お試しにも程がある 83
「いやぁ、すまんな。
お茶までご馳走になって。
街まで買い物に行くのを忘れてたみたいだ。」
シビックの声におやつを出したみさとを見て、デックスはお茶にしようと住居部分に戻ってきた。
あちこち探すが、お茶の用意ができるセットがないようだ。
「あれ、おかしいな。
どこに行ったかな。」
「私の手持ちで用意しますよ。
ちょっと待っててくださいね。」
見かねたみさとが、デックスに声をかける。
リュックから手早くお茶のセット、お茶菓子も人数分出す。
ティーポットに茶葉を入れ、お湯は俺が魔法で沸かしたものを入れる。
「すげぇな、魔法って。
ありがとう、美味そうだ。」
シビックの前には、多めにおやつ出しておいた。
「デックスは、ひとりで住んでるの?」
「あぁ、そうだ。
集中すると周りが見えなくなる。
飯も忘れるくらいだ。」
「危険ですね、それ。
だから買い物も忘れるんだ。
ちゃんと食べないと、倒れますよ。」
「気を付けてはいるんだがな。
この後街に買い物も忘れないうちに行くよ。」
「折角だから、俺達もついて行って良いですか?
街の様子見たいんですよ。」
「あぁ、一緒に行こうか。
ちょっと遠いから頑張ってくれ。」
デックスはニヤニヤしている。
ん?街までだよね?歩いていくのかな。
「そんなに遠いの?
こっそり近くまで車で行く?
周りに見られないように近くまでしか行かないけど。」
「それは良いな。
買い物はいつも泊まりがけなんだ。」
「そんな遠い所になんで住んでるんですか?」
不思議そうにみさとが質問する。
「実験が自由にできる広い場所が欲しかったのさ。
周り、全く家が無いだろ?不人気地帯だからな。」
「そういう選び方もあるんだ。
流石職人ってとこかな?」
「そう言ってくれると嬉しいな。
創作は試さないと前に進まん。」
「爆発音するのか、何処に行くかわからないか、あまり迷惑にならないようにかな。
気持ちはわかるよ、うん。」
ひょんな所で意気投合。
笑顔で見守るみさと。
「そういえば、通貨って向こうと一緒かな?
折角行ったのに買い物出来ないのは寂しいよ。」
「そうだな。
デックス、俺達が持っている通貨はこういうものだが、ここでも利用できるか?」
金貨・銀貨・銅貨を一通り出してみせる。
「これか、同じだから安心しろ。
買い物でも食事でも宿屋でも、どこでも使えるぞ。」




