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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫
8/294

お試しにも程がある8

「湖が見えるぞ。大分遠くまで来た感じだね。クレスタさん一休みするかい?」

「見渡しいいし、休むには良いんじゃないかな?もう少しで目的地だし。」

「念の為一回り、見てくるね。シビックも来てくれる?」

「いいよ、みさと。」

今は湖を目指している商人の護衛中。なんでも湖には、香りの良い草があり買付に行くとのこと。首都からは2つ街を抜け、ラルゴという街に来ている。首都のインフィニティからは、既に30日以上経過している。馬車での移動は、やっぱり時間かかるな。

特に野盗や魔獣も出ず、只々遠いとしか言えない旅。野営が上手になった事が収穫かな。首都では収穫できない草だから買付に来るので、売ると結構な値段になるそう。どんなものかは知らないが、帰ったら買ってみようか。帰りも同じ位かかるんだよな。車で帰れたらどんなに早いか。かったるい。

「あなた達のおかげで、かなり順調に旅ができたよ。盗賊も獣も出ないなんて初めてだ。買付終わったら、帰りもよろしくね。」

クレスタさんは、笑顔でそう告げた。そりゃそうだ。俺の盗賊よけの結界とシビックの威圧で下手なモノは寄ってこれないからな。さっさと帰りたいものだ。


最終目的地は水辺にあった。干した草と聞いていたが、海苔に見える。何となく潮風を感じた。湖なのに?

「この大きな湖は、塩辛いらしいよ。珍しい魚もいるらしいけど、下手に入ると神様の怒りを買って引きずり込まれるって言い伝えがあるくらいさ。」

「塩辛い?海とは言わないのか?」

「海って何?大きな水があるところは湖でしょう。子供でも知ってますよ。」

「なるほどね。遠くが見えないくらい広くても湖なんだ。面白いな。」

「商品仕入れたので、帰りましょう。これは良いものだ。高く売れるぞ。」

直ぐに帰るようで有難い。何でも乾燥してる商品だから、雨に降られたくないそうだ。荷馬車の半分以上荷物を載せ、大きな布も被せて落ちないようにしている。帰りは荷崩れしないように荷台にクレスタが乗る。馬車は俺が引き、隣にはみさととシビック。ちょっとズルをして、少しだけ早く帰った。それでも慎重にした為、15日くらいかかった。

「なんだか帰りの方が早く感じたね。気がせいてたかな。」

「そうかもしれないですね、クレスタさん。お店ももう少しで着きますよ。」

「君は物覚えがいいねぇ。一度来ただけなのに覚えてるとは。」

「よく言われます。道覚えるの得意みたいで。」

なーんて、ナビのおかげだけどね。みさとは相変わらず初めて来たような顔でキョロキョロ楽しそうにしている。店まで無事に届けたら、依頼完了。やっと家に帰れる。荷降ろしも手伝い、全て終わってからギルドに完了報告に向かう。

休む気満々でギルドに向かうと、レジアスから来て欲しいと個人的な伝言が待っていた。なんだろう。そういえばお互いの連絡手段が無い事に気付いた。魔法でできる方法を考えるとしよう。

魔法協会に向かうと、早速部屋に案内された。少しするとレジアスがやってきた。

「待たせたな。」

「いえいえ。どうしたんですか?あの魔法はもう出来るようになったから次の魔法の催促ですか?」

「それもしたいとこじゃが、今回は依頼じゃ。人探しして欲しい。」

「珍しいですね。人探しぐらい魔法でどうにでもなるでしょうに。」

「それができないんじゃよ。エルフの国に派遣した者が、到達したか迷子かもわからん状態じゃ。」

「あらまあ、そら大変だ。連絡用の水晶とか持たせてないんですか?」

「もちろん持たせとる。近くで倒れてる様子が見えたのだが、周りに見えるのが森しかなくて見当がつかん。しかも国境近くなのか、エルフの魔法の影響らしくうまく探せないんじゃ。おぬしなら探せるかと思ったのでな。」

