と、蓮根あったら嬉しいなぁ。」

「揚げ物とは何でしょう?」

「大きめの鍋に油を入れて、熱してから食材を入れて火を通す調理法ですよ。なので、これくらいの鍋と多めの油があるといいんですが。」

「それなら、こんな感じで如何でしょうか。」

「わぁ、これこれ!ありがとう。では早速。」

みさとは、大きなボールに持ってきた卵を割り入れ、長芋を摺り、事前に作ったばかりの揚げ玉も入れる。小麦粉とキャベツも山盛り入れて、丁寧に混ぜる。流石に鉄板は無いので、フライパンで1つずつ焼いていく。一緒に乗せた豚バラも、カリッとなるようにじっくり焼く。その間に、手早くマヨネーズを作る。油・酢・卵・塩を撹拌し、とろみが付いたら味見。

ソースがあるから焼きそばでもと思っていたが、折角青海苔があるのだからお好み焼きでしょ!紅生姜が欲しいとこだけど、今度作ろう。出汁も課題かな。

蓮根を薄切りにして、素揚げ・塩コショウと青海苔で味付け。序に唐揚げも作っとこ。温かいうちに食べて欲しいから、声掛けしてこよう。

「出来たものから食べませんか?」

「おぉ、待ってたぞい。すぐ行くわい。」

「何か、他のいい香りもするよね?何作ったの?」

「見てのお楽しみ!食材がいっぱいあって楽しいよ。」

キッチンに向かうと、カレーは勿論、青海苔の香りもしてきた。

「先に出来たお好み焼きと蓮根の素揚げからどーぞ!」

「おぉ、スープ以外でこの草使えるとは思わなんだ。どれどれ…なんと、いつもより香り高いのぅ。こっちは、この間のソースを使ってるものだな。」

「お好み焼きだ!マヨもある。みさと凄いなぁ。」

「メンチ単体だと、マヨとソースは合うよねぇ。食べたいと思ってたの。」

「うん、美味いのぅ。作り方は覚えられたかの?」

「材料と手順はバッチリです。後は作ってみないとですね。」

「そろそろカレーも出しますよ。」

「おぉ、頼むぞ。これから好きな時に食べられるようになるとは、嬉しいのぅ。」

「今回はチキンカレーにして、唐揚げとメンチも作ってみました。」

「食べきれるかな。全部好きだけど、量にもよるよね。」

「みんなで少しずつ食べれば、みんなが味を覚えて比較検討しやすいんじゃない?カレーは、明日食べても美味しいよ。2日目のカレーは、しっかり温めればすごく美味しい。」

「じゃあ、皆で味見しようかの。」

「「いただきまーす!」」

少しずつ味見できるように皿に盛ったが、それでもお腹いっぱいになりそうだ。俺は早速、お好み焼きから味見。料理人二人はカレーから、レジアスは二口目も蓮根に手を出した。それぞれ意見を交わし合い、メモをとる。レジアスはまだもぐもぐしているのに、フォークにはお好み焼きを準備してある。

唐揚げも相変わらず美味しい。マヨネーズがあると、七味も欲しくなる。今度サンドしてみようかな。

「この麦というのは、米に似てますね。」

ふと聞こえたセプターの一言に、振り返った俺とみさと。米⁉

「今、米と言いました?セプターさん。白米の事ですかね。」

「その通りです。うちの田舎では、米しかなかったんですよ。卵かけご飯美味しかったなぁ。」

「白米が無くて、麦で代用してたんですよ!白米があればそっちが欲しかったんですよ。寧ろ買いに行きたいくらいです。田舎というのは何処ですか?」

「ここからだと街を3つ離れた、プレーリーというところです。何もない所ですよ。」

「米があるなら、これだけで目的地になるよ。教えてくれて有難う!」

「とんでもない!こちらこそ、色々料理教えて頂きありがとうございます。」

二人が取ったメモの内容を確認して、間違いないとみさとが太鼓判押してから、帰路につく。スパイスは配合を変えて試してみるよう、アドバイスもした。

家についてから、白米確保について相談が始まった。

「いきなり行って買えるのかな。」

「栽培方法聞いても、出来るまでかなり時間係るよ。」

「どこかで取寄せてくれる商人いないかな。」

「今まで白米が不要だったから、買付の必要もなかったんでしょ。」

「美味しいってわかれば買付行くかな?」

「メニュー提供する?カレーもだけど、ドリアとかオムライスとか炒飯とか!シンプルにおにぎりも美味しいし。」

「やっぱTKGかな。こっちで生で食べてるの見たことないし。お米ある所だとそういう美味しい食べ方もできるよな。」

「ねぇ、お醤油見たことなくない?」

「言われてみれば!あの料理人さんとこは何で食べてたんだろう。」

「明日行って聞いてみる?」

「フフリ、念話って知ってるかい?みさとさん。今聞いちゃおう。」

(レジアスさん、ちょっと聞きたいんだけど、今いいかなぁ。)

(どうしたんじゃ、拓海。)

(あの白米知ってたセプターさんに、卵かけご飯の味付け何でしていたか確かめたいんだ。頼めるかな。)

(少し待っておれ。…塩だそうだ。また何か考えとるのか?)

