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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫


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お試しにも程がある 88

 「こんなもんかな。

 工房長、検品宜しく。」

 製作に入ると、デックスは凄い集中を見せた。

 時間はあっという間に過ぎていき、完成した剣をあらゆる方向から見定める。

 近くに来た工房長に、台に置いて剣を渡す。

 「全く、嫌なくらいいい腕してるな。

 助かったよ。」

 「これで最後だからな。

 後は頑張ってくれ。」

 「もう一度ここで働く気はないか?」

 「ある訳無いだろ。

 俺は自由の身なんだ。」

 「あぁ、そうだよな。

 これは駄賃だ、持ってけ。」

 そう言うと工房長が、硬貨の入った袋を出した。

 「おぅ、貰っとくぜ。」

 デックスは中身も見ず受取ると、そのまま扉から出て行った。


 外で待っていた俺達の元に来て、一息ついた。

 「あー終わった終わった。

 待たせたな、帰ろうか。」

 「お疲れ様、デックス。」

 その会話を聞いていたルクラは、慌てて止めた。

 「おいおい、今からじゃ夜中になっても家に着かないじゃないか。

 俺んとこでいいなら泊まってけよ。」

 「ありがとなルクラ、今日は大丈夫だ。

 な、拓海。」

 「勿論だよ。

 帰ろうか。」

 「それはいいけど。

 何かあったら、俺んち来いよ!」

 工房を出た俺達は、ルクラに手を降ってから帰路に着いた。

 夜でも明るいこの街を出て、灯りが遠くなった頃。

 ウエストポーチから車を出し、皆で乗って帰る。

 マーキングはしてあるから、迷わず到着。

 家に入り灯りをつけ、椅子に座ってやっと落ち着いたようだ。

 「今日は助かったよ、ありがとな。」

 「こちらこそ、街中見られて楽しかったよ。

 預かってた荷物出すね。

 …2つ目いる?」

 「は?どういう事だ?」

 「内緒だけど、俺のウエストポーチは入れたら2倍になるんだよ。

 あ、魔法ね。

 だから、同じ荷物がもうひとつあるけど、置いてっていい?」

 「ガッハッハ、そりゃ助かるわ。

 ありがたく貰っとくぜ。

 じゃあ、晩飯の支度でもするか。」

 「デックスさん、疲れてるんじゃない?

 出来合いで良かったら、ご飯出せますよ。」

 「何だって?

 何処にあるんだよ、みさと。」

 不審顔のデックスに対し、みさとはリュックを出す。

 「この中でーす!」

 「それも魔法か。

 何でもありかよ、全く。

 いや、疲れてるのは確かだ。

 作らなくて良いなら助かるよ、みさと。」

 「じゃあ、色々出してみるので、お好きなのどーぞ。」



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