「それは魔法協会の依頼ですか、魔法庁の依頼ですか?」

「私個人の依頼じゃよ。探しに行けるなら行きたいが、いつまでかかるかわからんとなると離れられん。」

「さっき水晶渡してあるって言ってましたよね。どうやって映像確認したんですか?」

「対になる水晶からじゃ。見てみるか?」

「是非。一緒に近辺の地図も見たいです。」

レジアスは、袖から水晶と地図を出した。便利に使っているようで何よりだ。水晶の映像では、確かに倒れてる人と木々の鬱蒼とした森しか見えない。

「これはいつの映像です?」

「今現在じゃ。倒れてるのを見つけたのは、今朝方。まだ助かるといいのじゃが。」

「地図に出せるかな。…お、上手く行った。確かに国境手前ですね。」

「おぉ、流石じゃな。この場所だと40日位かかるか。」

「俺達に捜索させて貰えるんですよね?方法問わなければ、10日もかからないかも。」

「何?本当か。」

「例の車で行くので、二人だけで行きますけど。不審者に思われるかな。」

「それなら私を連れて行け。」

「不在にできないんじゃなかったのか?」

「そんな短期間ならどうにでもなるわい。あれには乗ってみたいしな。」

「連れて帰る人にも口止めして下さいよ、全く。」

「直ぐ申送りしてくるから、今日中に出ようかの。」

「じゃあその間にできるだけ準備しておくよ。ここに集合でいいのかな?」

「10分もしない内終わるから、ここで待っててくれんか。何すぐ終わるから安心しておれ。」

「ワガママな爺さんだ。ここで出来る準備だけするよ。」

直ぐ様水晶に向かって話出すレジアス。聞いていると、あまり細かい指示はしていない。大丈夫なのか?

「待たせたの。さぁ行こうか。」

「屋上ってあるかな?車出せるくらいの広さ欲しいけど。」

「屋上か、広さは十分あるぞ。早速行こう。」

見た目からは想像できない速さで、屋上へと向かった。後についていく俺達も小走りで続く。元々高い階層に部屋があったので、それ程多くの階段は登らず済んだ。

ウエストポーチから車を出す。乗るのは久し振りだなぁ。俺も楽しみだ。リュックの中の食料も十分あるし、ナビが案内してくれるから大丈夫だろう。透明化の魔法も忘れずかけてと。

「ほほぅ、不可視化の魔法か。バレると面倒だしの。」

「レジアスは、後ろの広い席座ってね。窓からあまり乗り出さないように!落ちたら知らないからね。」

「ホッホッホッ、わかっておるわい。念の為飛行用ネックレスは着けとるから心配するな。」

「あっても心配だよ。スピード出すからね。いざ、出発!」

屋上から空中に飛び出す車。助手席のみさととシビックは静かだが、レジアス五月蠅い!