(ちょっとね。確認してくれてありがとう。またご飯誘うからね。)

(おぅ、気長に待っておるよ。)

「塩だって。更にシンプルだな。」

「黒胡椒足すとお洒落らしいよ。」

「粉チーズも足すとカルボナーラだな。それはそれで美味いかも。」

「この間のクレスタさんとこ行ってみる?」

「いいねぇ。香りの良い草は青海苔だったし、カレー持っていって白米教えてくるか。」

翌日、クレスタの店までやって来た。声をかけると、快く応じてくれた。

「先日は助かりました。今日はどうしたんですか?」

「クレスタさんとこで、白米の取扱いしてないかなって思って来ました。この辺じゃ見かけないけど、クレスタさんなら知ってるかなって。」

「白米ですか?聞いたこと無いですね。どんなものです?」

「じゃあ、試しに食べてもらいたいものあるんですけど、キッチン借りてもいいですか?」

「どうぞどうぞ、新しいものは大歓迎ですよ。」

3人でキッチンに向かい、麦とカレーの鍋を出す。温め直してから、盛付け。

「なんといい香りだ!早速頂くよ。」

スプーンを手に持ち、ルーから味見。

「ほぅ、スパイシーで美味いね。」

「麦と一緒に食べた方が、もっと美味しいですよ。ほんとは白米欲しいけど。」

「どれどれ。ん、これはイケる!今まで食べたことの無い組合せだ。店を出したら、繁盛しそう。これ、作り方教えてくるかい?」

「いいけど、白米でも試した方がいいですよ。食感だいぶ違うから。」

「そんなにオススメなのかい?じゃあ試してみたいな、何処の作物なの?」

「ここから3つ先の街らしいですよ。白米があれば、他のもっと美味しい食べ方もできるし、現地でも美味しい食べ方があるってそこ出身の人が言ってたよ。」

「よし、行こう!また護衛頼むよ。」

「ま、そーなるよね。いつ行きます?」

「準備が大丈夫なら、今からでもいいけど。ギルド通さなくても、個人的にも依頼できるでしょ?」

「こちらは大丈夫ですよ。馬車ですかね?」

「そうなるね。この間の湖より時間かかりそうだね。」

「魔法使っていいなら、早く着きますよ。」

「おぉ、料金はずむから、それで宜しく。」


既に旅路。魔法使うことは内緒にしてもらい、15日で到着予定。人がいない場所では飛ばして、人影見えてきたら速度抑えるの繰り返し。比較的人が居ない場所が多く、こちらとしては助かる。田舎と言っていただけあるなぁ。近くになると、田園風景が広がる。収穫終わってるかな?在庫あるといいんだけど。

セプターに教えてもらった農家を尋ねる。この辺りは皆米農家とは聞いていたが、お勧めの家があるそうだ。

「こんにちは、ブレイドさんのお宅ですか?」

「そうだけど、何か?」

「知合いのセプターさんに、ここの白米が美味しいと聞いてやってきました。もし宜しければ売って頂けないかと思いまして。」

「米を?酔狂なお客さんだなぁ。ま、折角だから上がんなよ。」

「お邪魔します。」

「先ずは味見してみるかい?」

「こちらではどんな食べ方してるんですか?」

「パンの代わりに食べる事が多いかな。」

「セプターさんが、卵かけご飯が美味しかったって言ってましたよ。」

「あぁ、鶏も飼ってるから直ぐ出せるよ。よくそんなの覚えてたな、あの子。」

「余程美味しかったんじゃないですか?」

「そう言ってもらえると嬉しいねぇ。」

「クレスタさん、生卵食べられる?」

「え、生で食べられるの?聞いたことないよ。」

「この辺じゃ普通の食べ方だよ。」

「私も生卵はちょっと苦手。ベーコンエッグで半熟にしたのをご飯にのせて食べるのは好き!」

「ほぅ、それも美味そうだな。試してみるか。じゃあ用意してくるよ。」

「私も手伝う。」

「ありがとな。」

キッチンに二人で向かい、何やら楽しそう。生卵と聞いて、微妙な顔つきのクレスタ。俺は久々の白米で、テンションが上がってる。

「作物だから、収穫時期も確認しないとね。」

「美味しくなかったら買わないからね!それと、帰ったらカレー以外も食べ方教えてよ。店出すか検討しないと。」

「了解。コンサル料貰わないとな。」

「メニューはものによるけど、カレーの作り方は買わせてもらうよ。いくら位かは後で相談しよう。」

「毎度あり。沢山あるけど、店にするならちょいちょい新メニュー出せるように小出しにしないとね。」

「わかってるねぇ拓海くん!一緒に商売するかい?」

「遠慮します。」

暫くすると、お櫃・お茶碗・卵・ベーコンエッグ・温めたカレーと、テーブルの上がいっぱいになるくらい運ばれてきた。待ってました!

