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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫


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お試しにも程がある 87

 「おぅ、来てやったぞ。」

 工房の入口の扉を開け、デックスは言い放った。

 「遅いぞ、何処ほっつき歩いてたんだ。

 さっさと作れ。」

 工房長が顎をしゃくる。

 「俺はもうここの職人じゃねえんだよ。

 何を根拠に作れって言ってるんだ。

 作らねぇぞって断りに来たんだよ!

 じゃあな。」

 言うだけ言って帰ろうとするデックス。

 「何勝手なこと言ってる。

 客からの要望なんだから、早く作れ。」

 「何のことだ、俺が作ったわけではないから知らん。

 お前の息子の銘で売った剣だろうが。」

 「お、お前が作った事は分かってるんだ。

 いいからやれ!」

 デックスと工房長が睨み合う。

 他の職人たちは、一歩も動けない。

 

 「まぁまぁデックスさん、ちゃちゃっと前みたいに作ってくださいよ。」

 工房長の息子・トレジアが、何も無かったかのように口を出してくる。

 「「お前は黙ってろ!」」

 デックスと工房長の2人からどやされ、後ずさりする。

 腰を抜かしたのか、尻餅までついていた。

 やはりと言うべきかついにと言うべきか、拳で語り合う時間になってしまった。

 両者一歩も譲らず、鈍い音が響く。

 先に工房長が足をふらつかせ、よろけ倒れる。

 手元にあった工具を掴むと、そのままデックスに殴りかかった。

 周りはびっくり、デックスも動けない状態。

 惨事が繰り広げられると思いきや、みさとが何事もなさげに手を出した。

 「おじさん、武器はなしだよ。

 危ないでしょ?」

 そう言うと振り下ろそうとしているスピードの乗った工具を、片手で止める。

 止められた工房長は呆気にとられ、何が起こったか理解できていない。

 「あ、え?」

 みさとを見上げ、再起動して工具を取り戻そうとするが、びくともしない。

 「そもそもこれって仕事道具でしょ?

 人に向けちゃ駄目だよ。」

 その光景を目の当たりにしたデックスは、声を上げて笑い出した。

 「ガッハッハ、みさとは強ぇな!びっくりだ。

 まるで子供扱いかよ。」

 工具を取り返すことを諦めた工房長が、そのまま座り込んだ。

 「お前の腕には勝てないんだよ。

 なぁ、作ってくれよ。」

 デックスは溜め息混じりに答えた。

 「最初から素直にそう言えよ。

 今回だけだぞ、次は無いからな。」


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