「おぉ〜、本当に飛んどる!自分で飛行魔法使わんのに飛んでるとは、凄いのぅ。ヒャッホゥ!」

「子供か!でも、初めて飛んだ時は俺もそうだったかも。」

「何回目でも楽しいよ。」

「それは良かった。俺は運転も楽しんでるから、何時でも楽しい!」

「お前等仲いいのぅ。」

「そーなんですよぅ。何時でも一緒ですしね。」

「ご馳走様だな。ところで、並走出来るか試したいんじゃが、どうかな?」

「置いてかれてもいいなら、どーぞ。拾ってやらないよ?」

「怖い怖い。レジアスさんやめた方がいいよ。メーター振り切ってるし。」

「メーター?何だそれは、何の機械じゃ?」

「この車がどれぐらいの速度で走ってるか計測する機械だよ。今は…180km/h位かな。このまま進めば、夜には着くみたいよ。」

「夜じゃと!なんとまぁ。おぬしに任せて正解じゃったわい。」

「邪魔されなければね。」

「たっくんそれってさぁ、それ以上動かないだけじゃないの?アナログ表示にしてるでしょ。」

「何の事かな。デジタル表示なんて味気ないモノ好きじゃないだけですが。スピード誤魔化すためのアナログ表示ではございません!」

「もう好きにして。ここなら事故らないでしょうし、早く着くに越したことないでしょ。」

「そうそう、みさともわかってきたねぇ。ご飯は勝手に食べてていいよ。お腹空いたら声かけるし。」

「はーい。ドリンクだけホルダーに置いとくよ」

「ありがとう。」

そんなこんなで、快適ドライブは始まった。


シビックは暇になると、車と並走して飛ぶ遊びをしてる。同じ事をしたくなったらしく、レジアスも結局チャレンジした。アイテムで飛んではいるものの、スピードが追いつかずシビックの尻尾に捕まる有様。それでも楽しそうだった。

「これはすごいのぅ、目も開けられん。車という囲いがある方が楽じゃわい。」

「だから言ったじゃん。大人しく座っててよ。広くなるから寝転がるのも出来るよ。」

「昼寝してる内に着きそうじゃな。そろそろ小腹が空いてきたわい。」

「何食べますか?色々出せますよ。」

「俺サンドイッチね。」

「ぼくはお肉挟んであるやつ。」

「最近流行ってるチーズの入った物あるかな?あれは美味いのぅ。」

「ありますよ!ハムチーズサンド、チーズコッペ、手作りですけどチーズケーキもありますよ。全部試してみます?」

「そんなにあるのか、頂こう。」

「みさと、俺にもチーズケーキ取っといてね。」

「ぼくももちろん食べるよ!」

「皆で食事なら、落ち着いたとこで食べたいね。」

「今はしょうがないよ。運転しながらでも、手で持てれば食べられるし。」

「今度ハンバーガーでも作ってみようかな。」

「そういえば無かったな。それは楽しみだ。」

「何かはわからんが、お相伴に預かるぞい。」

「かぶりつくと美味しいですよ。ついでだから、ポテトもつけるか。」

「セットみたいだね。シビックにはいくつ用意したらいいかな。」

「いっぱい食べるよ、任せて!」

和やかな食事は、まだまだ続く。


周りが少しずつ暗くなり、黄昏時。

「目的地近いよ。降りてみますか?」

「もう着いたのか!森の中でも飛べるのか?」

「飛べますけど、地面をそのまま走るだけですよ。森の中行きますね。」

急降下して、着陸しつつもそのまま走行。スピードは落とし、ライトで照らしながら目的地に向かう。レジアスも広範囲を明るく照らす魔法で、周囲を確認している。ナビの目的地で、お目当てを見つけた。車を留め、倒れている人に駆け寄る。

「ビスタ、しっかりしろ、大丈夫か?」

「昏睡の魔法ですかね。この辺にトラップでもあるのかな。」

「取敢えず、連れて帰ろう。他に連れもいた筈じゃが、見当らんなぁ。」

「先ずは車に乗せましょう。みさと、後ろ開けて。」

「はーい。」

寝かせられるように、後部座席が広くなってる。何でも載せられるようにして良かった。連れて帰る人が増えても大丈夫そうだ。

レジアスは水晶を回収してから、車に乗り込む。その後直ぐに魔法解除に取り掛かる。意識が戻ったようで、目を開けた。

「あれ、父さん。どうしたの…」

「元気そうで良かったわい。お前は倒れておったのじゃ。他の者はどうした?」

「彼奴等は偽物だったらしい。そいつらになにかされた所までしか覚えてないけど。」

「おかしいのぅ、うちの職員の筈だが。」

「途中で気づいたんだけど、耳尖ってた。」

「最初からなのか途中からなのかはわからんが、入れ替わってた可能性あるのう。」

「会話は普通にしてたよ。…あぁ、途中から口数少なくなってたのはそれかぁ。なる程な、気付かなかった。」

「身近な者に化けるのはバレやすいんじゃがなぁ。よっぽど上手いのか、お前にも分かりづらくなる魔法かけられてたか。どちらもされてたかもしれんのぅ。以前から、エルフの国は結界がありなかなか辿り着かないと言われていたからなぁ。まだまだ知らないトラップもありそうじゃ。」