「お待たせ、さぁ食べてくれ。」

「「頂きます!」」

お櫃からホカホカご飯をよそってもらい、俺は卵かけご飯に、みさととクレスタはベーコンエッグをのせて食べる。おっと、忘れてた。

「ブレイドさん、醤油って知ってます?」

「知らないなぁ。美味いのか?」

「これです。卵かけご飯にはすごく合いますよ。」

「へぇ、じゃあ遠慮なく。」

塩をかける手を止めて、醤油に切替え一周りさせる。

「これは美味いな、味噌だまりよりはあっさりだけど、食べやすい。」

「お味噌もあるんですか?凄いですね。味噌むすびにしたら美味しいですよね。」

「味噌むすび?何だそれ。」

「作りましょうか?久々食べたいし。」

「おぅ、キッチンは好きにしてくれていいよ。」

「ありがとう、では早速!」

味噌の在処だけ聞いて、みさとはキッチンに向かった。

「クレスタさん、ベーコンエッグでも醤油合うよ。お試しあれ。」

「ではでは。これはイケますね!これも商品化できちゃったりするんじゃないですか?どーです拓海さん。」

「いいけどさぁ、味噌と同様で作るのに時間かかるよ。商品で出たら、確実に欲しいけどね。」

「味を知れば買いたくなる、味を知るために店に出す、店は繁盛しそう!決まりだね。このベーコンエッグのせご飯にカレーのせても美味しそうだね。」

「勿論美味しいよ。カレーは、色んなトッピング出来るから、好みに合わせて自由自在なんだ。」

「トッピング?」

「カレーに、ウインナーや目玉焼きや炒めたきのことか唐揚げとか。何でもありですよ。」

「また出た、新しいの。唐揚げも教えて貰えるんでしょうね。」

「鶏の揚げ物ですよ。」

「鶏って卵産む鶏かい?出せるよ。」

「作るのはみさとだから、聞いてみますよ。他に必要な物あるかもしれないし。」

「味噌むすびお待たせ!」

タイミング良く戻ってきたみさとに経緯を話し、できるか聞いてみる。

「小麦粉・片栗粉・卵・塩胡椒・にんにくもあると嬉しいな。揚げ油は用意できるし。」

「たぶんあるぞ。鶏も出すから来てくれ。」

「はーい!」

またまたキッチンに向かう。休む暇ないなみさと。

「この味噌むすびも美味しい!白米凄いなぁ。来てよかった。」

「でしょ!俺も来てよかった。麦を混ぜるくらいならいいけど、麦単体は物足りない感あったし。」

「成程、ブレンドもできると。いくつか割合試してみますかね。単価もあるし。」

「炊く前の白米売ってくれたら、買いに行くよ。家で食べたいから。」

「調理法は簡単なんですか?」

「そこは俺の範疇じゃないからな。みさとに聞いてくれ。」

「みさとさん一流の料理人ですね。うちに来ないかな。」

「駄目ですよ!」

「こんなに凄いのに、拓海さん独り占めですか?勿体無い。」

「俺の奥さんだから良いの。」

「狡いなぁ。定期的にメニュー教えに来てもらうくらいなら良いですかね。」

「みさとがいいって言うならね。交渉は俺も立ち合うよ。」

「是非そうしてください。楽しみになってきた。早く買付の交渉しないと。」

カレーと味噌むすびと交互に食べながら、皮算用するクレスタ。俺も、目論見通り白米が手に入りそうでホッとしている。しかし、ここの白米は美味しいなぁ。

「唐揚げお待たせ。」

熱々唐揚げにマヨネーズまで作ってきた。大盤振舞すぎる。

「いやー嬢ちゃん凄いね、こんなに色々作れるとは。」

「食べるのが好きなんですよ。」

「味見したけど、これまた美味いね。その白いのもあっという間に作っちまうし。」

「材料揃ってたから、楽ちんでした。色々出してもらってありがとう。」

「みさとさん、この白いの何ですか?」

「マヨネーズですよ。唐揚げに付けてみてくださいね。」

「唐揚げ単体で食べてから試したほうがいいぞ。マヨは何につけても美味しいから。」

「拓海さんまでその勧め様。どれどれ。うん間違いない!これも調理法教えて下さいよ。」

「あはは、良いですよ。たっくんも付き合ってくれるんでしょ?」

「勿論、値段交渉から付き合うから安心して。」

「お手柔らかに。ところでブレイドさん、是非この白米を売って欲しいんですが、いくつか質問しても宜しいですか?」

「おぅ、何でも聞いてくれ。」

「いつが旬で、取れない時期とかありますか?」

「収穫は秋に年一回きりだ。うちだけで足りないようなら、他の農家も声かけてやるよ。」

「それは助かります。」

「米のままなら腐らないから、温度の低い暗い所で保管すると1年持つぞ。」

「いいですねぇ。取敢えずキロ単価ですが…これくらいでどうです?」

「ありがたいねぇ。どれ位いるんだい?」

「先ずは100キロで。売行きによって追加発注かけさせてもらいます。」

「それくらいならうちで大丈夫だ。足りなくなった時に他ん家声かけるときは、同じ条件でいいのかい?」

「良いですよ。そうなった場合は、ブレイドさんに手数料払わないとね。」

「収入が増えるのは大歓迎だ。任せとけ。」

