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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫


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お試しにも程がある6

「今日は何を食べようかな。」

魔法協会からの帰り道、飽きたのかお腹空いたのかそんな事を言い出したみさと。ずっとレジアスと二人で話していたので、やっぱりつまらなかったかもな。

「食べたいとこあったら入ろうか。シビックの相手ありがとな。」

「いえいえ。たっくん楽しそうだったし良かったじゃん。色々わかったみたいだし。」

「本当だな。まさかベゼルの知合いが居て、話を聞いてもらえるとは思ってもいなかったからな。」

「どこに居るかわからないもんだね。あ、あれ美味しそう!」

レーダーが反応したのか、屋台に向かって歩き出す。シビックも肩から飛び立ちそうな態勢だったので、抑えつつ屋台に向かう。こんな短期間なのに、似てきたなぁ。6つ買って、1つはシビックに、1つは二人で半分こ。残りはいつもどおりリュックへ。食べながらも次を探すみさと。薄い飴がかかったバナナを見つけて更に買込む。シビックが食べるのを手伝いながら、両手に食べ物でご満悦のみさとに声をかける。

「みさと、両手が空いてから次の買おうね。それにしても、ゴミ袋もがさ張らないっていいな。」

「いいコト考えたでしょう?フフリ。」

「お手拭きも何か考えないとな。コイツの口回りもそろそろ気になる。」

「あはは。拭いてもきりなさそうだよ、この子の口は止まらないもん。」

今もバナナをもぐもぐしつつ、我関せずと目も合わせないシビック。聞こえてるだろ!

「大きくなったら、拭く心配も無さそうだけどね。」

「大きくなろうか?」

「止めなさい、ご飯食べられなくなるぞ。口拭くくらいいいだろ。髪や服汚されるのは困る。」

「しょうがないなぁ。痛くしないでね。」

「口が汚れない魔法…いや、直ぐに汚れが取れるハンカチか。ハンカチ自体も汚れない様にした方がいいな。」

「口が汚れない魔法って、ご飯寄せ付けなくて食べられなくなりそうだね。」

「それは困る!」

「ハンカチにしとくか。少し大きめにして、スカーフみたいに首に着けておけるようにすればいいかな。直ぐ拭けるし。」

「うちの子ってわかり易いかもね。」

「食べるのに邪魔にならない?」

「縛り目は後ろ向きにしておいて、拭くときだけ前にすればいいさ。こうなると、よだれ掛けみたいだな。」

「首輪よりいいんじゃないの?お洒落だよね。何色がいいかな。」

「白でいいさ。ハンカチだし。」

「ストライプとか水玉とかペイズリー柄もいいんじゃない?」

「何もない真っ白にしておくけど、魔法を使うと柄が浮き出るようにしておくよ。すり替えられてもわかるようにね。位置もわかるようにしとくか。」

「異義なーし!」

「みさとのハンカチもしとくかね。」

「お願いします。お手拭き欲しいと思ってた。」

雑貨屋に入り、ハンカチ…というかタオルを選ぶ。いくつか購入し、その後食事のできる店舗に入る。注文し来るのを待っている間に、早速作ってみた。

「多分出来たと思う。後で使ってみて。お前にはもうくくっとくよ。」

「ありがとう。シビック、意外と似合うね。」

「なんか邪魔!でも、これで心置きなく食べられるって事だよね。」

「今までも食べてたろ。好きにしなさい。みさと、選んであげてね。」

「うん、一緒に食べようね。」

注文したものが届き、皆で食べ始めた。こちらに来てから、食事に関してはハズレを引いたことがない。シンプルながらも、ほっとできる味付けだ。向こうで食べていた味に遭遇することはほぼないが、みさとは大丈夫だろうか。

「みさと、カレーとか食べたくならない?こっちに来てから該当する味に巡り合って無いよね。」

「考えないようにはしてるけど、たこ焼きとかソース味恋しい。自分で料理したいくらいだけど、そもそも調味料無さそうだしね。しょうがないよ。」

「ふむ。」

コッソリ作ったら喜ばれそうだ。その前に、料理できるキッチンからかな。そんな事を考えながら、食後のお茶を飲む。シビックもしっかり一人前を平らげ、早速口を拭いてもらっている。使えているようで何よりだ。