「元の人たちはどうしたんだろう。無事だといいんだけど。」

「気付いた辺りまで戻ってみるか。覚えているかの?」

「多分大丈夫。ただ、時間かかるね。」

「それは気にするな。地図で示せるか?」

「おそらくこの辺。方向感覚鈍らせられてたらおしまいどけとね。」

「拓海、出番じゃぞ。わかりそうか?」

「無茶振りにも程があるでしょ。あ、はじめまして、星野拓海と言います。因みに、いなくなった方々は連絡手段とかないんですか?」

「ご丁寧にどうも、ビスタです。逸れるとは思ってなかったからなぁ。」

「さっきみたいに水晶とか目印になるものあると良かったけど。広域探索で体温くらいの温度のもの探してみるか。」

「地図のこの辺じゃぞい。」

「ん?3つでゆっくり動いてるよ。これかな?纏まって移動してる感じ。」

「3人だったからそれかも。凄いなぁ。」

「早速行くかの。それからビスタ、今までもそうじゃがこれから見るものも他言無用じゃぞ。わかったな。」

「あぁ、何かするんだね。わかった。」

「拓海、頼むぞ。」

「行きますよ。」

地図的には、森の手前辺りが目的地。上空に抜けて、すぐに目的地に着いた。

「何したかは聞かない方が良いのかな。理解できないだろうけど。」

「その方が賢明じゃな。連れのものを探すぞ。」

周りを照らしながらゆっくり探索。動いている物影3つ発見。わかりやすくて良かった。

「あれかな?降りますよ。」

「あの人達だ。無事そうで良かった。」

近付いてみると、只々目的地に向かって歩いている様に見える。俺達のことは目に入っていなさそう。何処かに向かうよう魔法をかけられているのか。

「なぁレジアス、魔法に慣れてない人員選択したのか?みんなひょいひょいかけられてる気がするけど。」

「相手がエルフなら仕方あるまい。私やおぬしならいざ知らず、アイテム頼りで弱い魔法しか使えないものにはのぅ。」

「そんなもんか。取敢えず静かにさせて、帰ってから魔法解除でどうだろう。」

「それが良かろう。眠らせてから運ぶとしようか。」

レジアスは事も無く3人に睡眠の魔法をかける。その後車に積込み、夜のドライブになった。

「10日も要らなかったのぅ。早くて助かったぞい。また屋上に止まってくれんか。」

「わかった。皆は寝てて大丈夫だよ。みさと、毛布出してあげて。」

「はーい!ドリンクも渡しときますね。足りなかったら言ってください。」

「流石、何でも出てくるのぅ。助かるわい。」

「朝には着くと思うけど、今のうちゆっくりしといてね。言い訳はレジアスに全て任せるから。」

「おぅ、任せとけ。礼も弾むぞ。」

「それは楽しみだ。帰ったらしばらく休もうね、みさと。」

「仕事続きだったからね。そうしよう。何か美味しいもの作ろうかな。」

「俄然楽しみになってきた!早く帰ろう。」

「まだ仕事中なんじゃがなぁ。私も食べに行っていいかのぅ。みさとの出すものは美味いからなぁ。」

「どーぞどーぞ、魔法協会からじゃ遠いけど、お待ちしてますよ。」

「拓海、迎えに来てくれていいんじゃぞ。」

「言っとくけど、街中で車は出せないからね。歩きか馬車と思っててよ。また屋上から飛んでいいなら、家まで飛べるけど。首都でもその為の結界とかないから楽だよね。」

「考えるべきなのは分かっているんじゃがの。どうしたもんか。屋上は好きに使っていいぞい。」

「もう少しセキュリティ考えた方がいいんじゃないかな。出入り自由ってザル過ぎでしょ。」

「屋上は、決まった魔法使える者しか開かないようになっておる。今のところ私くらいじゃが、おぬしならできるじゃろ、拓海。」

「高い評価有難いですね!連絡手段も考えないとと思ってたんだけど。念話とか出来るのかな?やってみていい?」

「ほぅ、面白そうじゃな。私も試したいぞぃ。」

(おーいレジアス、聞こえる?)