クレスタとブレイドの密談が続く間に、俺たち二人は久し振りの白米を堪能していた。


戻ってくる道すがら、いくつかの料理の調理法や調味料の製造過程を話し、製作可能かクレスタと相談。調味料が揃ってから店を開けた方が良いのではないかとも提案するが、新メニューとして順次追加にすれば問題ないとの事。先ずはカレーと唐揚げで店を出し、調味料ができる頃にメンチカツとソース・ベーコンエッグと醤油と、小出しにするとの事。調味料作るための場所・人も用意するので、調味料も値段を付けないととのこと。料理注文したら付いてくるようにして、追加から料金かかる設定の方が、皆が味見できる。人気が出てきたら、調味料単体でボトル販売も良いのではないか。

「いやー流石拓海さん、助かります。色々算出しやすくなりました。調理法や相談料に、追加報酬出しますね。」

「どーも。じゃあ開店準備でできる事あれば、手伝いますよ。食べに行きたいしね。」

「では遠慮なく、手だけじゃなくお知恵も拝借します。みさとさんには、味の確認もお願いします。」

「はーい!」

「20日後位には店出せると思いますよ。楽しみだなぁ。」

「そんなに早くできるの?凄いね。」

「やり方があるんですよ。」

「号令1つで何でもできるとは、クレスタさんやり手だな。」

「いやいや、それ程でも。」

「出店するなら、魔法協会近くがオススメですよ。レジアスもカレーの美味しさ知ってますからね。あの人が通っていたら、信頼度抜群じゃないかな?」

「それはいい情報ですね。そうしましょう。あの辺りにも候補地があるので、そちらにしますね。そーですかレジアス様もお知り合いでしたか。いやはやなんとも。拓海さんは何者ですか?」

「ただの冒険者ですよ。」

「ただの、ではないでしょう。いや、今はやめときましょうか。開店準備の方が優先ですね。忙しくなりますよ!」

調理工程・一食あたりの材料費・店の席数と回転率・交代要員も含め人員配置・仕入等、次々と決めていくクレスタ。凄腕商人の本領発揮だ。俺とみさともあちこち振り回されたが、あっという間に開店当日。本当に魔法協会の近くに出店だった。やるなぁ。

「開店しますよ!」

扉を開けると、興味津々の大行列。レジアスも部下を伴って並んでいる。暇なのか?今日は半額セール、味をみてもらう日だ。今日の出来で、明日以降が変わってくる。

思った以上に来客があり、嬉しい悲鳴だ。予備も出して、調理も大わらわ。メニューは少ないから対応できるが、増えたとき用に調理工程を簡単にしておかないとかな。

お昼を過ぎても、行列は長いまま。事前告知がされていた事もあり、評判は上々。夕方からの混雑もあったが、材料がなくなったので閉店に切換えた。並んでくれた人には、明日来ても半額になるよう証文を渡しておく。偽造できないようになっていて、一人1枚用意した。

早じまいしたせいか、遅くに来るとなくなると噂になり、翌日も朝から大行列。昨日渡した証文持ってる人も、早くから来てくれた。やはり限定に弱いのだろうか。

後は大丈夫との事で、俺達は開放された。長いようであっという間に過ぎていったこの数日間。白米も貰ったので、家でゆっくりする事にした。

久し振りにギルドに行くと、特Aランクの依頼が受けられる人が居なくて困っていると係の人に泣きつかれた。居ないのかよ。

取敢えず受領して、話を聞く。魔物退治だが、対象が大き過ぎてそのランクだそう。被害者も出ているとの事で、早速向かう。他に同行者居ないので、車でひとっ飛び。その日の内に到着。受理から日数経っていたが、依頼者はすぐ来てくれたと大喜び。寧ろ早かったと喜ばれた程だ。

山からオーガの集団が来て、家畜が襲われているそう。追い返そうとした住人が、大怪我をして断念したとか。既に半分近くの家畜が食べられていて、味をしめたのかよく来るようになり外出もままならないそう。

巣があるなら、根刮ぎ退治しないとだな。早速現場に案内してもらい、周囲を観察していると、お出ましになった。先ずは3体登場。2体みさとが倒したところで、残り1体はそそくさと逃げ出した。見失わない様に後を追い、住まい発見。洞窟で5体追加、全6体はみさとの剣の練習相手になってもらった。あっという間に倒してしまい、洞窟の内部に潜入。家畜や人間のものと思われる骨が散乱していた。

最奥まで行くと、倒した冒険者の物らしき剣や槍・斧等が山積みになっている。その中に、水晶も発見した。呪いやトラップが無いか確認すると、ひび割れた水晶から映像が出てきた。

「私はベルタ…このえ…レジア…大群…きをつ…」

何だこりゃ、関わっちゃいけないやつかな。

何となくレジアスと聞こえたので、聞いてみよう。

(レジアス、少しいいかな。)

(おぅ、何じゃ拓海。)

(洞窟で水晶見つけたんだけど、映像が入っててさ。ベルタって名前とレジアスっぽい名前があったから、関連あるか確認しようと思って。)

(なに、ベルタじゃと?かなり前に魔法の痕跡確認に派遣したリーダーじゃ。ところでおぬし、どこにおるんじゃ?)