店を出て歩いていると、大きな壁が見え始めた。どうやら闘技場のようである。ここが、武術大会の会場とのこと。告知ポスターが多くなってきた。近付くと、壁が更に大きく感じる。今のうちエントリー出来るか聞いてみるか。

ブロックで造られたような大きな壁。この世界では格別大きな建物だ。来る途中城のような物も見かけたが、一緒にしてはいけないだろう。

入り口を見つけ入っていくと、思ったとおり受付があった。開催日が近いからか、エントリーで来る人は疎らなようだ。係員も二人しかいない。

「こんにちは、エントリーしたいんですけど、ここでできますか。」

「はいはい出来ますよ。武術部門とテイマー部門と、どちらですかね。」

「この子が武術部門で、俺がテイマー部門です。」

「この子がエントリーですか?怪我しますよ!」

「腕試しなんで、多分大丈夫ですよ。受付してもらえますか?」

「はぁ。当日キャンセルも出来るので、よく考えて下さいね。ここに名前と武器、テイマーは連れているモンスター種属を書いてください。注意事項はこちらです。」

注意事項には、トーナメント方式・怪我や死亡は自己責任・戦闘中の魔法使用不可・イカサマ発覚の際は関わった者全て失格、相応の処分が下されるそう。

優勝賞金は金貨100枚と副賞に土地若しくは建物が貰えるとある。これは俺だけでも勝たないとな。シビック、頑張れよ。

受付の人の話だと、優勝者は首都近くに豪邸を建てるらしい。貰えるなら、街外れの静かなところがいいなぁ。勝てたら考えよう。

二人して名前を書いて、エントリー終了。後5日位で大会開催なので、あまり遠くまで足を伸ばす訳にはいかないか。今日のところは、宿屋を探して落着くとしよう。外に出て、ちょっと早いけど宿屋を探す。この辺は大きめの建物が多いから、以前のように大きさだけでは宿屋がわからない。脳内地図で宿屋をいくつかピックアップ、後はみさとの勘で選んでもらおう。きっとご飯の美味しい所を選ぶはずだ。


翌日からは、更に食料買い込みが増えた。大会中にシビックがお腹空いても、すぐにあげられるようにだ。ただ、大量に購入して怪しまれるのも困るので、少しずつ離れた所で怪しまれない程度の買い物を繰り返す。詰めても詰めてもリュックが大きくならないのは、やはり便利だ。重くならないし、何しろ見た目では怪しまれない。うん、いい事だ。

一杯詰めたら、中身毎リュックを複製するか、リュックとウエストポーチを空間的に繋ぐか、考えどころだ。どちらもしとけばいっか。中身が繋がれば、うちのナビでも管理できるようになるだろう。まだまだ買い込んでいるみさとを見ながら、そんな事を考えていた。シビックが味見をしながら、気に入った物を多めに買っているらしい。どれも多めに買ってるように見えるのは、気の所為だろうか。今のところ容量把握出来ないので、宿屋に帰ってからみさとに話してみよう。自分の持ち物だから、勝手に改良したら怒るに違いない。クワバラクワバラ。

仲良し二人がこちらに向かって来た。そろそろご飯にしたいらしい。シビックはまだ入るのか。リュック並に底無しだ。さて、お昼は何になるかな。


大会当日。何の練習もすることなく、のほほんと迎えた。朝御飯もしっかり食べてから、余裕を持って会場入り。5分前行動は常識だが、更に前乗りしてどんな様子かを眺めている。みさとは、来るまでにあった屋台もしっかりチェックしていた。そして、焼そばが無いことに落胆していた。ソース無いからな、仕方あるまい。落胆しつつも、色々な物を買い込んでいる。

出場選手を眺めていると、体格のいい人が多い。体に比例して、武器も大きいようだ。もちろん小柄な選手もいて、弓やレイピア・双剣と、様々だ。テイマーは一緒に連れて来ている人もいるが、試合直前に召喚して手の内を曝さないようにする人も多いとか。うちのシビックは、小さいからか注目を浴びる様子はない。ドラゴンに見えないからかな。大きな動物に乗って来る人もいて、誇示しているようだ。やはり大きいものもは注目の的になる。