(おぉ、聞こえるぞ!私の声も聞こえるかの?)

(お、成功かな。聞こえるよ、良かった。次回からは一声かけてからギルドに依頼してね。今回は偶々立ち寄る用事があったから良かったけど。)

(わかった。じゃあ屋上利用は声かけた時に利用出来るようにしとくぞぃ。通常は入口から入らないと、周りからは不審に思われるでな。)

(ありがとう、そうするよ。)

「こんな感じでどうかな?レジアス。」

「バッチリじゃな。これは楽でいいわい。他の奴とも使えるよう研究してみるかの。」

「本当に研究熱心だね。頑張って。」

レジアスの隣で、ビスタは既に寝息を立てていた。


空が白み始めた頃、屋上に到着。3人とビスタも丁寧に下ろし、レジアスの部屋に連れて行く。ビスタは寝かせたままにして、3人の魔法解除に取り掛かる。

「エルフのかけた魔法は厄介じゃの。何がかかっているかわからないから、解除するだけでかけられた魔法の解析が出来ん。」

「そうなんだ。エルフの方が、魔法沢山使えるんだね。」

「まだまだ知らない事だらけじゃ。おぬしならわかるかの、拓海。」

「んー、ちょっとやってみる。」

ナビさん、出番ですよ。これは何がかかってるかわかる?

『家に帰る魔法と思われます。』

自宅に帰る魔法かぁ。案外親切だな。てことは、殺すつもりはなかったってことか。

「家に帰る魔法みたいよ。ちゃんと生かして帰すつもりはあったらしいね。」

「そんな魔法があるのか。それ程国に入れたくないのかのぅ。」

「ビスタさんは、レジストできたって事かな?」

「魔法耐性のアイテムは持たせているが、万能では無かったようじゃの。」

「ま、無事に帰れて良かったね。そろそろ帰ってもいいかな?」

「助かったわい、ありがとうな。そうそう、美味しい食事できた頃に迎えに来てくれ。お礼もその時渡すでいいかの?」

「いいよ。念話してね。」

「そうじゃ、屋上開ける魔法を教えておかねばの。」

「何かのアイテムが鍵になったら楽だよね。魔法でもいいけど。」

「考えておこう。」

こうして、レジアスの依頼も無事完了した。


やっと家に着いた。屋上から帰らせてもらい、まだ朝と言える時間に戻れた。一寝入りしようか、ご飯にしようか。

「お風呂入ろうよ。疲れちゃった。」

「そうだね、魔法で綺麗になるのと湯船に浸かるのじゃ、全然違うよね。入ろうか。」

「久し振りだよね~、湯船!ゆっくりしてからご飯食べて、少し休もうね。」

「ぼくも入る!広いお湯楽しい。」

「じゃあみんなで入ろう!準備してくるね。」

家に帰ってきたなぁと、実感した。準備して貰っている間に、車をキレイにしてあげよう。今回は大活躍だったし、遠出してホコリだらけになってるだろうし。葉っぱとか虫とか付いてたら大変だ。早速ガレージで可愛がろう。


みさとはお風呂の用意もしつつ、ご飯の用意にも取り掛かる。コーンスープ・パン・チーズ・ベーコンエッグでどうかな。トマトをふんだんに使って、サラダも作ろう。スープだけ作って、お風呂上がってから出来立て・焼き立て出せるように準備する。ポテトも揚げられるように切っておこう。お家って安心するなぁ。お家買って良かった。さぁ、お風呂でシビックもきれいにしてあげようかな。

お風呂から上がりご飯を食べ、食後のお茶でひと息つく。デザートにプリンも食べた。寝ようかと思った時に、レジアスから念話が来た。

事情聴衆が終わり、相談したい事ができたとの事。ご飯も食べたいし報酬も渡したいので、都合のいいタイミングで迎えに来てほしいとの事。少し休む時間も貰い、夕方前には迎えに行くことを伝えた。みさとは、すぐに出来るメニューをもう考えている様だ。さぁ、タイマーセットして寝ようか。