(キューブってとこで依頼受けてた。オーガの団体様退治に。)

(成程な。そやつが帰ってこなくて、水晶で映像確認も出来んもんだから、どうしたものかと困っておったとこじゃ。周りに人影はないかの?)

(人骨なら散らばってるよ。水晶と一緒に持って帰ろうか?)

(頼む。他に何か言ってなかったか?魔物の調査に向かっていたのじゃが。)

(聞き取れたのは、大群、気をつけてかな?水晶がひび割れていて上手く再生されなかったからなぁ。)

(それで探せなかったのかもしれんのう。できれば早く見たいんじゃが、帰ってこれるかの?)

(オーガがもう居なければ、依頼終了だから帰れるかな。なるべく早くそっちに行くよ。どこに行けばいい?)

(魔法庁の仕事なんじゃが、おぬしを入れたことないからなぁ。家に来てくれんか、車で。)

(わかった。)

変なのに首突っ込んじゃったなぁ。仕方ないか。周囲を魔法で確認、他のオーガも倒してから依頼者に報告。依頼完了ということで、ギルドに報告後、レジアスの家へ。話は通っていたらしく、中で待っているよう執事に案内された。

暫くしてレジアスが入ってきた。

「待たせたな。知らせてくれて感謝するぞ。早速だが、水晶見せてくれんかの。」

「はいこれ。骨は家畜のも混ざっていてわからないから、取敢えず全て持ってきた。鑑定よろしく。」

「そっちはすまなんだな。頭蓋骨から話も聞けるじゃろ。」

「そんなことできるの?凄いね。」

「先ずは水晶からじゃ。どれどれ。…おぬし、よく再生できたのぅ。」

「トラップ無いか確認したら出てきたんだ。他はしてないよ。」

「成程。んー、聞き取りづらいのぅ。頭蓋骨がいてくれればいいが、別人のなら聞くに聞けないからなぁ。骨も見せてもらえるか?」

ウエストポーチから、大きめの袋を取り出し、広げる。人間の物と思われる頭蓋骨は、10個位。1つずつ手に取り、魔法をかけるレジアス。3つ目が該当の人らしく、話が始まった。

「久しいのぅ、ベルタ。助けてやれずすまなんだ。早速で悪いが、何があったか教えてくれんか。」

『レジアス様、こちらこそ不甲斐なく申し訳ございませんでした。指示通り大きな魔法の痕跡あった所に向かったのですが、魔法陣を描いての召喚魔法だったのです。到着した時には、既にキメラが数体呼び出されていて、更に召喚しようとしていた様子でした。

一先ず後退して洞窟に隠れた所に、オーガの群れがやって来た次第です。今考えたら、オーガ達も本能的に逃げてきたのかもしれませんね。』

「そうか、ご苦労じゃったな。報告感謝する。骨は家族の元に届けるから、安心せい。」

『ありがとうございます。私も、お知らせできてホッとしてます。あの後キメラが何体になったかまでは確認できていないのです。被害が出る前に、対応宜しくお願いします。』

「大丈夫じゃ、任せておけ。安らかに眠るのじゃぞ。」

魔法を解き、静かになった。5人で向かったそうなので、それ以外の頭蓋骨の名前も確認。現場に戻って、聞いてみることになった。

「拓海、序に依頼を受けてくれんかの。」

「キメラ退治かな?いいよ。あの人の遺志でもあるしね。」

「そう言ってくれると助かる。なにせ、これから通常部隊派遣して、間に合うかもわからんからな。」

「なんとかなるでしょ。最終確認だけど、退治すればいいだけ?召喚した人も確認してくる?」

「確認か。人間ならまだしも、魔族だったらおぬしでも太刀打ちできない可能性あるからのぅ。何がしたいのかを確認したいがな。」

「わかった。話が出来そうなら聞いてみるよ。あぶない奴なら、倒した方がいいんだよね。」

「様子見でいいからな、無理はするなよ。」

「了解。」

頭蓋骨に名札付けてから、再度出発。なんて日だ。

その日の暗くなる前には、再度現場に到着。先ずは骸骨の名前を告げて、知ってるかの確認から。全て街の人らしく、以前から居なくなっていた人ばかりだそう。見つかってよかったね。

1つ目の案件は終わったので、次に行こう。召喚魔法は何処でやってたのかな?脳内地図で直様ポイント確認。流石ナビだ、わかってらっしゃる。車で近くまで行けそうだ。早速その方向に向かい、現地確認。もう本人は居ないだろうとは思うけど、足跡辿れるかやってみないとな。