時間になると、くじ引きが始まった。トーナメントの枠決めである。流石に国を挙げての大会なだけあって、100人以上の選手が集まってきている。決勝までには、何回戦うやら。

テイマー部門はそこまででもないが、それでも何回かの試合はありそうだ。まずは武術部門から始めるそう。その後テイマー部門だが、今回は出場選手が増えているようで、決勝リーグは翌日になるみたいだ。

武術部門から始まり、闘技場を4分割して行っていた。一試合10分前後で、どこも終了している。ようやくみさとの番になった。初めて使う剣を持って、本当に大丈夫だろうか。みさとは楽しそうな顔をしているが、こちらは心配しかない。怪我は魔法で治せると思うが、魔法協会本部でエリクサーを買っておいてよかった。何があっても対応できるだろう。

相手はかなり大柄で、みさとを見て楽勝と思っているようだ。手に汗握り見守っていると、一瞬で決着がついた。あれ?どうした?何があった?会場内もざわついている。あんな小さい子供が倒したのか?とか聞こえたが、立派な大人デスヨって突っ込みたい。でも、怪我がなくて良かった。シビックは心配することなく、ご飯の要求をしてきた。コイツめ。仕方なくウエストポーチから食料を取出し、食べさせる。暴れられても困るしな。

みさとの2試合目も呆気なく決着がつき、さっきより大きなざわめきが起る。賭けもされてるらしく、大穴狙いにするならここ!とみさとが上げられていた。俺も買いたいくらいだが、選手は買えないらしい。残念。

サクッと試合が終わったみさとは、暢気におやつを取出し食べている。周りの選手達が、大分殺気立ってきた。名誉と賞金を手にしたい思いで出場している人も多いだろうに。我関せず、みさとは次のおやつに取り掛かる。控室は無いのか、闘技場の内側に選手達が座っているのが見える。段々数が減ってきたので、もぐもぐしているみさとは目立っているようだ。試合は順調に進み、武術部門は本日最後の試合。みさとはやはり苦戦する様子もなく、明日の決勝トーナメントに残った。

さて、これからはテイマー部門。シビックはを連れて客席から闘技場内部に向かう。その際みさとを探して声をかけた。

「お疲れみさと。楽勝だった?」

「そーだねぇ、体が勝手に反応する感じだったよ。疲れてもいない。それより、たっくんもシビックも頑張ってね!」

「ありがとう、行ってくるよ。」

観客席に向かうみさとを見送り、改めて会場に向かう。動物・モンスターの品評会のようになっていた。色々いるもんだなぁ。ナビによると、テイムされるモンスターも必殺技の様なものがあるらしい。シビックにはあるのだろうか。見ようと思ったら、何かに阻まれた。こんな事なら、前もって確認しとけばよかった。

「シビック、お前何か技とか持ってるの?」

「特にないけど、大丈夫だよ。自由にさせてくれるんでしょ?」

「あぁ、指示を出したりしないし、そもそもテイム出来てないから何も出来ん。安心しろ。自由に楽しんで、優勝しようぜ。」

「確か、殺すのは駄目って言ってたよね。」

「そうだ。お前は強いんだろ?手加減しても余裕なくらい。食べるのも勿論駄目だぞ。試合前にしっかりご飯食べとけよ。」

「はーい!」

くじ引き結果に伴い、会場を2分割した状態で試合が始まった。シビックの試合も、一瞬で片が付いた。飛んでいったと思ったら、ひと蹴りして終わり。あんな小さいのにそんなに強いのか。流石ドラゴン、小さくても効果は抜群だ。相手のテイマーは、何があったか理解できない内に終わっているので、イカサマではないかと抗議が入る。どの様なイカサマかこっちが教えて欲しいくらいだ。まぁ、身長差だけでも20倍はある相手に瞬殺では、信じたくない気持ちもわかる。相手が悪かったよね。

