お試しにも程がある 69
「緊急事態じゃ、皆連日の仕事で申し訳ないが、宜しく頼む。」
レジアスの号令一下、職員達が部屋から出ていく。
後ろで見ていた俺達の所に、溜息をつきながらレジアスが来る。
「やれやれ、お前達にも迷惑かけるな。」
「レジアス、しょうがないよ。
魔王様も大変だね。」
「全くじゃよ。
長き平穏の中での反乱分子とは。
出来過ぎる王様も駄目なのかのぅ。」
「外から見ると、平和そのものだもんね。」
「そこが嫌なのかもしれんな。
城は王妃に任せて、自分が出てくると言っておる。」
「魔王軍が来るわけではないの?」
「事を荒立てないように、他の国に対しても配慮しておるんじゃないかと思うぞ。」
「そうだな、レジアス。
手を貸してくれ。」
いつの間にやら魔王様出現。
「騒がしくしてすまんな。
暫く大人しいと思っていたが、何をトチ狂ったか反乱を宣言されたからな。
いい機会だから、まとめて退治しようと思ってる。」
「魔王様、元々そういった者達が居たんですか?」
「うむ。
魔王になった時の説得で、理解してもらえたと思ってたんだがな。
そういう意味では、若い奴らが台頭してきたのか、老いぼれ達に唆されたか。
いずれにせよ、わかってもらうしかあるまい。」
オロチの凄みのある笑顔が、穏便には終わらなさそうな予感をさせる。
「それにしても、こちらに手を出してくるとは何故なのかのぅ。」
「手下を作る媒介にしたいんだろう。
数がいれば良いというものでもないのにな。」
「そんなこともわからず反乱とは。
直ぐに終わりそうじゃが、分散されて迷惑してるってとこかのぅ。」
「はっはっはっ、その通りだ。気配は分かるが、分身は出来んからな。」
「何箇所くらいなの?
手分けして倒すんでしょう?」
「大凡7箇所というところか。
場所は…地図あるか?」
「魔王様、考えたことを共有できるようにするね。
レジアスも入れてで良いかな?」
「それは助かる。」
「相変わらず何でもできるのぅ。
ほぅ、これは便利じゃ。
見た目でわからない魔族もおるのかのぅ。」
「変身は、高度な魔法使える者しかできないから、見た目でわかると思う。
心配なら呼んでくれ。」
そうなんだ!
お忍びで変身してたユーガとヌエラは優秀なのか。
そんな事を考えてるうちに、話は進んでいく。
「各地方にも、うちの職員から見かけない人物には気を付けるようにと、明らかに怪しいものは通報するよう通達出している。
即時判断出来るように、各地方に職員飛ばして水晶での通話もできるように渡しておいた。
私に随時連絡が入る。」
「避難というか、あまり出歩かないように通知されてるってことで良いのかな?」
「そうじゃ。
後は、うちの兄貴にも来てもらった。
剣の腕は確かじゃからのう。」
「剣の餌になるから来てくれたの?」
「それもあるが、この間教わった新作メニューを食べさせろだと。
食べる時しかうちにおらん。」
「来てくれて良かったね。
班分けはどうする?」
「俺、レジアス兄弟、拓海達で3つに分ける。
早い者勝ちで、最後の1箇所を叩く。」
「わかった。
私達はここら辺りに行こう。」
「俺は魔族領近くのこの辺だな。」
「じゃあ余ったこの辺を俺達で良いかな。
1箇所終わる毎に連絡するで良いの?」
「周りに怪しげな気配がなくなったと判断したら知らせるでな。
因みにこの地図の印は、倒し終わったら直ぐ消えるのか?」
「俺の認知だから、察知出来なくなれば消える。
安心しろ。
人間側に被害が及ばない事を願うよ。」
ざっくり対応内容も決まり、レジアスがサイノスを呼びに行くことになった。
魔法庁の職員ではないので、別室に居てもらったそう。
俺達もそうじゃないのか?
部屋の中の小さな扉を開くと、控室のようだった。
そこにある長ソファで、横になって足を組んでいるサイノスが居た。
音に気付いたサイノスは、こちらに向いた。
「みさとちゃん、元気してた?
え、一緒に行けるのかな?楽しみー!」
「兄貴は私とじゃ。
みさとは拓海と組んで別行動になる。」
「えー、つまんない。
で、獲物は何処かな?」