魔法陣って、残ってるもんなんだな。アニメで見るみたいに、光るだけじゃないらしい。しっかり白墨で書いてある。よくこんなもの覚えられるもんだよ。細かい紋様は、アニメで見た感じのまま。余り消えてないってことは、最近までいたのかな?何体召喚したんだ。

人型の足跡は見付からなかったが、大型の何かが移動したような、足跡の流れはあった。あっちかな。

「みさと、何出てくるかわからないから剣も用意しといてね。」

「わかった!」

「ぼくもいるよ!」

「おぅ、ありがとな。図体だけのヤツならいいけどな。頼りにしてるぞ、シビック。」

「久し振りにいい運動になるかな。最近美味しいもの食べてばかりだったしね、ぼく。」

「運動後のご飯が美味しいんじゃないのか?」

「それそれ!楽しみだなぁ。」

「相手の様子わからないんだから、気を抜くなよ。」

「あんまり強そうなのは近くにいないけどね。みさとの練習相手には丁度いいかもよ?」

「やるやる、楽しみ!まだ慣れないからなぁ。」

「みさとは慣れすぎなくてもいいんだよ。程々にね。」

そんな会話をしながら、足跡に沿って移動する。通った跡はわかりやすく、木々が薙ぎ倒されている。てか、大人しく行進してるのか?召喚術者が、しっかり制御できてるらしい。そうなると、何のために召喚したかも確かめないと。話のわかるやつならいいけどね。

足跡辿って暫くすると、大きな建物が見えてきた。乱れた足跡の先に、城のように見える石造り。

今まで街中で見てきたものとは、作りがだいぶ違う。違う文化圏に来たかな?