そんなこんなで、こちらも明日の決勝リーグまで進むことになった。宿屋に帰る前に、まだ買ってない屋台を発見したらしく、買い物を始めるみさと。試合より待ち時間の方が大変だったとか。そりゃおやつも減ってるだろうさ。シビックも暇さえあれば食べてたから、同じようなものか。リュックの食料はまだまだあるが、空き容量もあるので在庫確保に余念が無い。食事は宿屋ではなく、別の店にする事に決まった。明日もあるから、早く休もう。気疲れって、本当に疲れるよね。


宿屋で部屋に入ってから、今日の振り返りをした。みさとは勝手に反応したと言っていたが、もう少し詳しく聞いた。

「う~ん、よく分からないけど、危ないって思ったら動いてた。」

「みさとがこう動こうと考えた訳ではないのか?」

「そうだね。寧ろ、危ないって思って目を瞑ったら終わってた。ラッキー?」

「そーかラッキーだなぁっておい!戦った訳ではないのか。明日もそんな感じで行けるかな。」

「拓海、みさとは反射スキル付いてるんじゃないの?見てみれば。」

「そっか、魔法で見られるのか。みさと、診てみるよ。…ホントだ、色々ある中に反射もある。スキルって便利だな。そう言えば、お前のスキル診ようとしたら見られなかったぞ。何でだ?」

「…持って無いと見ようがないんじゃない?無くても強いから、ぼく。」

そう言いながらベッドの上で胸を張るシビック。デコピンしたら、ぽてっと倒れた。

「どこが強いんだよ。確かに試合では強かったから、良しとするか。明日も頑張れよ。」

「任せといてよ。」


決勝リーグ当日。昨日と同様に朝御飯をしっかり食べて、会場入り。シビックを膝に乗せ二人でまったり過ごしていると、ポツポツと選手が集まってきだした。決勝リーグは8人進出。3回勝てば優勝だ。やっぱり強そうな人ばかりに見えるけど、みさとは大丈夫だろうか。

時間になり、武術部門とテイマー部門、それぞれ8人ずつ揃った。武術部門から試合が始まった。

第2試合がみさとの出番。相手はこれまた大柄な選手。相手はみさとの剣より2倍以上大きな斧を軽々と振り回している。みさとは昨日の経験から余裕が出たのか、戦う気満々の様子で構えている。試合が始まり、相手が斧を振り回す中、みさとはひらりひらりと避けていく。ちゃんと相手の動きを見ているようだ。相手は当たらないのでイライラしてきたのか、動きは早いが雑な攻撃になってきた。余裕で躱していたみさとだが、遂に反撃開始。おぉ、剣が当たってる!まともに使ったのを初めて見た。今度は相手が防戦一方。段々速度が乗ってきたみさとの攻撃に、対応が苦しそう。強い攻撃には見えないが、手数が多いからかな?

「みさとは何をやってもスキル補正が入るみたいだね。相手に威圧までしてるし。」

「何だと、そんな事できるのか?何も言ってなかったけど。」

「みさとの事だから、無意識かもよ。拓海でもわからないことを学習しているとも思えないし。」

「それは言えてる。お前はよく見てるな。」

「まーね!褒めてくれていいよ。おやつ頂戴。」

調子に乗って食べ物を要求してくるシビック。教えてくれたし、仕方ないなぁと思いつつ2つ出した。食べたいものがわかれば、考えるだけでウエストポーチから取り出せる。便利だ。

