お試しにも程がある 82
「ほぅほぅ、これはこれは。
何とも面白いな。」
上空で向かう方向を指示してもらい、森を抜けたら地上を走る。
初めて乗ったデックスは、キョロキョロしっぱなし。
俺も地上は久々だから、ウキウキしてる。
地面がデコボコしている感覚も、飛んでいる時には感じないから走ってる感じが増す。
周りはほぼ家がなくて、目的地まで迷わずに済みそう。
道らしきものもないため、そのまま真っ直ぐ進む。
運転中後ろからデックスが俺の操作する様子をまじまじと見ている。
あくまでも興味は車にのみあるようだ。
あっという間に目的地に到着。
停めてからまたしても車のチェックをしている。
気になるようなので、ボンネットも開けた。
さっきまで走っていたので熱いよと言ったのに、手を入れようとする始末。
下も見たいということで、ジャッキアップして少し浮かせた。
ドワーフは種族として小柄だが、ガッシリしているので下に入れるかは微妙な高さだった。
仕方がないので背板を出して入りやすくして、もう少し車を高く、今度は魔法で上げた。
「こういう道具は便利だな。」
キャスターの4つ付いた板を見ると、迷うことなく背板に仰向けに乗り、車の下に潜る。
暫くすると、興奮醒めやらぬ感じで言ってきた。
「これは、分解できないか?」
「えっ、分解?それはちょっと…」
「そうか、残念だ。
見せてくれてありがとう。」
まだ車はあるが、迂闊にあげられないしね。
「せっかく来たんだ、俺の工房も観てってくれ。」
「ありがとう!
じゃあその前に車をしまうね。」
車をウエストポーチに入れ残ったジャッキも背板もしまう。
「何とまぁ、お前さん便利なもの持ってるな。」
「魔法だしね。
便利に使ってるよ。」
「俺は手作りで産み出すことを楽しんでるんだ。
まぁ観てってくれよ。」
そう言うとデックスは、家に入っていく。
大きい家で、ついて行くと家兼工房になっていた。
工房部に更に扉があり、入ると色々なものが置いてあった。
「最初は時計を作ってたんだが、もっと大きくて生活の役に立つものを作ってみたくなったんだ。」
周りを見ると、色々部品だらけ。
壁掛け用の時計や、細工の細かい置き時計はわかる。
作りかけのものは何が何やらサッパリ。
大小様々なものが散乱している。
「武器を得意にしてるやつが多いけど、俺は武器が苦手でよ。
さっきの車と言うやつみたいな便利な物作って、皆を驚かせたいんだ。」
ニコニコ話すデックス。
「今作っているのは、街中の移動を簡単にできるものさ。
1人乗りで、簡単に動かせて、荷物も運べるもの。
自力で動かすか、魔石を動力源に使うかは検討中だ。
どうせなら電気という手もあるがなぁ。
さっきの車ってやつほど高性能なものは考えてなかったが、実物があるとできるんじゃないかと思うよな。」
成程、自転車かスクーターか、はたまた電動キックボードか。
一から作るのは大変だよね。
「モーターの仕組み自体はあるが、そこまで出力の大きいものにしようと思うと、どでかい装置になるのさ。
それじゃ使いづらいから、小型化したいんだよ。
電動にして外で使うために発電機付けないとだが、これまた大きくなっちまうんだよな。
でも、どうせならそれも軽量化して出力アップをしたいし。
自力で動かす構造は比較的簡単だが、トロッコの様な無様なものは作れん。
操縦性も悪いしな。
涼しい顔して、小さな力で動かせるものでないと…」
話しだしたら止まらないデックス。
欠伸し出したシビックが、物申した。
「僕つまんない。
みさと、おやつ頂戴。」




