お試しにも程がある 56
「お帰りなさいませ、レジアス様。
オロチ様・拓海様もご無事で何よりです。」
「コルサ、何もなかったかのぅ。」
「はい。
皆様、お料理とお話で楽しそうに過ごされてました。
他も変わりなく、特に問題はございませんでした。」
「そうか。
今後、倒してきた組織の残りがいれば、報復も考えられるからな。
いつも通り、頼むぞ。」
「はいレジアス様。
いつも通り、お任せ下さい。」
物腰柔らかな執事に頼む内容ではないが、コルサはいつも通りと言うように穏やかに応じる。
気になった俺は、こっそりステータス確認。
おおっと、かなり強いぞこの人。
元SSランクと言われても納得するレベル。
魔法もそこそこ使えるので、何かあった時にレジアスと念話出来て連携が早いんだ。
オールマイティな良い人捕まえてるな。
そんなこと考えながらコルサを見ていたら、微笑み返された。
「それでは、みさと様達に報告してまいります。
お茶も用意致しますので、お掛けになってお待ち下さい。」
一礼してコルサは出ていき、残った俺達は座って一息ついた。
「意外に早く終わったね。」
「オロチ来てくれて良かったわい。」
「拓海、あれは読心術か?」
「いや、魔法かな?
脳内を読んだ。
初めてやったけどね。
誰彼構わずやるつもりはないよ、安心して。」
「お主が出来るなら私も出来るじゃろ。
後でやってみるかのぅ。」
「俺もやってみるか。」
「王妃様とか読みやすいのでは?」
「いやいや何を言う。
アルカイックスマイルというか、何を考えているやらサッパリ分からん。
わかれば怒られることも少なくなるのになぁ。」
「あなた、そういう頓珍漢なところですよ。
まぁ、そこがいいところですが。」
「ヒミコ、いつの間に!」
安心して雑談していた所に、キッチンから戻ってきたヒミコがツッコむ。
後ろのみさとは、苦笑い。
「因みに、あなたができる魔法なら私もできる可能性高いと思いますよ。」
「う、うむ…」
どうやらこの夫婦の魔法バランスは、奥様の方が強そうだ。
魔力量はオロチだが、技術面ではヒミコが上手そう。
最早、何も言うまい。
寧ろ、関わってはいけないようで、レジアスは沈黙を通している。
お茶を飲みながらあらぬ方向を向いている。
その間にも、ヒミコにやり込められているオロチはタジタジである。
みさとは俺に、出かけていた時のことを話してくれた。
ヒミコは、オロチも一緒に出かけたことに気付いていたそう。
その上で、大した強さの相手では無いことも分かり、餃子包みに集中出来たとのこと。
みさとは、意を決して声をかけた。
「そろそろお料理出す準備しても良いですかね…」