お試しにも程がある 53
「ところで、先程の話の続きだが、この国で魔族を見かけたというのは本当か?」
「実際に見かけた訳ではなく、噂として出ている。
人身売買グループの用心棒として、人間ならざる強さの者がおると。
それが魔族ではないかとな。」
「下らん。
何故人間の下に付くのだ?」
「理由はわからん。
まぁ、其奴ひとりで20人以上を倒したとか。」
「向かった奴らが弱かったのでは?」
「地方の軍属のものだとか。
恥ずかしくて実名では言えないのか、噂だけ広がっている。」
「人数だけ聞くと、凄いと思うよね。
ひとりで倒したのが人間なら。」
「そこなんじゃよ。
私やお前らみたいな人間は、そうそういない。」
「お前、自分が強いと言いたいのか?」
「ふん、事実じゃわい。」
「まぁ、お前と同じくらいの奴いたら、それはそれで戦いになっているだろうな。」
「おらんから大丈夫じゃ。
ここ100年は挑まれておらんよ。」
「前はいたんだ。」
「暇人は何処にでもおるて。
何故こんな噂を話しているかと言うと、討伐依頼来たんじゃよ。」
「えっ、冒険者ギルドにはそんな依頼来てなかったよ。
言われなかっただけかな。」
「優先順位もあるじゃろうが、徒に負傷者増やすのも如何なもんかと思うぞ。
グルになっていて倒したと偽る場合もあるじゃろ。
そういった判断がされたかは定かではないが、私に相談が来たのだ。」
「他の人に振れない依頼だよね。」
「そうじゃな。
そこでオロチ、もし魔族だとして、私が倒しても問題ないかのぅ?」
「本当に魔族なら、恥晒しもんだ。
引導を渡してやってくれ。
顔見に行ってやってもいいが、場所はわかるのか?」
「それか分からんのじゃよ。
魔力反応伺っても、隠しているようじゃ。」
「知性の高い者の可能性あるな。」
「そこでな、拓海。
その人身売買グループの拠点を探す依頼をしたい。」
「主犯は分かるの?」
「これも噂じゃが、スパーキーと言われてる。
街中ではとんと見かけんそうじゃ。」
「ふーん。
なぁシビック、お前こういうのも悪意として捉えられるの?」
「意思が強ければわかるんじゃない?
人攫いするとか殺そうとしてるとか、何時でもそんなこと考えてる奴ならね。
まぁ、みさとか拓海に手を出そうとする奴はすぐに分かるよ。」
偶に怖いこと言うな、コイツ。
みさとのお守り頼んだの俺だけど。
「そうか、じゃあ手伝ってよ。」
「良いよ。
おやつ頂戴ね!」
「そんなんで良いのか?」
「僕は人間も魔族も特に違いがあるとは思ってないし、僕達に害が及ばなければほっといていいと思ってる。
でも、困るんでしょ?」
「そうだな。
これ以上人攫い増えても困るし、そんな奴らに抵抗できない人ばかりだからどうにかしないととは思うよ。」
「じゃあ、早く終わらせて美味しいご飯にしよう!




