お試しにも程がある 65
「やぁみさとちゃん、久し振りだねぇ。
元気してた?
あ、拓海もね。」
サイノスの奴は相変わらずだった。
冒険者ギルドの依頼で訪れた街で、ばったり会った。
「こんにちは、サイノスさん。
討伐依頼で来たんですけど、もう剣が食べちゃいました?」
「どんなやつかな?」
「三つ目の大きな熊と、頭が2つある蛇って言ってました。」
「熊は食べたかも、2匹ね。
蛇は見てないなぁ。
討伐依頼来るってことは、大量発生?」
「そうみたいだ。
巣があれば全滅も依頼されてる。」
「ふーん。
拓海はひとりでも大丈夫だから、俺はみさとちゃんと行こうかな。」
「いやいや、俺達で行くから、サイノスは来なくていいよ。」
「うちの子大喰らいだからさ、餌がある時に食べさせるようにしてるんだよ。
ということでみさとちゃん、行こうか。」
「えっと、たっくん居ないと対象物分からなくて…」
みさと偉い!ちゃんと断れる子。
「大丈夫!俺わかるから。」
人の話聞け、サイノス。
「はいはいそこまで。
付いてくるのは勝手だけど、みさとを困らせないで。」
「ちぇっ、拓海邪魔だなぁ。」
「邪魔はお前だろ、サイノス。
依頼は2人で受けてるの。」
「はーい。
じゃ、行こっか!
熊見かけたところから行けば、発生源あるかも。」
「蛇も見つかると良いね。」
早速目的地へ進む。
奴らは居た。
10体位が彷徨う形でウロウロしている。
近くに洞窟があり、そこから更に出てこようとしている。
「何か、デジャヴが…」
「見たことあるね。」
「取り敢えず倒して、食べさせるけど良い?
何か持って帰る部位ある?」
「いつもは耳だけど、わかるかな?
1体貰ってって良い?
念の為証拠で持って帰るよ。」
「わかった。
耳全部と1体渡す感じね。
腕の見せ所だねぇ。
みさとちゃん、見ててね!」
「わ、わーい、がんばって…」
俺達の依頼は、勝手に終わりそうだ。
あっという間に片付き、 残してもらった耳と1体をウエストポーチに入れる。
「この子賢いんだよ。
魔石持ってたら、自動的に集めてくれるの。
この袋に勝手に溜まってくんだ。」
「便利だな。
そんな機能あるのか。」
「え、今まで倒した中で、魔石持ってるの居たのかな?」
「そうだよみさと。
ちゃんと確認して俺が抜いてたから、心配しないで。」
「ありがとう、たっくん!」
「そうだよね、みさとちゃんにそんなことさせられないしね。
拓海の仕事だな。」
最もだけど、何か違う。
このイラッと感は何だろうな。
「じゃあ、洞窟の中見てみないとかな?
たっくん、行っていい?」
「そうだな、そうしようか。
明かりつけるね。」
俺の気持ちを察したのか、話題を変えるみさと。
こういうとこ、本当にありがたい。
進む中でも出てきた敵はサイノスが倒していく。
耳を拾って、俺に渡すみさと。
この繰り返しで、最奥まで辿り着いた。
大きな魔法陣が描かれていて、ここから熊が出てきている。
「なにこれ、熊作られてるの?」
「誰が書いたんだろうねぇ。」
「取り敢えず一部消したら出なくなるかな?」
魔法陣から生えてきた熊を、即座に倒すサイノス。
みさとは魔法陣をまじまじと眺めている。
魔法陣を消す方法は、一部だけ消せばいいのか相殺の魔法があるのか、よくわからん。
取り敢えず、その辺にあった棒で一部を消してみた。
熊は止まった。
出る途中のものが、半分で止まってる。
みさとがクスクス笑いだし、サイノスは剣でツンツンしてみる。
止まったことでホッとした俺は、サイノスに熊の片付けを依頼。
耳を残して出ていた部分を剣に食べさせたサイノス。
「おっ、半分でも魔石出たらしい。
入った音がした。」
「魔石も半分なのかな?」
みさとに聞かれ、袋を覗くサイノス。
「んー、溜まっているものの中では小さいのないから、同じ物が出たっぽいよ。
やったね。」
1つを取出し、みさとに手渡した。
「こんな大きさなんだ。
へぇー。
ありがとう、返すね。」
「いいよ、1個くらい持ってなよ。」
「私何もしてないよ?いいの?」
「いいよいいよ、いっぱいあるからね。」
「じゃあ、遠慮なく頂きます。
ありがとう!」