そんなやり取りをしている間に、みさとは危なげもなく勝利。観客に向かって、手を振っている。その後こちらに向かってきた。

「お疲れ様みさと。だいぶ慣れてきてたね。」

「うん、練習させてもらった感じ。やっぱり体が勝手に…じゃなくて、思ったとおりに動くよ。こうなったらいいな〜みたいな。」

「決勝リーグで練習かい!まぁ、怪我が無くて何よりだ。ナビにでも教わったの?」

「攻撃当たらないっぽかったから、動いてみようと思っただけ。ナビさんは、お好きに動いて下さいとしか言わなかったよ。」

「それ以上必要無かったのか。流石ナビ、良くわかってる。」

「次は準決勝かぁ。第1試合の勝者とだよね。初の女性対決だ!ちょっとやりづらいなぁ。」

「差別イクナイ。まぁ、頑張れよ。」

「うん!」

第3、4試合をふたりで観戦しながら、次の試合を待つ。

そして準決勝、初の女性対決となった。相手は美人でスタイルも良く、それを誇示するように露出度の高い服装。

「あらぁ〜、女相手じゃアタシの作戦使えないじゃぁない。ウッザ。さっさと終わらせるかぁ。」

全く相手にしてない感じで、腰の双剣に手を当てポーズを取っている。男性からの声援が大きくなる。

開始の合図と共に走り出す女。双剣を使うかと思いきや、何かが飛んできた。金属のニードルが複数、同時に。反射的に剣で全て叩き落すみさと。そこに本命の双剣での攻撃。それも、翻す剣で危なげなく受け止める。幾度となく繰り返される攻防の剣戟、会場内に音が鳴り響く。

みさとは迷っていた。この露出度の高い服装で、何処を攻撃したら傷付けないかを。女性だから傷付けたくないなと思って、防御に徹している。ただ、そろそろ潮時かとも思っている。そんな事を考えながら受け流していたからか、つい足が出てしまった。軽く腹部を蹴っただけだが、結果と来て女は壁まで吹き飛んだ。

こうしてみさとは、決勝進出が決まった。


「あの人、大丈夫かなぁ。つい蹴っちゃった。」

「気を失ったみたいだから、医務室運ばれたらしいよ。大丈夫だよ。」

「だといいんだけど。次は決勝か。頑張るね~。」

「無理しなくていいからね。怪我しないのが一番だから。」

「ありがと。」

次の試合をふたりで観戦しながら、そんな会話をしていた。怪我をしても大丈夫な準備はしているが、傷付くところはやはり見たくない。大会に出ている以上、そんな事は言っていられないのは重々承知の上である。どちらが勝つかも見ていないといけないが、二人の時間も大事である。

「みさとは物理耐性付いてるから、怪我しないだろ。それよりおやつ頂戴!」

コイツ、いいところを邪魔しやがって。ん?物理耐性?

「アイテムじゃなくて、魔法で付けてもらったんでしょ?かけた魔道士より高位の無効貫通か、それ以上の攻撃じゃないと傷一つ付かないよ。これって拓海かけたの?」

「多分そうだよ。こっち来たばかりの時に、何かあるといけないから念の為。有効かどうか確かめる方法なかったから、できたらラッキー位で付けた。できてたんだ、凄いな。お前、良くわかったな。」

「見ればわかるじゃん。色々付きすぎて、大会出るの反則級な位だよ。」

貰ったおやつをもぐもぐしながら、解説しているシビック。

「みさとを傷付けられるのは、会場内に誰一人いないよ。拓海とぼくを除いては。」

「そんな事まで分かるのか、シビックは。」

「まーね。おかわり!」

4つ目を出して渡すと、美味しそうに食べだした。レクチャー料かな。

「ところでシビックさん、どうやって見たか教えてよ。俺にも出来るか?」

「んむ、ステータスに出てるよ。一杯あり過ぎて最後まで見なかったんじゃない?」

「これは迂闊だった。ほうほう、これはこれは。みさと、好きにしておいで。」

「ナビさんも同じ事言ってたよ。分かってたのかな。」

「ナビだしな。なぁ、会場内に強い人いないのはどうやって確認したんだ?」

「範囲探索だよ。」

軽く言ってくれる。ナビ、そんな事出来るか?