一度止まって、辺りを確認。魔法トラップや伏兵もいない。入っていいのかな?遠慮無く進むとしよう。

「すみませーん、道に迷った者ですが、一晩泊めてもらえませんか?」

…反応なし。気配はあるので、居ないはずないんだが。

勝手に扉を開けて、中に入る。再度声を掛けようとしたときに、人影が現れた。

「こんな辺鄙なところに来るなんて、何しに来たんだ。街から追い出されたのか?」

「道に迷ったんです。一晩泊めてもらえませんか?」

「いいけど、何もないよ。僕も食事したいくらいだ。」

「食事はありますよ。一緒に食べましょう。」

「用意がいいな。じゃあ、部屋は貸すから食事をくれ。」

「ありがとう。俺は拓海、こっちはみさと、このペットはシビックだ。宜しく。」

「僕はサイノスだ。」

「何処でご飯食べます?」

「実はさ、僕も来たばっかりでさ。」

「え、あなたの住まいじゃないんですか?」

「はっはっはっ、僕も迷ってここに来たからね。まさかこの僕が道に迷うとは、ありえないからなぁ。神のお導きかな?」

「だといいですねぇ。その割にはこの建物綺麗ですね。」

「そうなんだよ。誰か居るかと思って見てきたんだけど、居なくてさ。椅子とテーブルはそっちの部屋にあったよ。行ってみる?」

「行きましょう!お腹空いちゃった。」

「こちらへどうぞ。寛いでね。」

「あなたの家じゃないんですよね?」

「あぁそうだよ。細かいことは気にしない。」

「じゃあそういうことで。」

部屋を移動して、食事になった。みさとのリュックから、色々取出してテーブルに並べる。テーブルと椅子は、埃もなくきれいなものだった。

簡単に食べられるように、サンドイッチメインとドリンクを出す。シビックの希望で肉やポテト等の副菜も出す。テーブルいっぱいに出したところで、忘れてた質問をした。

「ところで、サイノスは一人なのか?連れはいないのか?若しくはテイムしている生物とか。」

「あぁ、全くの独りだよ。考え事していて、ここに着いたからね。」

「そうか。それなら食事は足りそうかな。」

「美味しそうだね。僕はそんなに大食いではないから、6つ位で足りると思うよ。」

「良かった。好きなのをどうぞ。お代わりもあるし。」

「ありがとう、頂くよ。」

一先ず、穏やかに食事が始まった。

「拓海はさ、何しに来たんだい?迷ったなんてことないだろう。」

「人探しの一環かな。サイノスこそどうなのさ。」

「僕のこと聞いちゃう?うふふ。剣の餌探しかな。」

「剣の餌?魔物か何か?」

「そうなんだよ!ちょっと良さそうな反応あったから、来てみたらご馳走だったよ。序に人も巻き込んじゃったけど。探し人はその人だったかな?」

「正直に言うと、キメラを召喚した人が居るらしいから、話を聞きに来たんだ。目的とかね。」

「あぁ、そうなんだ。あのキメラ達は召喚されてたのか。どおりで…」

「その、餌ってことは食べちゃったってこと?人もなの?」

「キメラはそうだけど、人は成行き上しょうがなかったかな。その人、一番大きなキメラに乗ってたからね。

それに聞いてよ、声かけただけで見つかったとか言って襲われたのはこっちなんだから。そりゃ倒すでしょう。食べる気できたからいいんだけどさ。」

「はぁ。怪我がなくて何よりだ。キメラってどれくらい居たの?」

「10匹いるかいないかかな。美味しく頂いたよ、剣が。」

「一人で倒したの、凄いね。召喚者もいると、団体戦になるって聞いてたけど。」

「んー、召喚者が慣れてなかったんじゃないかな?行けーしか言ってなかったし。楽勝だったよ。」

「その召喚者はさ、何か言ってなかった?そのキメラで何かしたいとか。」

「そうだな、首都襲撃とは言ってたけど、できるわけ無いじゃんね。あんな弱いのに。」

「いやいや、あなたが居てよかったです。サイノス、ありがとう。」

「いえいえ、剣のいい餌になったしね。」

「餌か。倒してから食べるの?」

「そうだね、弱ってきたら食べさせるかな。」

「魔物食べてくれる剣て、凄いね。そこら辺で売ってたら怖いけど。」

「流石に売ってないね。僕も貰ったから誰が作ったかまでは知らないなぁ。」

「壊したら大変だね。」

「自己修復機能あるんだよ。まだ20年位しか使ってないから、壊れたの見たことないけどね。」

「そーなんだ!なかなか大きな魔獣退治の依頼がないのは、サイノスのおかげかな。」

「僕じゃなくて剣の方ね。よく食べるんだよ、コイツ。」

「うちのシビックみたいだな。今は普通のご飯食べるからいいけど、一緒に暮らす前は大食漢だったらしい。」

「ちびドラゴンも珍しいよね!どうやって捕まえたの?」

「餌で釣ったの。」

「ぇ。それだけ?」

「うん。今みたいに、一緒にご飯食べてるよ。」

「大人しいと可愛く見えるよね。僕も欲しいかも。」

「偶々見つけただけだから、他のも同じ様になるかはわからないなぁ。どうなのシビック。」

「無理じゃない?」

「やっぱそうか。」

「待って、言葉分かるの?ありえないけど。」

「分かるよ。珍しいのか、内緒にしておいてね。」

「はー、こりゃびっくりだ。何者?」

「お互い様でしょ!ただの冒険者だよ。」

「そういう事にしとこうか。ご馳走さま、美味しかったよ。」

「サイノスはこの後どこ行くの?俺達は首都に戻るけど。」

「特に行く宛はないけど。また餌探しかな。」

「良かったら、一緒に来てくれないかな?レジアスに説明したいけど、信じてもらえないと困るからさ。」

「レジアスって、あのレジアス?魔法庁長官の?何やってんの君。」

「成り行きでさ。お願いできるかな?」

「…僕が行っていいのかな。そんな凄い人のとこ。」

「一緒に説明してくれよ。すぐ帰すからさ。」

「首都ってさ、何日かかると思ってんだい?すぐって無理でしょ。」

「内緒にしてくれれば、1日で着くから。」

「やっぱりやめとくよ。」

「じゃあ、まだ行かないで、ちょっとだけ待ってて!」

(レジアス、ちょっといいかな。)

(何じゃ拓海。)

(キメラの一件は方が着いたんだけどさ、事情を知ってる人を連れていきたいんだ。いきなりだけどいいかな。サイノスって人。)

(ほぅ。その人が退治したのか?)

(そうらしいんだ。俺達が着いたときには、終わってた。

信じてもらえないかも知れないけど、剣が食べたらしい。)

(おい、サイノスはそこまで喋ったのか?)

(何、知合い?)

(何か美味いものをあげたんじゃないかの?)

(ご飯は一緒に食べた。サンドイッチだけど。)

(成程な。カレーは出してないか?)

(無闇矢鱈には出さないよ。)

(よし、来れば美味いものが食べられると言えば来るじゃろ。連れてくるんじゃ。)

(わかった。)

