お試しにも程がある 55
「お前は、いえ、貴方様は…」
連れてこられた人物は、怯えを見せた。
「ま、魔王様、何故こんな所に!」
後退り始めた所を見ると、姿形だけで判断している訳ではないようだ。
「おい、どうした!
こんな奴早く倒してしまえ!」
「何を言っている!馬鹿かお前は!
この方に敵うわけ無いだろ!
さっさと黙れ!」
「約束と違うではないか!
人間という餌を渡す代わりに、俺を守ると!」
「黙れ黙れ!
そんなことどうでもいい!
ま、魔王様、これはその…」
「噂とやらは、本当だったようだ。
この恥晒しがぁ!」
「ひえぇ!
お、お許しくださいぃ!」
「失せろ。」
オロチの手から小さな黒い光が出たと思った途端、魔族と思われる人物は灰になって消えた。
あっという間の出来事に、他の人間達は呆然となる。
「噂は本当じゃったか。
全員捕まってもらうぞぃ。」
レジアスが犯人側に手をかざしたその瞬間、金縛りに遭ったかのように全員動けなくなった。
後で警備隊に引き渡すか。
「さて、スパーキーとやら。
お前さんが人攫いの親玉か。」
「ふん、知らんな。」
「ほぅほぅ、どうしてくれるかのぅ。」
「…何々、自分達でも仕入れるが仕入先もあると。
手間はかからないが料金が高い。
そろそろ地方で仕事をしようとしていたと。」
「な、お前、何を…」
「人身売買は他にもグループあるが、ここが一番大きいと。
良かったなレジアス、他も捕まえられそうだ。
ここより小さいらしいし、警備隊に通報でいいかな?」
「お、俺は何も言ってないぞ!」
「魔族雇えたのもここだけで自慢だったそうだよ。
オロチ、他には居なそうで良かったね。」
俺は、2人に声をかける。
「ふむ、警備隊に働いてもらうわぃ。」
「そうか、それは良かった。」
レジアスもオロチも、疑うことなくそう口にした。
スパーキーは、口をパクパクさせて目を彷徨わせている。
何故バレているんだろう。
誰にも言ってないのに。
こんな筈ではなかった…
警備隊に連行されるまで、そんなことで頭がいっぱいだった。
種を明かすと、ナビに出来るか確認し、可能との事で脳内の思考を読んだ。
狡いよね、これも魔法なのか?
相手の目を見て淡々と話すと、相手が焦るというナビからの進言も試した。
小さいグループのある場所は、地図上で拠点確認をシビックとした。
その内容を、レジアスに伝える。
レジアスから警備隊に伝えて、各拠点を潰してもらうよう依頼。
警備隊にテキパキ指示される中でも、オロチは人の姿のまま見守っていた。
俺も邪魔にならないように壁際で待機。
シビックも暇そうに欠伸してる。
俺と遊ぶのはもう飽きたようだ。
「一件落着かな?
早く帰ってご飯にしよう!」