『可能です。』

その後直ぐに、強さで色分けされた、サーモグラフィーみたいなものが脳内に展開された。シビックとみさと以外は、似たような色だ。

「お前ホントに強いんだな、色が違うよ。」

「やっとわかった?ぼくも優勝するから見ててね、みさと。」

「楽しみにしてるね。その前に、私が優勝してくるよ。」

2試合目の準決勝も終わり、いよいよ決勝戦。安心して見てられるかな。

みさとが向かうのを手を振って見送りながら、シビックに声をかけた。

「お前、何者なの。ドラゴンが皆そんなに博識なのか?」

「そういう事にしとけばいいじゃん。今後も頼ってくれていいよ。ご飯くれれば。」

「ホントにレクチャー料か。まぁいいか、先生宜しくな。みさとには変なこと吹き込むなよ。何も考えて無さそうで、鋭い所あるからな。」

「素直なのはいい事だ。みさとは美味しいもの選んでくれるしね。」

5つ目のおやつを食べながら、決勝戦が始まるのを待っていた。


前の試合から10分の時間を開け、決勝戦が始まった。今度の相手は、見掛け倒しではなさそうだ。みさとのよりは大きな剣を持っているが、体の一部のように自在に取扱っている。引き締まった体で、いかにも強そうな感じ。

開始の合図の後、軽快な剣のぶつかる音が響く。踊っているかの様に、楽しそうにも見える、20分を超えた頃、相手は苦々しけな顔になっている。みさとが練習台にしているのがバレたか?攻めきれなくて焦りが出たか?休む事なく動き続ける二人。

何時までも続くかと思われたが、焦った相手が隙を見せた瞬間、みさとの攻撃が決まってしまった。決着がついた。

会場に響く大歓声、本当に大穴きやがったというか叫び声、相手選手を応援していた多くの女性の泣き声。喧騒の中、みさとはこちらに向かってきた。

「おめでとうみさと。」

「ありがとう!楽しかったよ。」

「良かったな。ゆっくり休んでな。次は俺達だ。」

「軽く全勝してくるからね。」

ちょっと買い物に行ってくる位の気軽さで、手を振って行ってしまった。


「じゃあ、ちょっとばかし運動してくるね。」

「決勝リーグが食後の運動かよ。流石だね先生。後ろから見守ってるからな。」

「1戦ずつは面倒くさいから、まとめて倒せないかな。」

「観客が面白くないんだろ。ちょっとは遊んでやれよ。」

「はいはい御主人様。頑張ってる様に見える風にすればいいんでしょ?」

「わかってるじゃん。強過ぎてもあらぬ方向に疑われるからね。」

「面倒くさいな。可愛いフリをするのも楽じゃないね。」

「見た目は可愛いぞ、安心しろ。だから大きくなるなよ。」

「こんな大会くらいで、大きくなる事もないさ。その程度の相手しかいなさそうだし。終わってからのご飯が楽しみだなぁ〜。」

「賞金出るから、お好きにどーぞ…と言いたいとこだが、程々にな。」

「わかってるよ。さ、運動してくるか。食前の運動ね。」

「あれだけ食べといて食前かい!まぁ、行ってらっしゃい。」

あれだけ大口叩くだけあって、全く危なげなく次々終わっていく。ちゃんと頑張ってます風は一応装っている。これって、テイマーの腕と見られるのかモンスターが強いと見られるのか、微妙な感じだ。何もしてないんだけどね。

折角の決勝戦も、なんの感慨もなく終了。寧ろ相手が可哀想なくらい。あーあ、泣いてるわ。今回はホントに相手が悪かったよ。次回頑張れ。

こうして力試しは、呆気なく終わった。賞金もらっていいのかなって正直思う。勝っちゃったものは仕方がない。そして、両部門で優勝なので、土地若しくは建物が2つになった。明日以降、ゆっくり考えよう。


すぐに帰りたかったが、優勝したが為に表彰式やパレード等、色々なものが付属してきた。戦闘よりこっちの方が疲れた気がする。お腹が空いてきた二人が、不機嫌にならないか心配だ。

やっと解放されてご飯に向かうが、そこでも祝福殺到でゆっくり味わえない。這々の体で抜け出し、宿屋まで向かう。亭主に金貨を渡し、部屋に食事を持ってきてもらうようお願いした。十人分位違うメニューで頼み、テーブル一杯になってからゆっくり食べ出した。

「やっとゆっくりできるねぇ。疲れちゃった。」

「ホントだな。お疲れ様。シビックも一杯食べろよ。」

「任せて!お残しはしません。」

食事を堪能して、ほっと一息つく。美味しいご飯に、感謝だな。大量の食器を亭主に返却、お茶を貰って部屋に戻る。

「さて、これからの話をしようか。」


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