「サイノス、レジアスが美味しいもの用意しとくって。行く?」

「行く!さぁ行こう。首都の美味しいものはなんだろなぁ…」

こんなにアッサリと来るとは。扱うコツを知っているし、知合いなんだろう。気が変わらない内に、移動しよう。

外に出て、ウエストポーチから車を出す。

「サイノスは後ろに乗ってね。」

「乗るって、どうやって?高くて登れないよ。」

「あぁごめん、このドアから中に入ってね。」

「へぇ、そういう乗り物なのか。馬居ないね。」

「馬居なくても走るから安心して。」

透明化の魔法をかけてから、レジアスの家に向かう。

「こんな早いの?壊れない?飛んでるよね。」

「壊れないから、大丈夫。さっきも言ったけど、この事は内緒にしてね。」

「言ってもさぁ、信じて貰えないでしょ。乗ってる僕でも未だに信じられないし。」

「そんなもんか。じゃあ、そういうことで宜しく。」

レジアスには、夜中に着くかもと知らせておいた。寝室も用意しとくと言ってくれた。あの家広いから、急な来客でも動じないんだな。


着いたのは本当に夜中だった。一先ず入れてもらい、レジアスにサイノスを紹介する。

「兄貴、元気じゃったか。」

「勿論。お前は、だいぶ老けたけど元気そうだね。」

「はっはっはっ、好き勝手やっておるよ。疲れとるじゃろうが、話聞かせてくれんかの。」

「美味しいものあるんだろうね。」

「この時間でも入るのか?いいじゃろ、直ぐ用意させよう。用意できるまでは、こっちでお茶でもどうじゃ。」

「お茶菓子も出してね。」

「変わらんのぅ、兄貴は。」

「ご飯作るなら、新メニューも教える序に手伝ってもいいかなぁ?」

「みさと、疲れてんじゃないの、大丈夫?」

「ご飯作るくらい大丈夫だよ、たっくん。行って来るね。」

「おぉ、またみさとの料理が食べられるとは。兄貴のおかげかの。」

「感謝してよね。美味しい料理も楽しみだな。」

「じゃあ、待ってる間に今までの経緯を話してもらおうかの。」

ざっくばらんに、経緯を話すサイノス。本当に、散歩にでも行ってたかのような軽いノリ。

対峙してないから強さはわからないけど、数体のキメラ相手にただのご飯て…

「その剣は長持ちするのぅ。流石自己修復機能あるだけある。」

「ご飯も食べてるしね。元気元気。」

「兄貴が剣を折らずに使えてるってことは、かなり頑丈じゃな。」

「20年位使ってるって言ってたよね。凄いね。」

「おいおい、200年の間違いじゃろ。」

「だってさぁ、初対面の相手にそんなこと言ったらびっくりされるでしょ?ちょっと普通に聞こえる程度にしただけだよ。」

「200年⁉」

「そうじゃ。私がベゼルから魔法を教わった時に、兄貴は剣を貰ったんじゃ。」

「ここもベゼル繋がりか。納得。」

「何、君もベゼル知ってるの?何貰ったのさ。」

「俺は魔法、みさとは剣かな。物理的にじゃなくて、不自由無く使えるようにしてくれた。」

「物も貰ったじゃろが。あんないい杖を。」

「使わないからわからないよ。あげたでしょ?」

「うむ、あれはいい杖じゃ。」

「じゃあみさとちゃんは剣士か。あんなちっちゃいのに。」

「だから戦わせたくないんですよ。」

「武術大会出たんじゃろが。」

「腕試しだよ。ベゼルに言われただけで、実戦してなかったから。」

「あはは、喧嘩しないほうが良さそうだね。味方のうちは心強いかな。」

「サイノスも強いでしょ。」

「兄貴は強いぞ。そこにあんな剣貰ったもんだから、誰も勝負にならん。魔獣相手が丁度じゃて。」

「言われてみれば、人相手に暫くしてないなぁ。」

「お待たせ!教えてたからいっぱい作っちゃった。」

オーパとセプターと一緒に、ワゴンに乗せて美味しそうなものを運んできたみさと。お疲れ様。

メニューは、チーズ入りハンバーグ・カレードリア・オムカレー・ポテトサラダ・トマトとアスパラのチーズ焼き・唐揚げ・コーンスープ。麦ではなく白米で用意されてる。

「何これ、ちょ〜美味しそう!食べよう!」

「流石みさとじゃ、新メニュー教えてくれてありがとう。お前達覚えられたかの?」

「お任せください、レジアス様。」

「冷めないうちにどうぞ。」

「「頂きまーす!」」

夜中だというのに、この香りには勝てない。運転してたから、お腹減ったんだよ、うん。

サイノスは、さっきから美味しいしか言ってないし、レジアスは新メニューにご満悦。

俺はオムカレーから。中のご飯もカレーピラフになっていて、美味しい。それにしても、レジアスの家の食材は豊富だ。

「うま~い!ねぇみさと、僕の奥さんにならない?」

「おい何いってんだ、みさとは俺の奥さんなの!」

「何だぁ。拓海が飽きたら、僕んとこおいでね。」

「兄貴、人の嫁さんにちょっかい出すんでない。本当に変わらんのぅ。それにしても、やっぱり美味いのぅ。

そう言えば拓海、最近出来たカレーを出す店じゃが、やはりおぬしが絡んでいるんじゃろ?」

「バレた?そうなんだよ。ちょいちょいみさとがメニュー増やす予定で契約してある。今出した料理も、そのうち並んでるかもよ。」

「魔法協会の近くに出したのも、そのせいか。うちの奴等もあの店ばかり行っておるわい。」

「後で、ソースや醤油も出す予定みたいよ。人気出たら、ボトルで売るように提案してある。」

「醤油とな?何だそれは。」

「用意できるけど、今日のメニューには合うかな。朝食にベーコンエッグ出すならわかりやすいかもね。」

「よし、朝ごはんはそれにしよう。教えてくれるんじゃろな?」

「みさとがね。ご飯も用意しよう。てか食べられるの?今こんなに食べてて。」

「僕は入るから大丈夫だよ。レジアスはおじいちゃんだからどうかなー。」

「美味しいものは入るから心配するでない。何なら、魔法でどうにかするわ。」


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