夕方前、約束通りレジアスを迎えに行く。便利なタクシーだと思われてないだろうか。車がそんなに気に入ったのだろうか。まぁ、歩いて向かうと時間かかるから、車の方が楽でいいけどね。

安全運転で30分もしない内に到着。外観を見てから玄関から入ってもらう。中の広さに開いた口が塞がらない様子のレジアス。

「なんじゃこりゃ!これもおぬしが色々したんじゃろう?よく考えつくもんじゃ。」

「いやいやそれ程でも。家の中も案内するよ。」

リビング・風呂・トイレ・シビックの部屋までお披露目。シビックが大きくなって伸び伸びしている所に丁度出会して、その大きさにもびっくりしていた。

「お前、これ程大きかったのか。よくあんなに小さくなれてるのぅ。」

「美味しいご飯の為だしね。スプーンも上手になってきたよ。」

「躾もされとるようじゃ。その首に巻かれている布でテイムしているのか?」

「あれはただの口拭き用のハンカチだよ。別にテイムなんかしてないし。」

「ほぅ、自由意志とな。」

「偶々お腹空いてるときに出会ったのもあるかな。」

「普通は喰われるぞぃ。」

「話通じて良かったよ。そろそろダイニングに行こうか、いい香りしてきた。」

「ぼくも行く!」

小さくなったシビックは、肩の上に乗ってきた。テーブルには、美味しそうな料理が並んでいる。ハンバーグカレー・メンチ・ポテトサラダ・野菜スープ。

「これはこれは、なんと良い香りじゃ。車の中で拓海がしつこいくらい自慢しておったが、大袈裟ではなさそうだ。みさと、ご馳走になるぞ。」

「いらっしゃいレジアスさん、お口に合うといいんですけど。沢山食べてくださいね。」

「ぼくもいっぱい食べる!」

「お前はいつもの事だろ。ちゃんと席について。」

ハンバーグは俺のリクエスト通り、チーズ入り。メンチのためにソースも出してある。野菜スープには、チーズトーストも添えてある。

レジアスはカレーを一口食べると、大きく目を見開いた。

「なんじゃこれは!食べたこと無いぞ。」

「だから言ったでしょ、びっくりする程美味しいって。ハンバーグにはチーズも入ってるし、一緒に食べるとこれまた美味しい。メンチにソースもかけてみて。本当に美味しいから。」

「ほほぅ、どれどれ。これはこれは、なんとまぁ。誰じゃこれ考えたの、天才か!」

「よくあるメニューですよ、向こうでは。メンチもそうだけど、お店で売ってるくらいだし。」

「なる程な。みさと、店は出さんのか?支援するぞぃ。」

「忙しくなるのはちょっとな〜。依頼も受けられなくなるしねぇ。」

「このソースというのも、初めての味じゃ。甘味と酸味と辛味で、素晴らしいハーモニーになっておる。これもみさとが作っておるのか?」

「それは俺だよ。こっちでは食べられないから、作ってみた。こっちの人でも美味しいなら、売れるかな。」

「売れるじゃろう。持って帰りたいくらいじゃ。作り方わかれば、すぐ作れるかのぅ。」

「ちょっと時間かかるね。ズルしてすぐ食べられるようにしてはいるけど。」

「少し融通して欲しいのぅ。代金は払うぞ。」

「いくらにしたらいいかわからないよ。お土産に少し渡すよ。」

「おぉ、有難い。美味しいうちに食べようとするかの。むむ、このサラダもイケるのぅ。」

「ね、みさとの料理は美味しいだろう?来たかいあったでしょう。」

「料理もそうだが、この家も凄いのぅ。」

「試したら出来ただけだけどね。」

「みさと、おかわり!」

「はいはい。スプーン上手になったね、シビック。」

「うん!フォークも慣れてきたよ。」

「偉いねぇ。今度パスタでもしようか、美味しいの作るよ。」

「食べたい!」

こうして、更にメニューが広がっていく。

食後にレアチーズケーキと紅茶を出して、更にお喋りは続いた。

「出来るかどうかは別として、アイテム考えたから聞いてくれる?

