お試しにも程がある 54
「みさと、ちょっと出かけてくるね。
なるべく早く戻るから。
勿論、今作ってるのが出来たら食べるから、必ず取っといてね!」
「わかった。
ゆっくり作らせていただきます。
帰る前に連絡くれるの?」
「そうだな。
じゃあこれしといて。」
俺は、細工を施した水晶のペンダントをみさとに着けた。
「可愛いね、ありがとう!」
「シビックも連れて行くから、宜しくね。」
「はーい、いってらっしゃい!」
これで良しと。
「魔王様、王妃様に声かけなくていいの?」
「料理放ったらかしてついてくるから、言わないでおく。
あいつがその気になったら直ぐ様追いつかれるからな。」
「転移出来るんでしたっけね。」
「偶には羽を伸ばすのも良かろうて。
どうせ毎日一緒なのじゃから。」
「はっはっはっ、そう言うことだ。
さぁ、行こうではないか。」
「ちょっと待った!
魔王様、人間に変身できる?
見た目でバレたら大騒ぎじゃないかな。」
オロチは自分と俺を見比べている。
「ふむ…こんなもんかな。」
瞬時にして、人間風に変化。
相変わらず格好良いところが、ちょっと狡い気がする。
「流石じゃな。
拓海もオロチと名前で呼ばんと、バレやすいぞ。」
「う、気を付けます。
じゃあ、オロチさんて呼びますね。」
「呼び捨てで良いぞ。」
痺れを切らしたシビックが、声を上げた。
「ねぇ、行こうよ。
悪意の塊があるとこ確認しといたよ。」
「ありがとうシビック。
なんだ、そんなに何箇所もあるのか?」
「小さい物がポツポツ、大きいのは2つかな。」
「どっちから行く?」
「片方は行ったことある所だから、別の方からが良いんじゃない?」
「じゃ、そっちで。」
レジアス・オロチを見て、3人で頷く。
「シビック、その場所を思い浮かべて転移できる?」
「飛ぶのはだめなの?ひとっ飛びだよ。」
「駄目駄目。
感づかれないようにこっそり行きたいんだよ。
小さな魔力で済むように転移しようと思っている。」
「んー。
面倒い、出来ない訳じゃないけど連れて行くのがね。」
「わかった、連れて行くのは俺がやるから大丈夫だよ。」
「では、行くかのぅ。」
転移で移動した。
行った先では、驚いた顔の人達が大勢いた。
「おい拓海、普通建物の外とかまずこっそり観察からしないか?」
「俺もそのつもりだったけど。
どういうこと、シビック君?」
「おっかしいなぁ。
悪意の大きいところを思い浮かべただけなんだけどなぁ。」
「つまり、目の前のこいつが諸悪の根源なのではないかのぅ。
どうじゃな、坊主よ。」
「正解!」
転移するなり囲まれていたにも関わらず、冷静な一同。
勝手な会話に冷静さを取り戻した諸悪の根源は、怒りに顔が真っ赤になる。
「なんなんだお前らは!何処から来たんだ?」
「もしかして、あなたがスパーキーさん?」
「だったら何だ!
おい、あいつを呼んでこい!」
問答無用で倒す気だろうか。
まぁ、確認したい本命が出てきてくれれば、ありがたいのだが。
呼ばれてきた人物は、見た目人間。
でも、オロチは一目見てわかった。
「お前、魔族だな。」