連絡手段の水晶だけど、小型化出来ないかなって思ってた。例えば、ブローチとかネクタイピンみたいな形にして、全員が持てるようにするんだ。音声だけの通信にするとか、受信する側の魔法によって映像も見られるとか出来たらいいよね。」

「ほぅ、安価で出来るようなら、全員に持たせたくなるな。安全も確保できる。」

「それと馬車だけどさ、以前やった方法だけど、浮遊の魔法と加速の魔法で、早く移動できるよ。30日が15日になるくらいに、効果あり。」

「それはいいな。後は魔法の練度次第か。試させてみるとしようか。」

「後は、何でも入る袋を汎用にできないかなって。レジアスが皆に教えられれば、職員に使わせられるんじゃないかな。簡単に出来るようなら、市井に広めてもいいだろうし。」

「そこは考えものじゃな。便利ではあるけど危険でもある。私も他の者には教えてないくらいじゃ。何を隠されてもわからんからのぅ。」

「成程、使う人次第か。その辺の判断は任せた。」

「そうじゃな。前向きに検討する…というか、実用化したいのぅ。それはそうと、今日の料理をうちの料理人にも教えてほしいんじゃが。」

「え、何言ってんの?いきなり料理?そんなに気に入ったのかぁ。みさとの料理は美味しいからなぁ。」

「おぬしはいつでも食べられるじゃろうが、そうは行かない私の身にもなってみろ。毎日押しかけるぞぃ!」

「それは迷惑だ!しょうがないなぁ。みさと、どうかな?」

「うちに来る?教えに行こうか?」

「おぉ来てくれるなら材料も用意して待っとるぞ。宜しく頼む。」

「どのメニュー教えればいいんですか?」

「今日の料理全てじゃな。前に食べたプリンも教えて欲しいのぅ。」

「じゃあメニューと材料書き出すから、待っててね。」

「ありがとみさと。送り迎えはするから安心して。そう言えば、レジアスの家に行くの初めてだな。」

「職場で事足りるからのぅ。極力呼ばない様にもしておるしの。うちの料理人も腕は確かじゃ。向こうの料理で簡単に出来そうなものあれば、材料次第だが教えてくれると助かる。」

「簡単に出来るものねぇ。その場の材料見せてもらって、出来るものでもいいかな?」

「もちろんじゃみさと。無理は言わん。」

「俺には無茶言うくせに!」

「みさとに無理言ったら、おぬしが怒るじゃろ!わかっとるわい。」

「わかってるならいいけどね。何時にするの?」

「材料の用意もあるだろうし、明日以降でレジアスさんの都合のいい日で良いんじゃない?」

「みさとは優しいのぅ。明日ではどうかな?」

「爺さん意外にせっかちだな。レジアスの家には、車で行けるのか?」

「屋上は無いが、庭ならあるから大丈夫じゃ。」

「レジアスさんは明日仕事じゃないの?大丈夫?」

「10日位の予定が2日で終わってるからのぅ。少しくらい余裕はあるわい。」

「じゃあ今日は泊まっていって、明日直接行く?材料は持って行ってもいいし。どうかな、たっくん。」

「みさとがいいならいいけど。レジアスはどう?」

「是非もない。宜しく頼む。」

「じゃあ、お部屋とお風呂案内しますね。」

「忘れてた、先の依頼の礼を渡してなかったな。これで足りるかの。」

重そうな金貨の袋を、袖から取出すレジアス。拓海は中身を確かめもせず受取る。

「確かに頂きました。明日の材料費もここから出すとしよう。いいかな、みさと。」

「もちろん!レジアスさん、ありがとう。」

「助かったのはこちらじゃわい。正当な報酬じゃ。」

「使い方もわからないといけないから、俺が風呂の案内するよ。部屋の準備は宜しくね、みさと。」

「はーい。行ってらっしゃい。」

「ぼくも入る!広いお湯楽しい。」


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